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【2020年度 SCOOPプロジェクト最終報告】Art and wellbeing研究会

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Art and wellbeing研究会

項目 内容
アブストラクト     私達は、保護者へのヒアリングを通してデザインした「感性活用ワークショップ(Emotional Active Workshop)」を、療育環境の異なるこどもを対象者として実施しました。芸術教育・対話型探求教育者・作業療法士・医療従事者がそれぞれの視点を持ち寄り、「ウェルビーイング的」「芸術教育的」「療育的」という三方からの意図をもとにWSをデザインしました。オンライン・対面・ハイブリッドでの実践を通してアート活動を実施できた一方で、各々のこどもの背景を踏まえたWSの「最善のデザインとは何か」という問いが新たに出てきました。オンラインでのあそび提供という当プロジェクトは、これまでアプローチしづらかった様々なバックグラウンドのある対象者やその保護者へ、自己認識や表現の重要性、自分らしくある時間をどう大切にしたらよいのかのヒントを提供するよい機会になりえたと考えています。
2021年3月以降の取組・方法    

療育環境の異なるこどもを主な対象者としてワークショップ(以下、WS)を実施しました。ネフローゼ症候群が理由で入院中のR君(院内療養)・自閉症スペクトラムの診断を受けているT君(日常療養)・脳性麻痺を抱えるI君(在宅療養)の3名です。
今回のWS開催に際して、「異なる療育環境でどのようなwell-beingの要素が必要か」、「そもそも各対象者や周囲の方は何を問題と捉えているか」のような問いを整理する必要性があり、最初に各対象者の親にヒアリングを実施しました。
この過程を経て出来上がったWSデザインが「感性活用ワークショップ(Emotional Active Workshop)」です。各対象者の性格や日常の生活を捉えながら、感性を活用するWSであり、大胆にペンキを使いながら目の前の作業に「没頭」すること、大きな布を用いて対話もしながら共同作業で絵を自由に描き「共創と他者との関わり」を得ること、普段関わりの少ない「もの・人」と触れ「五感・共感」の体験を図ること、ねんど造形を通して「ポジティブ感情」を得る体験といった内容です。

結果 プロセス  

私達のWS設計プロセスの特徴は、①保護者へのヒアリング後、②芸術教育・対話型探求教育者・作業療法士・医療従事者によるWS設計、③WS開催、④開催後インタビューをもとにKPT分析を用いた再設計・開催、というサイクルで実施したことです。
特に②では「ウェルビーイング的ねらい(例:没頭、他者との関係性)」「芸術教育的ねらい(例:ダイナミックな表現による発散、共創)」「療育的ねらい(例:発達障害の児に体幹を鍛える高這い運動、視空間認知を促す造形手法)」という三方からの意図を持ったWSをデザインし、多様な視点を理解し合う機会も得ました。
また、WSはオンライン・対面・ハイブリッドの3種類で実践しました。療育環境の異なる場のデザインでしたが、手助けをする大人が現場にいる場合、オンラインでコミュニケーション・アート活動を実施することができ、WSデザインの知恵を得ることができました。一方で、各々のこどもの背景を理解したWS設計に関して、「最善のデザインとは何か」という問いにおいて、さらなる課題を発見したように感じています。

全体考察・提言   

オンラインでのあそび提供という当プロジェクトの展望として、これまでアプローチしづらかった様々なバックグラウンドのある対象者やその保護者へ、自己認識や表現の重要性、自分らしくある時間をどう大切にしたらよいのかのヒントを提供するよい機会になりえたと考えています。
また、WS内容のパッケージ化や効果測定の方法など継続可能なシステムづくりができれば、アートのウェルビーイングへの効果を多職種のいろいろな目線から評価することもできるでしょう。一方でこれまでの活動の中で生じた困難として、メンバー同士でのコンセプトメイキングやメンタルモデルの共有がオンライン上ではなかなか進まなかったことがありました。徐々に変わったり明らかになったりしていくそれぞれのメンバーの当プロジェクトにおける興味関心をその時々に共有し、チームの方向性を舵取りしていくことが、オンライン環境でのプロジェクトでは特に重要なのかもしれないということも大きな学びとなりました。

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