Menu

SANDBOX

【2021年度 SCOOPプロジェクト最終報告】I-to-島プロジェクト

  • twitter
  • Facebook
  • LINE

I-to-島プロジェクト

LINE_ALBUM_20221006_221011.jpg S__182624281.jpg

LINE_ALBUM_20221006_221011_0.jpg

項目 内容
アブストラクト     「医療従事者と地域住民の橋渡しをする」をモットーに、医療従事者、地域住民双方へのリモートでのインタビューから企画をスタートさせました。インタビューで伺った声も参考にしつつ、鹿児島県の離島 奄美大島にて医療従事者・医療系学生が町に出て地域の方と交流するイベント「暮らしの保健室」を開催し、プライマリ・ケアの究極の形としての交流空間を具現化することができ、未来へとつながる活動の第一歩となりました。
2021年8月以降の取組・方法    

I-to-島ではプロジェクト発足当初より、医療従事者と地域住民との間には医療に関して認識の差異がある、その差異をお互いが認識し歩み寄ることでより良い医療を提供でき、ひいては地域住民の健康増進につながると考えてきました。後述する二つの企画を通じて地域住民の生活や医療に関する認識を知り、また、医療従事者の思いを地域住民の方に伝えることを目指しました。


① リモートでのインタビューに関して。離島、地域の医療・福祉の現状を把握するため、医療従事者の方とふだんは医療を受ける側の住民の方それぞれにインタビューを行いました。2021年11月から2022年3月にかけて合計6名の方に、それぞれ1~2時間ほど、感染予防のため、また、遠方であることからビデオ会議アプリを用いて全てリモートにて行いました。医療従事者は静岡県の地方都市や鹿児島県の離島で医療・福祉に従事している方、地域研修として鹿児島県の離島 下甑島で1か月の研修をされた初期研修医の方など4名で、離島、地域における診療の大変さや住民の方との信頼関係の築き方などについて伺いました。住民の方は鹿児島県下甑島で畜産業やサービス業をされている方2名で、ふだんの生活スタイルや日常の楽しみ、医療で不便に感じること、医療職を志す学生への期待などについて伺いました。医療系学生の視点からの学びやアイデアについてInstagramのアカウントを開設し、随時発信しています。


② 奄美大島でのイベントに関して。2022年9月24日、鹿児島県奄美大島の商店街の一角にブースを設け、茶菓子を配って地域の方と交流するイベント「暮らしの保健室」を開催しました。ふだんの生活の様子や食生活、運動習慣などについてお話を伺ったほか、カラダ測定を行ったり生活習慣病予防や受診のタイミングなどについてもアドバイスを行いました。メンバーそれぞれが持ち寄ったご当地のお土産をお配りするなど、立ち寄ってもらいやすい雰囲気づくりに努めました。

S__183124020.jpg

結果 
プロセス 
 

① リモートでのインタビューに関して。医療従事者からは「離島では物的・人的資源が少なく施行できる検査の種類が限られるため、各検査の適応や限界についてより深く知っておくことが重要」「日常のささいな会話に耳を傾けることで、患者さんの日常生活が想像でき、診断や診療のヒントになることがある」「離島・地域では住民同士の距離が近く、医療従事者と患者が顔見知りの場合にはそれがむしろ受診へのハードルとなってしまうことがある」といった声を、地域住民の方からは「島にある診療所で対応できない重篤な疾患の場合には漁船やヘリで島外に搬送されたという話を聞くのでそこが不安」「医局制度や島ナースなどで任期付きで島に働きに来てくれるのは大歓迎、人手が少ないので本当にありがたい」「行政も医療状況の改善のために動いてくれているが、異動のためか数年おきに担当者が変わり話が振出しに戻ってしまう感がある」といった声が聞かれました。


② 奄美大島でのイベントについて。奄美大島中心部の名瀬商店街の一角にブースをお借りして行いました。地元珈琲店のコーヒーや沖縄県宮古島特産の幻想的な青いお茶「バタフライピー」などをお配りし、駆け出しの初期研修医3名、医療系学生3名の計6名にて地元の方と交流をさせていただきました。事前広報として、地域の総合病院である鹿児島県立大島病院にポスターを掲載していただいたほか、イベント当日には地元ラジオ局「エフエムあまみ」の番組に出演させていただき、イベントの概要やメンバーそれぞれの思いについて紹介させていただきました。
実際に足を止めてくださったのは3,40名程度で家族連れや高齢者の方など様々な年代の方と交流することができました。日常生活から将来や夢の話、受診すべきかどうかについてなどにも話題は及びました。また、インストラクターの資格を持つものが参加メンバーにいたため、血圧計や握力計、ステップ台といった計測機器を用いてカラダ測定を行ったほか、適切な運動方法やフレイル予防の体操などについても紹介させていただきました。

当日の様子は地元新聞社「南海日日新聞」の方にも取材をしていただき、2022年10月3日付の同紙に掲載していただいております。

全体考察・
提言
   

1年間を通して「現場や生活の生の声を聞く」ということを大事にして活動できました。ふだんの講義や日常臨床ではあまり聞くことのないお話や得難い経験をさせていただき、今後の勉学や仕事へのヒント・モチベーションになりました。オンライン、また対面で私たちのために時間を割いてくださったすべての方々に感謝いたします。

「暮らしの保健室」はその名の通り、病院と日常生活の中間地点のような場所を作るという意味合いがあり、病院に受診すべきかどうか迷っている、運動習慣をつけたいが適切な運動方法がわからない、独居で拠り所がなく寂しい気持ちを抱えているなどの人にとって大変有意義な場所になり得ると感じることができました。日常生活や将来の夢などについてお話しくださる方は多かったものの、医療関係のお悩みごとの相談は数件に留まったため、落ち着いて話しやすい雰囲気づくりや話を聞く際の姿勢などについては今後の課題として残りました。

2022年8月にも地元の医師、研修医が中心となって同様のイベントを開催した経緯があり、前回に引き続き来てくださった方、前回の様子を口コミで聞いて気になってきてくださった方などもおり、地元での認知度向上と信頼の獲得のためには継続してイベントを開催してく必要があると感じました。

医療従事者・医療系学生が地域住民の方の実際の生活の場に出向いて交流する本イベントは医療への親しみを持ってもらう、受診遅れをなくすといった意味でプライマリ・ケアの一環と言えます。今後の展望として、同様の取り組みを他の島・地域でも広めていけたらと考えています。

pagetop