九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(教授 吉住 朋晴)は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市 理事長 中村 祐輔)(以下、NIBIOHNと略す)らとの共同研究により、生体肝移植における移植片の質を評価する新しいバイオマーカー候補を同定しました。
生体肝移植における移植片の質は、移植の成否に直結する重要な因子として知られています。これまで移植片の質の評価には、ドナーの年齢が主に用いられており、特に高齢ドナーにおいて移植の成功率が低くなることが知られています。一方で、高齢ドナーなら必ずしも移植の成功率が低くなるということはなく、年齢だけでは移植片の質の評価を十分にできないことが示唆されていました。
この度、吉住 朋晴(九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科 教授)、冨山 貴央(同医局員)、山本拓也(NIBIOHNワクチン・アジュバント研究センター免疫老化プロジェクト プロジェクトリーダー)、高濱正吉(同研究員)、らを中心とした共同研究グループは、年齢群ごとに発現の異なる遺伝子の発現解析に基づく研究により、ドナー年齢に変わる新しいマーカー候補としてLeucine Rich Repeat Neuronal 2 (以下LRRN2)を見出しました。
実際に肝臓におけるLRRN2の発現量によりドナーを層別化して移植の成功率を評価すると、高齢者においてもLRRN2発現が高い群では成功率が悪く、一方LRRN2発現が低い群では移植の成功率が若齢群と変わらず高いことがわかりました。
本研究により見出したLRRN2は、今後の生体肝移植の成功率の増加、リスクの軽減などに寄与するバイオマーカーとなる可能性が期待されます。
本研究成果は、国際学術雑誌 『Hepatology Communication』に2022年7月28日(日本時間)掲載されました。