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インタビュー

Out of Box相談室 サポーター 創薬

【News Letter】製薬・医療の専門家が研究者の日頃の疑問に回答 2年目に突入する「Out of Box相談室」を振り返る

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この投稿記事は、LINK-J特別会員様向けに発行しているニュースレターvol.3のインタビュー記事を掲載しております。
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大学の研究者などを対象に、自身の研究内容やアイデアなどを外部に提案するにあたって、その内容をプロフェッショナルに気軽に相談ができる「Out of Box(アウト・オブ・ボックス)相談室」。昨年秋の開設以来、アカデミア関係者が抱える様々な課題に応対してきました。本号では、2017年10月に開設2年目を迎えるOut of Box相談室について、アドバイザーを務める4人の専門家より、相談室の発足の経緯、これまでの相談者の傾向、産学連携における課題、今後の課題、利用者に向けたメッセージなどを伺いました。

産学連携の閉塞感を何とかしたい 製薬会社の有志がボランティアでOut of Box相談室を結成

――Out of Box相談室のはじまりについて教えて下さい

瀬尾 三井不動産から「ライフサイエンス(産業)をリノベーション(再開発)したい」という相談を受けたのが、発端でした。私たちもまた、昨今の大学の産学連携組織には閉塞感を感じており、この状況を何とか解消できないかと考えていました。その中で、アカデミアと製薬会社が同じ認識を共有する「相談室」を提案したのが、はじまりです。

――Out of Box相談室には、それぞれ異なる会社の方がアドバイザーとなっています。こうしたプログラムは珍しいのでしょうか?

高橋 競合他社による会社横断的なプログラムの数は、日本ではまだ少ないと思います。これに対して、欧州では競合他社の非競合的な分野における共同活動は、珍しくありません。それもあって、瀬尾さんから本企画に勧誘された時も「おもしろい」と思いました。

能見 最近では、会社の枠を超えた連携も増えました。たとえば、昨年秋に横浜市で開催されたBioJapanでも、各製薬会社の担当者に呼び掛け、パートナリングを主題としたセミナーを開催しました。こうした動きは、ごく最近のことです。

渕上 実は瀬尾さん、高橋さん、能見さんの3人とは、以前から定期的に会う間柄でした。そのため、今回の企画で一緒に仕事をすることについても、違和感はありませんでした。彼らとはプライベートで議論をすることもありますし、ご自宅を訪問したこともあります。

――Out of Box相談室ではどのような領域を担当していますか?

瀬尾 元は循環器疾患が専門ですが、ファイザーで研究開発を担当していることから、相談室では幅広い疾患領域を担当しています。

高橋 担当領域は、創薬技術とデジタル関連技術です。私が所属している部署は、国内に眠る創薬技術(創薬シーズ)をグローバル創薬に結びつける事業と、創薬に関するノウハウを活用したデジタル関連技術のインキュベーション事業を担当しており、相談室でもその2つの領域を担当しています。

能見 創薬全般を担当します。元の専門領域は「がんと免疫」ですがそれ以外の疾患領域も幅広くカバーします。以前勤務していた会社は創薬の基盤技術の開発にも熱心だったので、同領域も得意です。

渕上 創薬全般とベンチャーキャピタル(VC)に関連する相談を担当しています。もともと、製薬会社の研究所で創薬サイエンティストを10年以上経験したのち、VCに転向した経歴から、資金調達の方法、製薬会社との提携など、製薬会社とVCの双方の視点からアドバイスができます。

lij34_412.jpg瀬尾 亨 氏 (ファイザー ワールドワイドR&D ES&I ジャパン統括部長)

相談室の開設から約1年が経過 日本のアカデミアの強みと弱点

――Out of Box相談室がスタートして、約1年が経ちました。これまでの利用者の傾向、相談者の印象などについて教えて下さい。

瀬尾 研究成果を外部に導出したいと考える研究者は、間違いなく増えています。特に若い研究者ほど意欲的です。アカデミアの環境も変化してきており、大学という枠組みに捕らわれることなく、自分が挑戦したいことを自由に話せる風潮が出てきています。

渕上 相談の数はまだ少ないと感じます。Out of Box相談室は、参加費無料の相談イベントです。こうした無料で利用できるサービスはどんどん利用して、吸収できるものは何でも吸収する――研究者は、それくらい積極的で良いと思います。海外から来た相談者とも会う機会が何度かありましたが、彼らはとても積極的でしたよ。

――相談室などを通じて感じた、日本のアカデミアが持つ強み、あるいは逆に弱点だと思われる部分はありましたか?

高橋 日本の研究者は、とても優秀だと思います。研究内容も深く、興味深いトピックスも多い。その反面、自分の研究を俯瞰的に捉える視野が足りないと感じることもあります。研究の世界も競争です。自分たちの研究は他と比べてどこが優れていて、どこに課題があり、どんな価値を持つのか――それを把握することも大切です。

渕上 産学連携を前提とした工学部とは異なり、医学部は医師を養成する教育機関であって、新しい薬剤を生み出すための組織ではありません。そのため、Out of Box相談室のような外部のサービスを利用することに消極的な研究者も少なくないと感じました。もっとも、その点では今の若い研究者は、とても積極的だと思います。

lij34_339.jpg高橋 俊一 氏(バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター センター長)

産学連携を阻む「認知のギャップ」 産業界が研究者に期待する役割

能見 日本のアカデミアが優秀なのは、基礎研究の論文数などを見ても明らかです。その一方で、アカデミアと産業界の間には、様々な「認知のギャップ」が存在しており、それが産学連携の障害にもなっています。共同研究をするにせよ、新しい技術を導出するにせよ、まずは両者の認知を共有し、ギャップを埋める必要があります。

――具体的にどのような「認知のギャップ」が存在しますか?

