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イベントレポート

「名古屋大学発!先進的な取り組み事例×展望 vol.7 ~バイオエンジニアリングの最先端研究「名古屋大学量子化学イノベーション研究所」の研究成果紹介~」を開催(11/26)

2024年11月26日(火)LINK-Jと名古屋大学は、名古屋大学における先進的な取り組み事例×展望をテーマに、「名古屋大学量子化学イノベーション研究所」にスポットをあてたイベントをオンラインにて開催しました。(主催:LINK-J、共催:名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 メディカルイノベーション推進室(MIU))

当日は約70名の方にご参加いただきました。多数のご質問とご視聴、誠にありがとうございました。

量子化学イノベーション研究所の概要について
名古屋大学 未来社会創造機構 量子化学イノベーション研究所 教授 清中 茂樹氏

国家戦略の1つとして,我が国の総力を上げた量子技術の社会経済システムへの利活用が進められています。その代表例として,量子技術イノベーション拠点が挙げられます。2023年5月に,名古屋大学と岐阜大学から構成される国立大学法人である東海国立大学機構に,原子・分子レベルで量子状態を制御して医療および産業への利活用を促進する拠点「量子化学産業創出拠点」が内閣府から認定されました。この「量子化学産業創出拠点」における学内の基盤研究所として,名古屋大学 未来社会創造機構に本学の強みを活かした「量子化学イノベーション研究所」を2024年4月に新たに設置しました。この研究所には,医療および産業への利活用を強く意識した「新技術創出部門」を含む3つの部門(「理論・計測部門」,「量子制御技術部門」,「新技術創出部門」)と3つの部門をシームレスに連携させる運用企画部門として「統括部門」を設置します。3つの部門では,各部門で量子研究を推進するのみならず,「統括部門」のマネジメントの下,3つの部門間の連携により,量子材料,量子生命,量子計測,量子コンピューターなど先端量子技術の医療および産業への利活用を推進していきます。本講演では、その概要について概説しました。

人工抗体の創製と応用
名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻 教授 村上 裕 氏

人工抗体は、ランダム配列を導入した非免疫グロブリン骨格をもつタンパク質ライブラリから、進化分子工学的手法を用いて創製できます。これまで我々はTRAP (transcription–translation coupled with association of puromycin linker) 提示法を活用し、様々な標的に対して高い親和力をもつ人工抗体を創製していました。例えば、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を標的として選択した人工抗体は、KD < 10 pMと強い結合力をもち、新型コロナウイルスに対してIC50 = 46 pMと非常に高い中和活性を持っていました(Science Advaces 2020)。また、MCP-1の活性を阻害するD型人工抗体は、抗原性が大きく低減されたモダリティとして使用できる可能性があります(Nature Communications 2024)。さらに最近、小分子化合物に対しても高い親和性で結合する人工抗体が得られるようになってきました。本講演では、これら人工抗体の創製と応用についての研究を紹介しました。

ナノピペットを用いた超解像度ライブセルイメージング・センシング
名古屋大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 教授 高橋 康史 氏

視床下部や下垂体をつくる
名古屋大学 大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学 准教授 須賀 英隆 氏

 視床下部・下垂体は恒常性維持に欠かせない内分泌器官です。その機能低下に対する現行治療には限界が存在します。次世代医療として期待される再生技術ですが、視床下部・下垂体における組織幹細胞はいまだ明確には定義されていません。一方でヒト多能性幹細胞は材料として有力で、我々はここに注力しています。
 胎児期において下垂体は、多数の転写因子が時間的・空間的に作用して形成されていきます。そこでは周囲組織との相互作用も重要な役割を果たします。これら発生学の知見を細胞培養に投入しています。再凝集技術を利用した立体培養を基礎とし、多能性幹細胞がもつ自己組織化の能力を活かすことで、視床下部・下垂体の発生様式を試験管内で再現、ホルモンを分泌する能力を備えた内分泌細胞が分化誘導できるようになりました。立体培養の特長を生かした組織間相互作用の結果、分化組織の成熟度が上がり、分泌能力向上や周囲との機能的連携が再現できるようになりました。
 生体において視床下部や下垂体は小さいうえに重要機能が集中し、これまで試験管内で実験材料として扱うには難しい面がありました。ヒト多能性幹細胞を用いたオルガノイド技術で、再生医療や疾患モデル化が可能になりつつあります。

総合討論では治験や承認に向けて大きな課題となっている点など講演についての質問を頂戴しました。
アンケートでは「最新技術や名古屋大学の取り組みを知ることができ良かったです」「とても参考になる分子構造学の話で、刮目すべき分野と認識しました」といったご意見を頂戴しました。
来年も名古屋大学の研究施設を深掘りしたイベントを予定しておりますので、是非ご参加ください。

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