第25123号
国内医療用医薬品市場の調査結果 第四弾
糖尿病・代謝、産婦人科、循環器などの領域を調査
― 2040年市場予測(2024年比) ―
■肥満症治療剤 466億円(66.6倍)
新たな製品の発売、肥満症に対する意識の変化や治療患者の増加などから拡大続く
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2025年1月より国内の医療用医薬品市場を網羅する調査を行っている。調査は4回に分けて実施し、第四弾となる今回は、糖尿病・代謝、産婦人科、循環器、腎、泌尿器、眼科・耳鼻咽喉科の6領域における医療用医薬品市場を調査した。その結果を「2025年版 医療用医薬品フォーキャストデータ No.4」にまとめた。
この調査では、6領域の医療用医薬品市場について、薬効分類別、医薬品区分別に現状を把握し、開発品や政策の動向、パテントクリフなどを加味して2040年まで展望した。
◆注目市場
1.肥満症治療剤

市場は肥満症治療に適応を持ち処方される製品の実績を対象とする(適応外処方の製品は除く)。2023年まで食欲抑制剤「サノレックス」(富士フイルム富山化学)1剤であったが、2024年2月に受容体作動薬「ウゴービ」(ノボ ノルディスク ファーマ)が発売されたことで、市場が拡大しはじめている。2025年4月には受容体作動薬の2剤目となる「ゼップバウンド」(田辺三菱製薬)が発売されたが、適正使用のガイドラインによって医療施設では一定規模以上の病院でなければ処方することが難しく、処方が制限されていることから、市場は拡大しているものの、その伸びは緩やかとなっている。種類別市場構成は、2023年に100.0%を占めた食欲抑制剤が2025年には16.1%、受容体作動薬が83.9%になるとみられる。
今後当面は適正使用ガイドラインにより処方が慎重に行われ、市場は緩やかな拡大が続くとみられる。中長期的には、現在の受容体作動薬2剤にとどまらず、新たな製品の発売、肥満症に対する意識の変化や治療患者の増加、処方しやすい環境への移行なども期待されることから市場は拡大を続けると予想される。
2.糖尿病治療剤

市場は1型糖尿病と2型糖尿病の治療に適応を持ち処方される製品の実績を対象とする(1型糖尿病と2型糖尿病以外の処方実績は除く)。高齢化の進展などにより、糖尿病治療患者の増加が続いており、また、治療を開始すると長期化することから、市場も拡大を続けている。
継続的に新薬が発売されており、2000年代にα-グルコシダーゼ阻害剤やチアゾリジンなどが現れ、2010年代はDPP-4阻害剤、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害剤、2020年代にはGIP/GLP-1受容体作動薬が発売された。
処方の選択肢が増える中で、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、これらの配合剤が市場を大きく押し上げてきたが、薬価改定の影響などからDPP-4阻害剤は近年減少が続いている。2025年は、DPP-4阻害剤に加え、SGLT2阻害剤やこれらの配合剤も減少するとみられるが、2023年4月に発売されたGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」(田辺三菱製薬)や、「ツイミーグ」(住友ファーマ)などが伸長しており、市場は拡大を維持するとみられる。種類別市場構成は、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、これらの配合剤で2023年に66.1%を占めたが2025年には59.6%、「マンジャロ」を含むインスリン/GLP-1受容体作動薬等配合剤が2.3%から10.7%になるとみられる。
今後は、DPP-4阻害剤やSGLT2阻害剤、さらにこれらの配合剤も2020年代後半から順次ジェネリック医薬品に切り替えが進むとみられるが、GLP-1受容体作動薬や「マンジャロ」をはじめとする注射剤の伸長により、市場は2030年代半ばまでプラス成長が続くとみられる。なお、以降は縮小が予想される。
3.不妊治療剤

月経困難症やがん、糖尿病などにも適応を持つ製品もあるが、市場は不妊治療に処方された実績を対象とする。
不妊治療は一時、新型コロナ流行の影響を受けたものの、第一子出生時年齢の上昇や高齢出産の増加から需要が伸びている。2022年4月には生殖補助医療(体外受精や顕微授精など)の保険適用、それに伴う複数製品の不妊治療への適応拡大により、一部製品では大幅な薬価引き下げや不妊治療の需要拡大による限定出荷、品質問題による出荷停止も見られたものの、市場はホルモン剤を中心に拡大推移を維持している。
今後も女性の社会進出や晩婚化を背景に不妊治療の需要増加が市場を押し上げるとみられるが、ジェネリック医薬品も増えていくとみられるため、2030年代半ば以降市場はマイナス推移が予想される。
◆調査結果の概要

