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イベントレポート

2020年度 山本雄士ゼミ 第一回~不確実性の中でこそ、変わらない医療の読み解き方を学ぼう~を開催(4/25)

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4月25日(土)にオンラインにて「2020年度 山本雄士ゼミ 第一回 ~不確実性の中でこそ、変わらない医療の読み解き方を学ぼう~」を開催いたしました。(主催:山本雄士)

COVID-19の感染拡大に伴い、先の見通せない不安が蔓延している今だからこそ、この変化の時を理解するために、時代を越えても変わらない医療の基本を深く理解することが大切だ、と考えました。

ただし、ゼミの開催の仕方は大きく変わりました。普段通りの日本橋での開催では「密」は避けられないだろうということで、ゼミ史上初のオンライン開催を実施致しました。ミーティングアプリ'Zoom'と、質問や意見を匿名で募集するアプリ'sli.do'を用いての開催となりました。

地理的制約がなくなったことは特筆すべきで、世界中(!!)から130人にも登る方々にご参加頂けることとなりましたが、同時に、今までと違って、山本先生の「ワールドクラスのギャグ」に対する参加者の反応が見えにくい環境であり、雰囲気を盛り上げられるのか当初心配されました。しかしながら、参加者の方々もzoomのチャット機能などを使って積極的にリアクションをすることが出来、結果、会は大盛況となりました。

ゼミでは、まず、参加者をオンラインで5-6人の小グループに分割し、「ゼミに期待すること」「医療の世界でやりたいこと」について、考えを共有しあいました(この文章をご覧になっている皆様も是非考えてみて、1分で頭の中で話し相手に伝えてみてください!!)。意外と難しいかもしれません。ここでは、「エレベーターピッチ」すなわち、エレベーターで偶然意思決定者に遭遇した時に、自分の考えを的確に意思決定者に伝え、影響を及ぼすスキルを会得することの大切さをまずは実感しました。

このセクションでは参加者の皆様の色々な考えが飛び交いましたが、次に投げかけられた問は、「それを、他でもないあなたが実践することにどんな意味があるのか」という問です(これも是非考えてみてください!!)。医療業界における「当事者意識」を持って思考することが大切です。そして、最も大切なことは、その姿勢を身につけるための場として、月一回のゼミを有効活用してほしい、ということです。

その後は、様々なポイントについて、レクチャー形式で山本先生にご講義頂きました。まずは自分が行動を起こす業界の構造やその業界のルールがどういったものなのか、行動を起こすために自分が会得すべきスキルとして「ビジョン」「マネジメント」「リーダーシップ」があるのだ、ということ。

そして、本題である「変わらない医療の基本」について。医療はビジネス(価値の創造と提供で対価を得るもの;「金儲け」とは違うものであることに注意)である、ということ。間違った課題設定に対して求めたそれらしい答えは、無意味なだけでなく無意味であることに気付きにくいという点で非常に厄介である、ということ。現代の医療業界の組織構造、経営手法、医療サービスに対する支払いの方式が、技術の進歩に合わせた時代変化をしておらず依然として19世紀型であること。医療の「サービスの量の確保から、医療の社会に寄与する価値の向上を目指すようになっている」「直感に頼る医療から、治療のアウトカムが一定程度保証出来る精密医療に進展している」「診療の場が専門施設などに集約していたのが、家庭や生活の場に分散している」といった流れ、業務モデルの「課題探究型」「課題解決型」「共同解決型」の3つへの細分化の流れ、そして、その結果、「患者」か「病気になったら病院に来る人」しか診ることの出来ない医療が、「健康を後回しにする」人たちを後回しにしている、という問題。

それらの問題に対処するために、病院は「目標を設定し、実績を評価する」という経済・マネジメントの基本原理に従うべき、より具体的には、組織として、「方針や手順が明確」であり、「対象患者ごとにサービスが設計」されていて、「質の評価」を実行出来ていて、「ノウハウを蓄積」できる、強い組織でなければならない、ということ。

最後に、今の情勢に絡めて、「有事のリーダーシップ」について。組織のresilienceを決めるのは、構成員が有事に際して何をするかによって決まるものであり、それを踏まえて医療従事者や彼らをまとめるリーダーは積極的に自分の役割を果たすべきだということ。その中で、信念を持ちつつ、現実を直視しなければならない、ということは、ストックデールの逆説の喩えとともにとても印象に残りました。最後に、「自分を許す、休められる場所」を拠り所として持つという「有事のセルフマネジメント」の視点も忘れないように、というメッセージとともに、ゼミは締めくくられました。

1時間程度の講義時間でなかなか盛りだくさんの内容をお伝えすることになりましたが、講義内容についてより深く学びたい方は、ゼミの「教科書」とも呼べる書籍を是非閲読ください。

 武内和久・山本雄士著「投資型医療 医療費で国がつぶれる前に」

 マイケル・E・ポーター著、山本雄士訳「医療戦略の本質 価値を向上させる競争」

 クレイトン・M・クリステンセン著、山本雄士ら訳「医療イノベーションの本質ー破壊的創造の処方箋」

技術的な面でも、ゼミ本編の終了後や懇親会で参加者の方々からの質問やご意見が止めどなく寄せられ続けた盛況っぷりからも、オンラインであっても山本ゼミを盛り上げることが出来る、という確かな手応えを感じた会となりました。5月にもオンラインでの開催を検討しています。ケースディスカッションのやり方については、検討、試行錯誤を今後も続けていくことになるかと存じますが、ゼミコミュニティの皆様には、変わらぬご支援のほど、お願い申し上げます。

文責: 2020年度副ゼミ長 佐藤匠

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