能見 たとえば、産業界がアカデミアに期待する役割は、「サイエンスの追究」です。具体的には、疾患の根本的な理解、創薬の最初の段階であるターゲットの同定とエビデンスの構築など。こうした基礎研究はアカデミアの本領であり、製薬会社には真似できません。

高橋 産業界とアカデミアが協働する目的は、両者の得意な領域が組み合わさることによる、相互的かつ

相補的な効果です。しかし、中には「相手が得意な領域と重複している」事例も見られます。たとえば、化合物の探索作業と最適化などは、どちらかといえば製薬会社の方が得意です。こうした作業は、産業側に任せれば良いのです。

瀬尾 こうしたギャップは、同業者間、異業種間、アカデミアと産業界など、あらゆる領域に存在します。Out of Box相談室は、そのギャップを埋める役割を果たすことができると考えています。

lij34_128.jpg能見 貴人氏(FORESIGHT & LINX株式会社 代表取締役社長)

産業界の期待を知る機会として 相談室を積極的に活用してほしい

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

瀬尾 サイエンスの世界では、常に新たな情報を入手し、自分の仮説に適合しているかを検証する作業が不可欠です。Out of Box相談室は、その情報を入手するためのツールとして活用してほしいですね。

高橋 私たちは、共同研究のテーマや新薬のタネがほしくて相談室を実施しているわけではありません。研究の内容は問いませんし、完成している必要もありません。相談室は、製薬会社のこれまでの経験をアカデミアと共有する場所です。「何か面白い話が聞けるかも」くらいの気持ちで、いま抱えている課題を持ち込んでみて下さい。

渕上 相談室の時点で、研究を完成させている必要は全くありませんね。また、地理的な問題で日本橋に来ることが難しい場合は、メールでもフェイスブックでも構いません。まずは、私たちに「何ができるのですか?」と問いかけてみて下さい。必ず反応致します。

能見 たとえば「認知のギャップ」問題にしても、アカデミアの中だけで議論をしていては、結論は出せませんよね。Out of Box相談室は「産業界がアカデミアに何を求めているか」を、当事者に聞くことができる機会です。ぜひ、積極的に活用してほしいと思います。

lij34_229.jpg渕上 欣司氏(MITSUI GLOBAL INVESTMENT/ベンチャーパートナー)

2年目を迎えるOut of Box相談室 課題は「誤解の解消と場所の制約」

瀬尾 Out of Box相談室の利用を広げていくのは、想定していた以上にハードルが高いと実感しています。アカデミアの中でも、現状に対する問題意識は高まっているが、その解決方法として相談室を利用することには、まだ躊躇があるようです。たとえば、相談室には製薬会社が関与しているため、商業主義なサービスと誤解されやすい側面もあります。そうした誤解は、解消していく必要があります。

能見 個別相談という形式上、対応できる数にはどうしても限界があります。認知のギャップなど、産学に横たわる大きな課題の解決には、より規模の大きい講演会の開催なども有効だと思います。

瀬尾 アカデミアからも、たとえば産学連携部門の担当者に参加してもらえば、より大きな変化が期待できるかもしれませんね。

高橋 日本橋は交通アクセス面でも優れた街ですが、アカデミアは日本全国に点在しています。Out of Box相談室は利益を求める活動ではないですし、他の産学連携組織との連携も有効でしょう。

seo.jpg 瀬尾 亨 氏
米国ウェイクフォレスト大学にて博士号を取得後、米国コロンビア大学医学部にて循環器・代謝性疾患領域のポスドク研修を修了。同大学医学部小児科で准教を務めた後、製薬会社で創薬ターゲットの識別および前臨床薬理に専念。その後も国内外の製薬会社での勤務を経て、2015年に米国ファイザーのワールドワイドR&D、 エクスターナル サイエンス&イノベーション(ES&I)の日本の統括部長に着任する。

takahashi.jpg 高橋 俊一 氏
青山学院大学大学院理工学研究科修了(理学博士・化学専攻)。三井製薬工業(当時)に入社後、経営統合により日本シエーリングにて循環器領域、免疫領域、幹細胞機能制御を研究。バイエル薬品との統合後、主幹研究員、開発本部プロジェクトマネジメント・循環器領域マネジャーなどを歴任。2014年より現職。

noumi.jpg 能見 貴人 氏
東京大学大学院薬学研究科・博士課程修了(薬学博士)。ロシュ分子生物学研究所でポスドクを務めた後、大阪大学産業科学研究所などで研究・教育に従事。その後、ノバルティス本社で創薬を開始し、グラクソ・スミスクライン筑波研究所長を経て、オープンイノベーションのコンサルティング事業を開始。2014年からはサノフィで外部創薬シーズ及び基盤技術の探索と評価の責任者を務める。今年5月に研究開発・オープンイノベーションのコンサルタントとして再び独立。

fuchikami.jpg 渕上 欣司 氏
大阪大学大学院医学部医科学研究科修了・医科学修士取得。バイエル薬品中央研究所で近代的医薬品探索のプラットフォームの構築に関わり、呼吸器疾患をはじめ幅広い領域で創薬研究に携わる。その後、MITSUI GLOBAL INVESTMENTに転職。ベンチャーキャピタル部門で、早期段階のバイオ技術に対する投資などを担当する。
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