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インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.10 オープンイノベーションには フェアな産学連携が不可欠だ

オープンイノベーションには フェアな産学連携が不可欠だ

産学連携こそが、バイオ産業の土台である。  

しかし、フェアな産学連携が我が国で行われているとは言い 難い。京都大学の本庶特別教授が小野薬品に対して、ノーベル 医学生理学賞の受賞の根拠となった抗PD-1抗体の発明に対する 正当な対価を、記者会見や講演で執拗に要求している。300億円 の小野薬品の寄付申し出を蹴ったとか、1000億円以上の寄付を 要求しているなどの報道を見ると、本庶特別教授がまるで金色 夜叉になったようだが、本庶教授の本意はフェアな産学連携を 目指し、1000億円の基金によって若手研究者に自由な研究を 行う研究費を確保することである。現在、2兆円近くを売り上げ、 近い将来には4兆円にもなると推定されている抗PD-1抗体から 常識的なロイヤルティを計算すると累積2000億円から4000 億円にはなる。しかも、現在、抗PD-1抗体に関する特許も係争中 であり、この額は上振れする可能性が高い。だとすると「1000億円 を京大に寄付してくれれば手打ちにする」という本庶特別教授の 要求は極めて慎ましい要求である。  

かつては「先生の発明の特許をいただきたい」と銘酒一本で 話をまとめたと自慢する企業の役員も確かにいた。アカデミアの 先生の中には自身の発明の商業化に無頓着な気風もあった。しかし、 2004年の国立大学法人化と日本版バイドールの施行によって、 職務発明による特許は大学が管理するようになり、2006年の 教育基本法の改正により、知的な成果を社会に還元する、つまり イノベーションを推進することが大学の第三のミッションと義務 つけられた。抗PD-1抗体特許は2002年出願と国立法人化以前 であり、この大発明を十分に管理し正当な対価を企業と交渉する 能力が京大にすらなかった不幸な状況があった。しかし「この無知 に付け込んだような契約」(本庶特別教授の代理人)を盾に正当な ロイヤルティを渋るのは無理がある。このままでは7月にも民事 訴訟が起こる可能性が濃厚である。プロスタグランディンでは 産学連携の成功者となった小野薬品の真価が、今問われている。

miyata.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バイオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長に就任し、2012年より現職。厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会委員、日本医療研究開発機構(AMED)革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業評価委員など、様々な公的活動に従事。

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