~がん免疫医療の個別化・層別化に向けた免疫賦活化剤・ワクチンアジュバント開発への応用に期待~
この度、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市 理事長 中村祐輔)(以下NIBIOHNという)山本拓也(ワクチン・アジュバント研究センター免疫老化プロジェクト プロジェクトリーダー)、高濱正吉(同研究員)らの研究グループは、ヤマサ醤油等*1との共同研究により、がん免疫治療への応用が期待される免疫賦活剤STINGリガンドの年齢依存的な安全性と免疫調節効果の予測モデルを樹立いたしました。
本研究では、初めて霊長類であるサルを用い、様々な年齢群にSTINGリガンドを筋肉及び静脈経由で投与し、投与部位あるいは末梢血の解析により投与後の免疫細胞の変化を観察することにより、個体ごとの安全性・有効性について評価を行いました。採血した血液サンプルから、従来型の一般的な検査項目やサイトカインなどの液性因子の発現変化に加え、末梢血中の免疫担当細胞の活性化・表現型・構成などできるだけ多くの免疫プロファイルを収集しました。機械学習などのバイオインフォマティクスを用いて多層的データセットを解析することにより、個体ごとの免疫賦活化剤投与後の安全性・有効性を同時に評価できる系を樹立しました。 加えて、賦活化剤投与前に、受容体であるSTING発現を含む多層的データを収集し、投与後の有効性を予測するモデルを樹立いたしました。その結果、有効性に寄与する因子として年齢が見いだされました。
本方法論を用いることで、今後免疫賦活化剤やワクチンアジュバント等の開発や、非臨床試験、臨床試験等において、安全性・有効性を個体ごとにより包括的に評価することが可能となり、層別化・個別化医療への応用が期待されます。
なお、本研究成果は『Molecular Therapy Methods and Clinical Development』令和5年3月9日 号(Volume 28, Page 99-115)に掲載予定です (オンラインでは公開済み)。
*1 :ヤマサ醤油、NIBIOHN霊長類医科学研究センター、ボルドー大学(Universite de Brodeaux, France)との共同研究