概要
エクソソームはあらゆる細胞から放出される直径50-150 nmの微粒子であり,細胞同士が情報伝達するための"手紙"として機能しています。この手紙には,産生細胞の情報(RNAやタンパク質)が内包されており,これらを読み解くことで疾患の早期診断や治療に繋がると期待されています。一方,現行の回収法では,内容物が異なるエクソソームを分類することなく回収するため,個々のエクソソームが持つ真の生物学的意義は未だ明らかになっていません。
京都大学大学院薬学研究科と医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN(ニビオン))の連携講座・実践創薬研究プロジェクトに所属する金尾 英佑助教,石濱 泰教授,足立 淳連携教授らの研究グループ,同大学大学院工学研究科の久保 拓也准教授,大塚 浩二教授,和田 俊太郎 (研究当時:修士課程学生) らの研究グループ,秋吉 一成教授らの研究グループは,エクソソームの表面に結合している糖鎖[注1]を認識してエクソソームを分類することができるスポンジ状高分子分離媒体を開発し,同じ細胞に由来するエクソソームでもその表面糖鎖によって働きが異なることを明らかにしました。従来のエクソソーム研究においては,エクソソームをその特性や機能で分類することが困難であり,本発明はこのボトルネックを解消する普遍的な手法になることが期待されます。
本研究成果は,2022年12月13日に米国の国際学術誌「Analytical Chemistry」にオンライン掲載され,カバーピクチャー(学術誌の表紙絵)に採択されました。