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イベントレポート

がん 創薬 医薬品

出張Out of Box相談室 in 金沢(2017年8月2日開催)

LINK-J初「Out of Box相談室」を金沢で開催
大学研究者との間で白熱した議論を展開

8月2日、金沢大学附属病院(石川県金沢市)にて、「Out of Box相談室」を開催しました。製薬・医療分野の研究者が自身の研究内容やアイデアについて、製薬・医療の業界関係者に気軽に相談できるイベントとして開設した同相談室。今回は、拠点である日本橋を離れた初の出張版として、金沢での開催となりました。当日は、金沢大学の研究者らが参加。持ち込まれた5題の研究テーマについて、5人のアドバイザーとの間で白熱した議論が繰り広げられました。終了後は関係者による懇親会も行われ、相談会とは一転、和やかな雰囲気で交流が行われ、幕を閉じました。

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御参加いただいた研究者の方々

土屋弘行先生(金沢大学大学院医薬保健研究域医学系整形外科):骨肉腫及び軟部肉腫に対する併用化学療法
中田光俊先生(金沢大学脳神経外科):悪性グリオーマに対する幹細胞を標的とした治療薬の開発
源利成先生(金沢大学がん進展制御研究所):がん促進的に作用するリン酸化酵素に着目したがん治療法の開発
島上哲朗先生(金沢大学附属病院消化器内科):肝臓の線維化とがん化に対する治療標的に関する診断法・治療法の開発
小谷明先生(金沢大学医薬保健研究域薬学系):経口投与可能なプラチナ系製剤の開発

研究者とアドバイザーの議論は、医薬品候補化合物のヒトでの作用メカニズムに関する科学的なディスカッションが中心となりました。アドバイザーからは、in vitroや動物での実験データが示唆する作用メカニズムがヒトで再現されることが明らかになっているかどうかという問いかけが行われ、早期にヒトでの作用メカニズムを説明するためのデータを整備することの重要性が指摘されました。

また、化合物ライブラリへのアクセスが限られている大学の研究者にとって、既存の医薬品を使えるドラッグリポジショニングが、低コストで短期間に新たな適応症を獲得できる魅力的な方法として研究が行われています。この点について、物質特許が切れている医薬品のリポジショニングに製薬企業の資金提供を期待することは、極めてハードルが高いというのがアドバイザーの一致した見解でした。

このほか、作用メカニズムに基づき他の領域での有効性が期待できる場合には、研究者の専門領域にとらわれることなく他領域への展開を考えるなど、研究の実用化に向けたアドバイスや、製薬企業との連携を図る場合の研究者と大学の産学連携部局との役割分担など様々なディスカッションが行われました。

研究者とのディスカッションの中で、アドバイザーからは、次のようなコメントがありました。

1.作用メカニズムについて

  • 前臨床でメカニズムが証明されたエビデンスがあるとすると、臨床で使われたときに実際に、そのメカニズムがヒトで再現されているかどうかを検証することが非常に重要だと思います。
  • このメカニズムだけを見ている限りにおいては、他のがんでも効くのだろうなと思います。そうすると、ほかのがんで確立しているモデルで確認をするということも考えられるのではないでしょうか。他の確立したモデルのデータと臨床で少し出ているデータの合わせ技でもう少し全体像がクリアになるかもしれません。
  • この薬剤はかなり古いものですので、選択性がどこまで高いのかなというのが正直な感想です。元の薬のプロファイルがパスウェイのどこに効いているのかということをもう少し確認できればいいと思います。
  • 前臨床のデータで製薬会社にインパクトを与えることはちょっと厳しいかもしれません。むしろ、先生の臨床データのほうがよほど説得力がある。先生が臨床化合物を手に入れられて、医師主導治験を進めて、もっとデータを集めるということが重要だと思います。
  • キーとなるのはやはりサイエンスです。目利きと俗に言われる人は全部そこをメーンに見ています。前臨床のエビデンスとデータは多ければ多いほどいいわけですが、一歩先に進めて、メカニズムの妥当性、vitroと臨床データとの妥当性というのをしっかりと説明できるデータが必要になります。
  • リポジショニングの本当の価値は、その薬の新しいメカニズムを見つけることだと思います。これはアカデミアの先生の研究と親和性が高いと思います。メカニズムが明確になれば。そこから先、薬をつくるのはそんなに難しくないし、どこかの製薬企業が既に候補物質を持っている可能性もある。

