2026年2月5日(木)、 LINK-J 主催、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)共催で『原子力機構が目指すライフサイエンス分野への貢献 ~社会実装を目指した新技術とプレイヤーが語る現在の取り組み~』をハイブリッド開催しました。

【登壇者(右から)】
・曽山 明彦(LINK-J 常務理事)
・植田 拓郎氏(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 理事)
・山地 恒輔氏(住友重機械工業株式会社 インダストリアル マシナリーセグメント メディカル&カンタムソリューションズSBU)
・前田 茂貴氏(日本原子力研究開発機構 大洗原子力工学研究所 高速実験炉部 次長)
・瀬川 麻里子氏(日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 原子力センシング研究グループ マネージャー)
・佐賀 要氏(日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 NXR開発センター 分離・利用技術開発特別チーム 研究員)
・永冨 英記氏(日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 研究基盤技術部 部長)
・稲木 杏吏氏(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター 機能診断開発分野 分野長)
開会挨拶
LINK-J常務理事 曽山 明彦
.png)
「JAEAの取り組み」
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 理事 植田 拓郎氏

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、原子力科学技術の研究開発を担う国立研究開発法人である。原子力発電に限らず、再生可能エネルギーとの相乗効果、原子力の持続可能性、社会の幅広い分野での活用(ユビキタス)を柱に研究を進めている。特に放射性同位体(RI)を活用したライフサイエンス分野では、医療用治療薬・診断薬の開発や製造技術、使用済み燃料からの高純度RI分離回収、アルファ線がん治療薬の分析などに取り組む。また、環境、材料、計測分野への応用や、スタートアップ創出を通じた社会実装も推進している。
「研究用原子炉JRR-3における医療用RI安定供給に向けた取組み」
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 研究基盤技術部 部長 永冨 英記氏

研究用原子炉JRR-3を活用し、医療用ラジオアイソトープ(RI)の安定供給に向けた取り組みの紹介。現在、SPECT検査に用いられるモリブデン/テクネチウムは全量を海外輸入に依存しており、供給途絶のリスクが課題となっている。これを受け、国のアクションプランに基づき、JRR-3で中性子照射したモリブデンを用いた国内製造・試験供給を推進している。さらに、濃縮ウランを使わない新しい製造法の研究により、核不拡散や廃棄物削減にも対応する。加えて、ルテチウムやテルビウムなど新たながん治療用RIの開発にも取り組み、研究炉の制約下でも医療現場のニーズに応える体制構築を目指している。
「高速実験炉「常陽」における医療用RI製造に関する取り組み」
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 大洗原子力工学研究所 高速実験炉部 次長 前田 茂貴氏

高速実験炉「常陽」を用いた、がん治療に有望なアルファ線放出核種アクチニウム225の製造研究の紹介。アクチニウム225は、がん細胞に集積する分子と結合させ、近距離で強い細胞障害効果を与える内用療法に用いられ、難治性がんで高い治療効果が報告され注目されている。現在、世界的に供給量が不足しているため、原子炉や加速器による増産競争が進んでいる。「常陽」は高速中性子が豊富で大量製造に適するとされ、ラジウム226を照射・化学分離する方法で、国内外の医療需要を満たす供給を目指す。国のアクションプランに基づき、運転再開後の製造実証に向け準備を進めている。
「RI分離回収技術の医療応用」
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 NXR開発センター 分離・利用技術開発特別チーム 研究員 佐賀 要氏

医療用RIの新たな供給源として、発電用原子炉から生じる使用済み燃料を活用した分離回収技術の医療応用を進めている。使用済み燃料中のRIは他物質と混在しているため、医療利用には高精度な分離回収技術が不可欠である。原子炉や加速器と比べ、使用済み燃料は化学的分離をコア技術とし、RIの種類によっては国内需要を長期間賄える供給力を持つ。具体例として、商用実績のある溶媒抽出法を用い、ストロンチウムから生成されるイットリウム90を回収し、がん治療へ応用する研究を進行中である。国内需要相当の処理能力を実証し、2029年の試験供給開始を目標に開発を進めている。
「α線がん治療薬の化学形・放射能同時分析システム ~NuS-Alpha~」
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 原子力センシング研究グループ マネージャー 瀬川 麻里子氏

アルファ線がん治療薬の開発を支えるため、化学状態と放射能を同時に高速・高感度で分析できる「化学系放射能同時分析システム」を開発し、2025年4月に製品化。アルファ線治療は高い治療効果と低い副作用が期待される一方、RIの半減期が短く、迅速かつ正確な分析が不可欠である。従来法は装置が大型で工程が複雑、感度や速度にも課題があった。新システムでは、アルファ線のみを検出する薄膜シンチレーターと高感度カメラ、クロマトグラフィーを組み合わせ、省スペース一体型装置(A4サイズ)を実現した。感度は従来比約200倍、分析時間は大幅に短縮され、被ばくリスク低減と次世代がん治療薬の実用化加速に貢献している。
「SHIのBNCT事業に対するJAEAとの連携事例」
住友重機械工業株式会社 インダストリアル マシナリーセグメント メディカル&カンタムソリューションズSBU 山地 恒輔氏

パネルディスカッションではパネラーに稲木氏が加わり、モデレーター植田氏、曽山と各登壇者が熱い議論を交わしました。
.png)
国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター 機能診断開発分野 分野長 稲木 杏吏氏

パネルディスカッションでは
・共通課題である「医療用RIの安定供給」
・医療現場から見たRI治療の強みと課題
・使用済み燃料の「資源化」という新たな視点
・法規制と技術開発を並行して進める必要性
・最終的な目的は「患者に届く持続可能な医療」
等について、様々な立場からご意見をいただきました。
講演後は10階ラウンジにて登壇者および参加者間の交流を目的としたネットワーキングを行いました。 ネットワーキングでは、名刺交換や情報交換が積極的に行われました。

参加者からは「RI(核医学)の社会実装事例を通じて、JAEAの研究が医療・産業につながる具体像を理解できました。」「医療用RIの製造側、現場利用側のポジティブ、ネガティブな点が伺えて勉強になりました。」「これまであまりなじみがなかった領域だったが、今後のオンコロジー治療に関して非常に重要な研究だと思った」といった感想を頂きました。

当日は現地、オンライン合わせて103名の方にご参加いただきました。
ご登壇の皆さま、ご参加頂いた皆さまに心より御礼を申し上げます。