住友ファーマ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)および国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:中村 祐輔、以下「NIBIOHN」)プレシジョン免疫プロジェクトは、幅広いインフルエンザウイルスに対する予防効果を持つ「ユニバーサルインフルエンザワクチン」の開発に取り組んでいます。今般、ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤「fH1/DSP-0546LP」(以下「本剤」)のフェーズ1試験を住友ファーマが欧州で開始する運びとなりましたので、お知らせします。
ユニバーサルインフルエンザワクチンについて
本剤は、幅広いインフルエンザウイルスに対する効果が期待される膜融合型ヘマグルチニン抗原(fH1)と、免疫応答の量、質および持続性を高めるTLR7アジュバント(DSP-0546LP)を組み合わせた次世代型ワクチンです。
本剤の特徴について
従来のインフルエンザワクチンは、ウイルスの抗原変異により効力を失うため、毎年流行株に合ったワクチン株の選定・製造・接種が必要であり、新型インフルエンザに迅速に対応することは困難です。
本剤は、種類の異なるインフルエンザウイルスへの幅広い防御効果が非臨床研究で確認されています。住友ファーマおよびNIBIOHNは、共同研究の成果である本剤について、季節性インフルエンザウイルスだけではなく、パンデミックに発展する可能性のある新型インフルエンザウイルスにも効果を示す画期的な次世代ワクチンとしての実用化を目指しています。
*住友ファーマおよびNIBIOHNは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題において共同研究を実施しています。
ご参考
膜融合型ヘマグルチニン抗原
ヘマグルチニンは、インフルエンザウイルスなどのウイルスの表面にある糖タンパク質で、感染する際に、ウイルスを細胞内に侵入させる役割を果たします。ヘマグルチニンは、ワクチンの主成分となっており(ヘマグルチニン抗原)、本剤で用いているヘマグルチニン抗原は、通常のヘマグルチニン抗原を構造変化させることで、幅広いインフルエンザウイルスに共通する隠れた抗原領域を露出させた改変型ヘマグルチニン抗原です。この抗原を免疫系ヒト化マウスに接種すると、抗原性の異なる複数のインフルエンザウイルスを防御可能なヒト交差抗体が誘導されることが明らかになっています。
TLR7アジュバント (DSP-0546LP)
ウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を特異的に活性化させる物質を含む製剤です。アジュバントとして抗原に添加することによって免疫応答の量、質および持続性を高める免疫増強作用を有します。
医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)について
産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発や創薬等の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成および医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が促進される環境の創出を推進することを目的とする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業です。詳細は、https://www.amed.go.jp/program/list/index07.htmlをご覧ください。
住友ファーマとNIBIOHNの共同研究「万能インフルエンザワクチンの研究開発」(代表機関:住友ファーマ)は、2019年にCiCLEの第4回公募の研究開発課題に採択されました。
住友ファーマについて
住友ファーマグループは、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを理念としています。この理念を実現するため、また、日本はもちろん世界の方々に革新的で有用な医薬品や医療ソリューションをお届けするため、研究開発に全力を注いでいます。詳細は、https://www.sumitomo-pharma.co.jpをご覧ください。
医薬基盤・健康・栄養研究所について
2015年4月1日に医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所が統合し、医薬基盤・健康・栄養研究所として設立されました。本研究所は、医薬品技術および医療機器等技術の向上のための基盤の整備を図るとともに、公衆衛生の向上および増進を図り、もって国民保健の向上に資することを目的とした国立研究開発法人として位置づけられています。詳細は、https://www.nibiohn.go.jp/をご覧ください。