2.ドラッグリポジショニングについて

  • 特許がないと、いわゆる研究のツールとしてはいいのですけれども、実際に薬剤として開発する場合、企業が資金提供する可能性は低いと思います
  • いわゆる用途特許については、製薬企業はあまり重視していない。用途特許はブレークされやすく、一言でいうと弱いのです。また、特許として最終的にグラントされないケースも多くあります。
  • リポジショニングに関しては、ある適応を持っていた薬を、ほかへ持っていったときに、その構造が本当に最適なものかどうかというのがわからないケースがあります。その場合、化合物を新たな適応症に対して最適化する必要が出てくるかもしれません。そうなると、開発のプロセスを全部やらなければならなくなります。
  • リポジショニングは、かなりハードルが高くて、その薬を持っている会社がだめだということになるとかなり厳しいのだろうなと思います。ただし、本当に臨床的な効果があるのだったら、あえて日本にこだわらないというのも1つの方法なのかなという気がしします。
  • いわゆる製薬企業のビジネスを考えると、リポジショニングは非常にハードルが高いので、日本で製薬企業をパートナーにするというモデルから外れないと、この手の仕事は非常に難しいと思います。
  • 欧米のリポジショニングの成功事例を見ると、臨床上でデータが出た上で、ああ、これはすごいビジネスになるということで製薬会社がつくケースが多いんですね。ですので、希少疾病というところである程度、AMEDなどの公的資金を使って臨床上のデータをそろえた上で先に進められれば、当然患者さんにもすぐ薬が届きますし、いいのではないでしょうか。
  • アメリカにはそういうリポジショニングをビジネスにするベンチャーがあります。ジェネリック医薬品として展開するので、リスクを下げて、大量に安くする必要がある。そのときに1つのがん種だけではだめで、やはり複数の適応症のポートフォリオとして初めて価値が出るのだと思います。

3.ツール化合物について

  • 先生はこの標的について臨床でテストしてみたいというのがご希望だと思います。そうなると、これまでの製薬企業の臨床のパイプラインを調べていただいて、既に中止になっているコンパウンドを持っている会社にアプローチされてはいかがでしょうか。
  • この標的については、製薬企業が非常に注目しているので、関連する薬剤とか、ツール化合物は実はたくさんあるんです。
  • 製薬企業でスクリーニングが終わっている場合は特許もとっていますし、場合によっては論文も出しています。ですので、開発を進めているコンパウンドではなくて、中途でドロップした化合物は、ツールコンパウンドという形で大学の先生に提供することはあるので、比較的先に進んでいる会社にアプローチされるのは1つの方法だと思います。
  • 脳腫瘍をターゲットにする場合には、これまでアルツハイマーで製薬企業が開発を試みたケースが多かったので、BBB(血液脳関門)の問題をクリアしている可能性が高いと思います。
  • もう1つは、この標的に特化していないですけれども、東大や阪大でAMEDの資金で構造展開ユニットというのを去年からつくって、そこに全国の大学から化合物を集めていますので、そこのライブラリーを使うという方法もあると思います。
  • この標的については、〇〇大学にそういうツールをお持ちの先生がいます。そういう基礎をされている先生は、臨床のデータがなかなかとれないんですよ。先生は臨床のデータがとれるので、うまくそういうところでコラボレーションをするということも考えられます。

4.疾患領域について

  • 今、製薬業界がフォーカスを置いているがん領域がいくつかあって、プライオリティが高いのはやはり膵臓がん、胆管がん、肝細胞がんなどです。もちろん先生の専門性も当然ありますし、実際に患者さんもおられて重要だと思うのですけれども。基礎研究のところでは、製薬会社のデマンドがあるところにも目を通してみる必要があるのではないでしょうか。
  • この薬剤のメカニズムからいったら、様々ながん種での汎用性が高いと思うのですけれども、戦略的に考え、あるいはビジネス的に考えると、ここはやはり希少がんに徹底的にフォーカスを当てるべきだと思います。いかに低いコストで、素早く臨床開発をこなすかということがポイントなので、希少がんでやるのが合理的だと思います。
  • 肝臓の線維化で効けば、当然次に考えられるのは膵臓であったり肺であったり腎臓であったりと、広がるところはとどまるところを知らない。そういうポテンシャルとしては非常に大きな領域になるので、おもしろいんじゃないかと思います

5.モダリティについて

  • 抗体の製造コストはかなり下がってきていて、これからも下がる一方です。アプタマーは、まだ市場に出ていないということもあり、コスト面では不利だと思います。
  • この標的で劇的に効くのであれば、アプタマーに絞るというのはちょっと危険な気がします。低分子から全部含めてやったほうがいいと思います。

6.製薬企業との提携について

  • これまで製薬企業の開発部門にアプローチして、うまくいっていないとのお話ですが、アプローチ先が正しくないかもしれません。研究部門、スクリーニングをしている部門がいいと思います。
  • 製薬企業へのアプローチの窓口は、大学の産学連携部門になるけれど、企業が聞いてくるのはサイエンスです。それは先生しか答えられないので、産学連携部門にすべて任せるのではなく、うまく役割分担する必要があります。
  • 大学と製薬会社などの企業とのアライアンスは、1回でバンとまとまることはほとんどないので、1回うまくいかなくても、データを出すなり、また来年やるなり、といった活動を通じて企業とのネットワークをつくっておくことが重要だと思います。BioJapanや欧米の同様のマッチングイベントに参加するというのも一つの方法かもしれません。

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