I-to-島プロジェクト
項目 | 内容 |
アブストラクト | 「医療従事者と地域住民の橋渡しをする」をモットーに、医療従事者、地域住民双方へのリモートでのインタビューから企画をスタートさせました。インタビューで伺った声も参考にしつつ、鹿児島県の離島 奄美大島にて医療従事者・医療系学生が町に出て地域の方と交流するイベント「暮らしの保健室」を開催し、プライマリ・ケアの究極の形としての交流空間を具現化することができ、未来へとつながる活動の第一歩となりました。 |
2021年8月以降の取組・方法 |
I-to-島ではプロジェクト発足当初より、医療従事者と地域住民との間には医療に関して認識の差異がある、その差異をお互いが認識し歩み寄ることでより良い医療を提供でき、ひいては地域住民の健康増進につながると考えてきました。後述する二つの企画を通じて地域住民の生活や医療に関する認識を知り、また、医療従事者の思いを地域住民の方に伝えることを目指しました。
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結果 プロセス |
① リモートでのインタビューに関して。医療従事者からは「離島では物的・人的資源が少なく施行できる検査の種類が限られるため、各検査の適応や限界についてより深く知っておくことが重要」「日常のささいな会話に耳を傾けることで、患者さんの日常生活が想像でき、診断や診療のヒントになることがある」「離島・地域では住民同士の距離が近く、医療従事者と患者が顔見知りの場合にはそれがむしろ受診へのハードルとなってしまうことがある」といった声を、地域住民の方からは「島にある診療所で対応できない重篤な疾患の場合には漁船やヘリで島外に搬送されたという話を聞くのでそこが不安」「医局制度や島ナースなどで任期付きで島に働きに来てくれるのは大歓迎、人手が少ないので本当にありがたい」「行政も医療状況の改善のために動いてくれているが、異動のためか数年おきに担当者が変わり話が振出しに戻ってしまう感がある」といった声が聞かれました。
当日の様子は地元新聞社「南海日日新聞」の方にも取材をしていただき、2022年10月3日付の同紙に掲載していただいております。 |
全体考察・ 提言 |
1年間を通して「現場や生活の生の声を聞く」ということを大事にして活動できました。ふだんの講義や日常臨床ではあまり聞くことのないお話や得難い経験をさせていただき、今後の勉学や仕事へのヒント・モチベーションになりました。オンライン、また対面で私たちのために時間を割いてくださったすべての方々に感謝いたします。 「暮らしの保健室」はその名の通り、病院と日常生活の中間地点のような場所を作るという意味合いがあり、病院に受診すべきかどうか迷っている、運動習慣をつけたいが適切な運動方法がわからない、独居で拠り所がなく寂しい気持ちを抱えているなどの人にとって大変有意義な場所になり得ると感じることができました。日常生活や将来の夢などについてお話しくださる方は多かったものの、医療関係のお悩みごとの相談は数件に留まったため、落ち着いて話しやすい雰囲気づくりや話を聞く際の姿勢などについては今後の課題として残りました。 2022年8月にも地元の医師、研修医が中心となって同様のイベントを開催した経緯があり、前回に引き続き来てくださった方、前回の様子を口コミで聞いて気になってきてくださった方などもおり、地元での認知度向上と信頼の獲得のためには継続してイベントを開催してく必要があると感じました。 医療従事者・医療系学生が地域住民の方の実際の生活の場に出向いて交流する本イベントは医療への親しみを持ってもらう、受診遅れをなくすといった意味でプライマリ・ケアの一環と言えます。今後の展望として、同様の取り組みを他の島・地域でも広めていけたらと考えています。 |