概要
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長・中村祐輔)(以下「 NIBIOHN 」と いう。)難治性疾患研究開発・支援センター 木村 友則 センター長は、国立大学法人 大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学 猪阪 善隆 教授と共同で、D-アミノ酸が、新型コロナウイルス感染症COVID-19※1の重症化予測及び重症化予防に有用であることを発見しました。
2019年以降のCOVID-19によるパンデミックが起きて以来、未だに重症化予測や治療法開発は難しく、医療現場や患者にとって大きな負担となっています。
今回、D-アミノ酸※2 を測定すると、COVID-19患者の重症化を予測できること、さらに、D-アミノ酸の一種であるD-アラニンに症状を軽減する効果があることを発見しました。本知見はCOVID-19のみならずインフルエンザウイルス感染症においても適用できることから、ウイルス感染症患者の早期段階での重症化予測や、治療介入が可能となり、関連する医療、患者負担を軽減することが期待されます。
本研究成果は、 10 月21日に「Biochimica et Biophysica Acta Molecular Basis of Disease 」誌のオンライン版で公開されました。
※1 新型コロナウイルス感染症 (Coronavirus disease 2019: COVID-19)
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 型 (SARS-CoV-2) によって引き起こされるウイルス感染症である。世界中で猛威を振るっているが、症状を鋭敏に反映するバイオマーカーが未だ不足していた。
※2 D-アミノ酸
アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、ほとんどのアミノ酸には鏡像異性体(キラル体)であるL-アミノ酸、 D-アミノ酸が存在する。しかし、自然界に存在するアミノ酸は、ほとんどが L-アミノ酸のみである。最近の技術の進歩により、生体内に D-アミノ酸がごく微量存在し、様々な生理活性を持つことが分かってきた。