2024年は3兆9,342億円の見込み。コロナ関連処方減の影響続くも、
自己免疫疾患治療剤をはじめ、
抗がん剤や希少疾患治療剤などの伸びにより、前年比3.7%減にとどまる
■MR数と一人当たりの売上(各年11月時点)
MR数は2019年1.9万人から2023年1.5万人。
一方で、一人当たりの売上は2019年1.7億円から2023年2.7億円へ
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、新型コロナウイルス感染症の流行でビジネスモデルの転換期を迎えた製薬業界において、日系企業に先んじて新たな営業展開、新薬候補の開発を進める外資系製薬企業の動向を調査した。その結果を「製薬企業の新・事業ポートフォリオ戦略 2024 No.1 外資企業編」にまとめた。
この調査では、グローバル展開する大規模な企業や日本への市場展開を目指す企業など、主要または注目の外資系製薬企業42社を対象に、直近のトピックスや医療用医薬品の国内売上、営業体制、提携状況、研究開発状況などを明らかにし、各社の事業戦略の現状と今後を展望した。
◆調査結果の概要
1.外資系製薬企業42社の医療用医薬品国内売上
主要または注目の外資系製薬企業42社における医療用医薬品の国内売上は、2020年は新型コロナの流行を契機に医療機関への受診が控えられたことで前年より縮小した。2021年は新型コロナワクチン・治療剤が登場し、政府が買い上げたことなどにより新型コロナワクチン・治療剤を展開する企業を中心に大きく拡大した。2022年は医療機関への受診が回復に向かったことに加え、新型コロナワクチン・治療剤の処方が増えたことで引き続き拡大した。2023年は希少疾患治療剤や「リンヴォック」(アッヴィ)などの自己免疫疾患治療剤が伸びたものの、新型コロナワクチン・治療剤の処方減少が大きく影響し縮小した。2024年は新型コロナワクチン・治療剤処方減の影響が続くものの、自己免疫疾患治療剤をはじめ、抗がん剤や希少疾患治療剤などの伸びにより、前年比3.7%減にとどまると見込まれる。
外資系製薬企業の多くは注力疾患領域を絞っている。抗がん剤や希少疾患治療剤が売上上位を占める企業が多い。ここ数年、感染症治療剤が売上上位を占める企業が比較的多かったが、新型コロナの鎮静化もあり2024年はやや減少している。
2.MR数と一人当たりの売上(各年11月時点)
医療機関が本当に必要な面談を考えるようになったことでMR数は世界的に減少しており、日本でも減少が加速している。また、外資系製薬企業ではマーケティングや営業のリソースを抗がん剤や希少疾患治療剤、自己免疫疾患治療剤といった特定の疾患領域に集中させ、患者アドボカシー(患者の声を聞くことで、患者に貢献すること)や学会・自治体など、医療従事者以外のステークホルダーへのアプローチを強化していることも減少が進む一因となっている。外資系製薬企業のMR数は、2019年は1.9万人であったが、2023年は1.5万人となった。一方で、MRの生産性は2023年こそ前年同期比減となったが、近年上昇している。2019年は1.7億円であったが、2023年は2.7億円となった。なお、2023年の生産性低下は新型コロナワクチン・治療剤の大幅な販売実績減少が原因である。
3.領域別開発企業数(各年6月時点)
2022年に比べ、2024年は免疫・炎症系疾患領域と希少疾患領域が7社、循環器・腎系疾患領域が9社増加している。今後これら疾患領域における新薬の増加が期待される。がん領域は2022年に比べ、2024年は3社増加し、開発企業数1位を維持している。
◆調査対象
・主要または注目の外資系製薬企業42社