2022年10月29日(土)~30日(日)に開催された第9回日本サルコペニア・フレイル学会大会(立命館大学びわこ・くさつキャンパス)にて、ヒューマンライフコード株式会社(代表取締役社長:原田 雅充、所在地:東京都中央区、以下「当社」)の人見研究員が「サルコペニアモデル動物を用いた臍帯由来間葉系細胞による治療効果の検証」で優秀演題賞を受賞いたしました。
【演題・発表者】
演 題: サルコペニアモデル動物を用いた臍帯由来間葉系細胞による治療効果の検証
発表者:人見 一寛1)、黄 哲 2,4),原田雅充1,2),葛谷雅文 3,5),成 憲武 2,6)
1)ヒューマンライフコード株式会社
2)名古屋大学大学院医学系研究科ヒューマンライフコード応用細胞医療学講座
3)名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学
4)産業医科大学医学部神経内科学講座
5)名鉄病院
6)延邉大学附属病院循環器内
【発表内容】
近年、新たな創薬モダリティとして、間葉系幹細胞(mesenchymal stromal cells, MSC) を利用した治療法が注目されています。MSCは臍帯、骨髄、脂肪、歯髄など、様々な組織から採取され利用できることが知られていますが、その中でも臍帯由来間葉系細胞(Umbilical cord-derived mesenchymal stromal cells:UC-MSC)は、比較的細胞が均一であり、また、他組織由来MSCと比較し細胞増殖能が高いなどいくつかの利点を有します。
本研究では、未だ治療法が確立していないサルコペニア※1に対するUC-MSCの治療効果の検証を目的とし、サルコペニアのモデル動物の一つである老化促進マウス(Senescence-Accelerated Mouse prone 10: SAMP10)を用いてUC-MSC投与効果の検証を行いました。
SAMP10にUC-MSCを投与し、4週間おきに握力ならびに持久力の測定を行った結果、非投与群と比較しUC-MSC投与群において有意に握力・持久力が向上しており、運動機能の改善が認められました。さらに、採取した骨格筋を用い解析を行った結果、UC-MSC投与群において骨格筋重量の増加、炎症の抑制、細胞死の減少、ミトコンドリアの機能改善等が認められました。また、UC-MSCの作用機序の一つとして細胞が分泌するエクソソーム等を含む細胞外小胞(EV)の働きに着目し、SAMP10へのEV投与効果の検証を行った結果、上記試験同様にSAMP10の運動機能の改善が認められました。(図1参照)
以上の結果より、UC-MSCの投与により、加齢に伴う骨格筋の萎縮および骨格筋機能の低下が改善されることが明らかとなりました。また、UC-MSCが分泌するEVがSAMP10の運動機能の改善に寄与することが示唆されました。今後さらなる検証を重ねることで、UC-MSCがサルコペニアに対する有効な治療法となることが期待されます。(図2参照)
※1 サルコペニアとは、加齢に伴う筋委縮ならびに筋力低下または身体機能の低下を伴う病態と定義され、筋線維数及び筋線維サイズの減少、筋収縮スピードの遅延化といった運動機能の低下を特徴とする疾患です。
図1:サルコペニアの分子病態に対する臍帯MSCの作用イメージ
図2:臍帯由来間葉系細胞を使用した新規治療による健康長寿社会の実現
(※出典:厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」(平成30年3月)をもとに当社改変)