第25059号
ワクチン市場の調査を実施
― 国内市場予測 ―
■RSウイルスワクチン
定期接種化が期待されることから、2033年度予測は2024年度比60.0倍の480億円
■帯状疱疹ワクチン
定期接種、キャッチアップ接種が始まり、2025年度見込は2024年度比4.6倍の816億円
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2024年度はRSウイルスワクチンや経鼻投与タイプのワクチンの発売、2025年度は新型コロナワクチンの国からの助成終了、帯状疱疹ワクチンの定期接種開始、ヒトパピローマウイルスワクチン2回目以降のキャッチアップ接種延長など、話題豊富な国内のワクチン市場を調査した。その結果を「ワクチン市場 2025」にまとめた。
この調査では、2024年度のワクチン市場を分析し、2025年度以降2033年度までの市場を展望した。
◆注目市場
1.RSウイルスワクチン
2024年度に「アレックスビー」(グラクソ・スミスクライン)が成人(発売時60歳以上)を対象に、「アブリスボ」(ファイザー)が母子免疫ワクチンとして妊娠24週から36週の妊婦と60歳以上の成人を対象に発売された。RSウイルス感染症は新生児・乳幼児が罹患すると重症化しやすいため、一部の産婦人科で推奨された妊婦、また、ワクチンがあることを知った妊婦の接種がみられ、日本でも市場が立ち上がった。しかし、接種料金が高額であったこと、自治体の助成が進まなかったこと、RSウイルス感染リスクの認知が進まなかったことなどから、市場は小規模にとどまった。
2025年度は、妊婦に対して足利市や袋井市など一部の自治体が助成を開始し接種が増加していることから、市場は前年度比2.1倍の17億円が見込まれる。
今後も助成を開始する自治体が増え、啓発活動も進むことから、徐々にではあるが接種が増えていくとみられる。また、学会などより要望が出ていることから、妊婦向け、高齢者向けともに定期接種化が期待されており、2020年代終盤には定期接種化も市場を押し上げる要因となる。定期接種化は、まずは対象者の少ない妊婦向けからで、高齢者向けは妊婦向けに比べ遅れるとみられる。高齢者向けの定期接種化は、対象者が多いことから市場へのインパクトが大きい。しかし、RSウイルス検査は、必ずしもRSウイルス感染症が疑われる全ての患者に行われるわけではないため、流行把握が難しい状況にある。また、定期接種の対象年齢を何歳にするかなどの課題も多い。早期に定期接種化されれば、市場拡大ペースは早まる。
2.帯状疱疹ワクチン
2024年度は、帯状疱疹ワクチンの接種を助成する自治体が増えたものの、2025年度から定期接種が始まることからその数は限られた。また、大都市での助成がみられず、都内などは2023年度で任意接種が一巡していた。そのため市場は微減となった。
2025年度は、定期接種が開始され、2025年度から2029年度まではキャッチアップ接種も行われることから、市場は大きく拡大し、前年度比4.6倍の816億円が見込まれる。市場はキャッチアップ接種の最終年となる2029年度まで800億円超の規模を維持する。以降は縮小に転じると予想される。
◆調査結果の概要
■国内ワクチン市場
市場は、政府買い取りによる新型コロナワクチン、国内未承認の輸入ワクチン、がんなどの治療ワクチンを除いている。
2024年度の市場は、新型コロナワクチンの定期接種化、最終年となるヒトパピローマウイルスワクチンのキャッチアップ接種への駆け込み需要などにより、前年度比65.3%増と大きく拡大した。しかし、2025年度は、帯状疱疹ワクチンの定期接種化とキャッチアップ接種の開始などがプラス要因となるものの、新型コロナワクチンの国からの助成終了が大きなマイナス要因となり、微増にとどまるとみられる。
今後は接種本数が減少するとみられる。既存ワクチンの定期接種化やキャッチアップ接種、新規ワクチンの発売は増加要因となるが、2020年代後半から2030年代は新生児減少や高齢者人口増加ペースの鈍化、接種疲れの軽減を目的とした乳幼児・小児ワクチンの混合化などにより減少する。
一方、近年発売されるワクチン価格は高い傾向にあるため、新たなワクチンの発売により1本当たりのワクチン単価は上昇するとみられる。ノロウイルスやデング熱に加え、海外ではサルモネラ菌やヒトメタニューモウイルス、サイトメガロウイルスなど数多くのワクチン開発が進んでおり、これから新たなワクチン、また、新たな組み合わせの混合ワクチンの発売が期待される。ワクチン単価の上昇は、接種本数の減少を補うとみられ、当面市場は拡大傾向で推移すると予想される。
◆調査対象
・新型コロナワクチン
・インフルエンザワクチン
・新型コロナ・インフルエンザ混合ワクチン
・帯状疱疹ワクチン/水痘ワクチン
・ヒトパピローマウイルスワクチン
・RSウイルスワクチン
・肺炎球菌ワクチン
・4種/5種混合ワクチン(6種混合ワクチン含む)
・ロタウイルスワクチン
・麻しんワクチン/風しんワクチン/麻しん・風しん混合ワクチン(麻しん・風しん・おたふく風邪ワクチンを含む)
・おたふく風邪ワクチン
・その他ワクチン(A型肝炎、B型肝炎、BCG、Hib、黄熱、狂犬病、髄膜炎、ダニ媒介性脳炎、日本脳炎
お問い合わせ先
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