糖尿病・代謝領域の市場は、9割近くを占める糖尿病治療剤の動向に左右される。糖尿病治療剤は新薬の発売により伸長している。SGLT2阻害剤などの経口剤は、ジェネリック医薬品発売の影響を受けるものの、「マンジャロ」をはじめ、注射剤の新薬や開発品がけん引し、2030年代半ばまで伸長すると予想される。肥満症治療剤は2024年に新薬が発売されたことで伸長しはじめたが、現状では処方のハードルが高く緩やかな伸びとなっている。しかし、将来的に処方環境の変化などにより急伸長が期待される。
産婦人科領域の市場は、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤と月経障害治療剤で6割以上を占める。産婦人科領域は開発品のない品目が多いが、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤と月経障害治療剤は有望な開発品が控えており、今後も伸長するとみられる。
循環器領域の市場は、高血圧症治療剤と抗凝固剤・ヘパリン製剤で過半を占める。循環器領域は特許切れの製品が多く、ジェネリック医薬品の実績は高血圧症治療剤ではすでに6割を超え、抗凝固剤・ヘパリン製剤でも今後上昇していくとみられる。それに対して肺高血圧症治療剤では大型化が期待される新薬や複数の開発品があり、2040年頃には2倍近い市場規模になると予想される。また、脳卒中治療剤ではアッヴィのモノクローナル抗体RGMa阻害剤をはじめ、大型化が期待される開発品も複数控えており、発売された際には急伸長するとみられる。
腎領域の市場は、透析用剤の市場規模が2024年時点で最も大きい。透析用剤は現状では開発品がなく、今後も横ばいから微減が予想される。透析用剤に次いで規模が大きいのが腎性貧血治療剤、慢性腎臓病治療剤である。腎性貧血治療剤は目新しい開発品がなく実績減少が予想される。慢性腎臓病治療剤はSGLT2阻害剤のジェネリック医薬品の発売で一時減少するものの、2030年前後にSGLT2阻害剤との配合剤の発売が期待されるため、それ以降はプラス成長が期待される。
泌尿器領域の市場は、過活動膀胱・神経因性膀胱治療剤が6割以上を占める。泌尿器領域は開発品が少なく、特許切れに伴うジェネリック医薬品の発売によって市場は縮小が予想される。
眼科・耳鼻咽喉科領域の市場は、網膜疾患治療剤(抗VEGF抗体ほか)が約4割、緑内障治療剤が2割強を占める。網膜疾患治療剤(抗VEGF抗体ほか)は開発品が複数あるが、大型品のバイオシミラーの発売が予想され、2040年には2024年比18.1%減が予測される。角結膜上皮障害治療剤・ドライアイ治療剤はドライアイ患者数の増加とともに伸長するとみられる。また、その他眼科疾患治療剤(抗アレルギー、白内障、近視)は近視進行抑制を目的とした開発品の発売が期待され、2020年代後半からプラス成長に転じると予想される。
◆調査対象
糖尿病・代謝
・糖尿病治療剤
・糖尿病合併症治療剤
・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患治療剤
・痛風・高尿酸血症治療剤
・肥満症治療剤
産婦人科
・子宮筋腫・子宮内膜症治療剤
・経口避妊薬
・経口中絶薬
・切迫早産治療剤
・月経障害治療剤
・更年期障害治療剤
・陣痛促進剤
・不妊治療剤
循環器
・高血圧症治療剤
・脂質異常症治療剤
・抗凝固剤・ヘパリン製剤
・抗血小板剤・末梢血管拡張剤(腰部脊柱管狭窄症を含む)
・心不全治療剤
・不整脈治療剤
・狭心症治療剤
・肺高血圧症治療剤
・利尿剤
・脳卒中治療剤
腎
・腎性貧血治療剤
・高カリウム血症・尿毒症治療剤
・高リン血症治療剤
・低リン血症治療剤
・二次性副甲状腺機能障害治療剤
・慢性腎臓病治療剤
・そう痒症治療剤(透析)
・透析用剤
泌尿器
・過活動膀胱・神経因性膀胱治療剤
・前立腺肥大症治療剤
・夜尿症治療剤
・性機能改善剤
眼科・耳鼻咽喉科
・網膜疾患治療剤(抗VEGF抗体ほか)
・緑内障治療剤
・角結膜上皮障害治療剤・ドライアイ治療剤
・その他眼科疾患治療剤(抗アレルギー・白内障・近視)
・耳鼻科用剤
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