日本医療政策機構では、これまでG7広島サミットおよび関連閣僚会合において人間だけでなく動物や環境も一体で考える「ワンヘルス・アプローチ」が多く取り上げられたことや、すでに終わってはいるものの5月22日が国連の定める国際生物多様性の日(International Day for Biological Diversity)となっており、「「合意」を「実行」に。生物多様性を取り戻そう。(From Agreement to Action: Build Back Biodiversity)」というテーマであったことを鑑み、HGPIセミナーを開催いたします。
当機構では、2022年から「プラネタリーヘルス推進プロジェクト」を開始いたしました。マルチステークホルダーと協働して日本が「地球環境と健康(プラネタリーヘルス)」に関して取り組むべき課題を明らかにし、理解を深め、国内外に発信するとともに次のステップのきっかけを作ることを目指しております。
本プロジェクトの一環として、産官学民のマルチステークホルダーが参加し、議論を行うアドバイザリーボード会合を継続的な議論を行い、「プラネタリーヘルスに関する課題とヘルスケアセクターの役割」という報告書を作成しました。また、2023年5月12日には、長崎プラネタリーヘルス専門家会合「COP27およびCOP15からG7広島サミットへ:地球規模で生じている気候変動、環境、生物多様性と 人間の健康に関する課題解決に向けた新しいパートナーシップ」を開催しました。
生物多様性の喪失は、1980年代から課題として取り上げられてきましたが、近年は国際会議などの議論を経てより喫緊の問題として認識が変化してきています。生物の多様性は土地や海の利用の変化、天然資源物の搾取、気候変動、汚染、侵略的な外来種などの影響を大きく受け続け、年々悪化しています。また、この生物多様性の喪失は、食糧安全保障、水質、気候変動、感染症の蔓延への影響など、人間の健康に多大な影響を及ぼしていることが明らかとなっています。
2022年12月19日にカナダのモントリオールにて開催されました生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までの生物多様性に対する目標や手段が決定されました。指標に関しては2024年に行われるCOP16にて議論される予定です。本枠組みでの目標は2010年に日本の名古屋で開催されたCOP10で採択された愛知目標よりも野心度が上がった目標として評価されています。しかし、この昆明・モントリオール生物多様性枠組の内容が日本国内の市民やヘルスケアセクターに広く認知されていない現状があります。
そこで、今回のHGPIセミナーでは、国立研究開発法人国立環境研究所生物多様性領域領域長の山野博哉氏をお迎えいたします。山野氏はこれまで中央環境審議会自然環境部会で生物多様性国家戦略の策定に関わるとともに、環境省の「気候変動の影響に関する分野別ワーキンググループ(自然生態系分野)」座長など生物多様性の保全と持続的利用に関する研究や政策貢献に関する活動をされています。COP15で議論された内容を明確にさせながら、次なるCOP16に向けて日本国内や世界でどのような取り組みが必要になるかを議論する際に議論すべき点を包括的に考える機会にしたいと思います。
■登壇者プロフィール:
山野博哉(国立研究開発法人 国立環境研究所 生物多様性領域領域長)
東京大学大学院理学系研究科地理学専攻修了。1999年国立環境研究所に入所し、現在に至る。環境変化に対する生態系の応答及び保全に関する研究を行っている。主な調査地と対象は日本沿岸及び島嶼国のサンゴ礁。現在、国立環境研究所自然共生研究プログラム総括として、生物多様性の保全に資する対策および生態系サービスの持続的な利用に関する研究や技術開発に取り組んでいる。
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参加費
無料