第25066号
CAR-T細胞治療製品やペプチド医薬品など
再生医療等製品、新技術医薬品の国内市場を調査
― 2030年市場予測(2024年比) ―
●CAR-T細胞治療製品 390億円(95.0%増)
血液がんで高い効果を示しており、需要が増加
●ペプチド医薬品 3,514億円(29.4%増)
糖尿病や肥満症治療剤の合併症を適応とした開発などが進む
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、アンメット・メディカル・ニーズを満たす新時代の治療法として期待されている再生医療等製品、ペプチド医薬品や核酸医薬品などといった新技術医薬品の国内市場を調査した。その結果を「再生医療・新医薬モダリティ/創薬支援関連市場の現状と将来展望 2025」にまとめた。
この調査では、再生医療等製品として再生医療製品、CAR-T細胞治療製品、遺伝子治療用製品の3品目、新技術医薬品としてペプチド医薬品、核酸医薬品、第2世代抗体医薬品、mRNA治療薬・mRNAワクチンの4品目の市場について現状を捉え、将来を予想した。また、それらの開発・製品化を支える細胞・試薬・セルカルチャーウェア5品目、ライフサイエンス機器・検査機器8品目、保管・実験環境機器3品目、自動化関連機器3品目の市場を整理した。
◆注目市場
●CAR-T細胞治療製品、再生医療製品、遺伝子治療用製品の国内市場
CAR-T細胞治療製品は、人または動物の生きた細胞や組織の培養などにより、身体の構造・機能の再建・修復・形成や疾病の治療・予防、遺伝子治療を目的に使用される製品の内、ex vivo遺伝子治療(体外に取り出した患者細胞に目的遺伝子を導入・発現させ再度体内に戻す手法)で使用される製品を対象とする。血液がんのリンパ腫や急性白血病、多発性骨髄腫で高い効果を示しており、需要が増加している。
現状、数製品が発売されている。高価格であるが、治療要件を満たす医療施設が増えていることや、処方患者の増加により市場は拡大している。現時点で申請中の開発品はないが、アカデミアや企業によるフェーズⅡ、フェーズⅠのものがいくつかみられる。血液がんの適応を中心に開発されているが、フェーズⅠでは固形がんの開発も進んでいる。また、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を用いたCAR-NK細胞治療製品の開発も進められており、今後の展開が注目される。
再生医療製品は、幹細胞や組織工学に基づき患者自身の細胞や組織を利用して治療を行う製品を対象とする。角膜移植や皮膚移植の治療などで堅調な需要を得ており、2024年の市場は56億円となった。また、脳分野では「アクーゴ」(サンバイオ)が条件及び期限付の製造販売承認を得ており、今後の市場拡大に寄与するとみられる。
開発品は増えているため、製品の増加や既存製品の適応拡大による市場拡大が期待される。希少疾患用再生医療等製品の指定制度の活用により、助成金の交付や指導・助言、税制措置、優先審査などの支援措置が受けられ、対象患者が少ないなど収益性が厳しい製品について開発の後押しとなっている。また、参入企業の多くは条件及び期限付の製造販売承認制度を活用した早期承認に取り組んでいる。
2025年4月には、初めてiPS細胞由来製品が厚生労働省に製造販売承認申請されており、将来的には市場への貢献が期待される。
遺伝子治療用製品は、再生医療等製品の内、健康なヒトの遺伝子を一部加工し、これを患者の体内に注射や点滴などで直接投与することで遺伝子が作り出すタンパク質の作用によって効果を得る製品を対象とする。主に遺伝性疾患に効果を示し、現在発売されている製品はいずれも希少疾患の治療薬である。
患者の遺伝子の加工など製造工程が複雑であることから高価格であり、また、希少疾患の適応となるため処方患者数は限られるものの、徐々に患者数が増加することにより、2024年以降市場は前年比二桁の拡大が続くと予想される。2025年4月に「Elevidys(SRP-9001)」(中外製薬)の申請が承認されるなど、新製品の発売も市場に貢献するとみられる。
●ペプチド医薬品
2個から50個のアミノ酸で構成されるペプチドを有効成分とする医薬品、また、開発が進むペプチドワクチンを対象とする。疾患は生活習慣病、整形外科、がん、希少疾患の割合が高く、中でも主に糖尿病や肥満症を適応症とする生活習慣病が25%程度を占めている。
2023年は骨粗鬆症治療剤、糖尿病治療剤、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療剤、透析そう痒症治療剤など複数の製品が発売されたことから、市場は前年比15%以上の伸びとなった。
2024年の市場は微増にとどまったが、生活習慣病領域で2024年に肥満症治療剤の「ウゴービ」(ノボ ノルディスク ファーマ)、2025年に「ゼップバウンド」(田辺三菱製薬)が発売されたことや、糖尿病や肥満症治療剤の合併症を適応とした開発が進んでいることなどから、2025年以降は堅調な市場拡大が予想される。
●細胞・試薬・セルカルチャーウェア
ヒト細胞、iPS細胞・ES細胞・オルガノイドや細胞培養用液体培地/粉末培地、細胞培養用スキャホールド/マイクロキャリア、ゲノム編集ツール/エレクトロポレーター、細胞培養容器(シャーレ/プレート/フラスコ)を対象とする。各品目の需要増加に加えて、原材料の高騰などによる各製品の単価上昇もあり、市場はそれぞれ拡大している。
ヒト細胞では、血液細胞の一つである末梢血単核細胞(PBMC)の伸びが大きい。また、皮膚細胞も伸びており、化粧品開発企業のニーズが大きく、動物実験代替で安定した需要がみられる。また、iPS細胞に注力する企業もみられ、新製品の発売で製品ラインアップの拡充が進んでいる。市場規模は小さいもののオルガノイド(ミニ臓器)の需要も高まっており、特にがん研究用途の製品が伸びている。
細胞培養用液体培地/粉末培地は、市場規模の大きい基礎培地の需要は大きく変化していないものの、免疫細胞向けの培地やT細胞用の培地、また、ヒト・動物由来原料を含まないゼノフリーおよびアニマルフリーの培地、CHO細胞用の培地などが好調なため、堅調な市場拡大が期待される。
◆調査対象
【再生医療・新技術医薬品】
再生医療等製品
・再生医療製品
・CAR-T細胞治療製品
・遺伝子治療用製品
新技術医薬品
・ペプチド医薬品
・第2世代抗体医薬品
・mRNA治療薬・mRNAワクチン
・核酸医薬品
【サポーティングインダストリー製品】
細胞・試薬・セルカルチャーウェア
・ヒト細胞、iPS細胞・ES細胞・オルガノイド
・細胞培養用液体培地/粉末培地
・細胞培養用スキャホールド/マイクロキャリア
・ゲノム編集ツール/エレクトロポレーター
・細胞培養容器(シャーレ/プレート/フラスコ)
ライフサイエンス機器・検査機器
・フローサイトメーター
・細胞計数分析装置
・セルイメージングシステム
・MEAシステム
・遠心分離機
・CO2インキュベーター
・質量分析装置
・マイクロプレートリーダー
保管・実験環境機器
・超低温フリーザー/メディカルフリーザー
・薬用保冷庫(薬用冷蔵ショーケース)
・安全キャビネット
自動化関連
・シングルユース/バイオリアクター/培養バッグ
・自動細胞培養装置
・三次元バイオプリンター
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