Lab of the Future
「Lab of the Future」とは何か?
AI×ラボオートメーションが変える研究開発の未来
これまでAI創薬で注目されてきたのは、『AIが有望な化合物を設計・予測する』ことでした。しかし、実際の創薬研究では、AIが候補化合物を提案するだけでは研究は進まず、当たり前のことですが実験による検証が必要となります。
実際にはDMTA(Design-Make-Test-Analysis)サイクルを繰り返していくことが重要です。従来、このサイクルには数か月単位の時間がかかることが多く、特に実験・評価の固定で多大な時間を要していました。
2026年に National Materials に掲載された『The Lab of the Future: An Industrial Infrastructure for Scalable Molecular Innovation』では、この研究開発のサイクルそのものを変革する『Lab of the Future(未来ラボ)』という考え方が示されています。
著者らは、こうしたインフラをすでに数年にわたり運用し、200を超える専門分野別の計算モデル(Scientific AI)、300を超えるロボットワークステーション(Physical AI)を、創薬・多形スクリーニング・材料開発など複数の応用領域で稼働させてきたとしています。今回、XtalPiの考える未来ラボについてご紹介するとともに、アクセラレート・バイオはこの流れの中で何をご提案できるのかについてご紹介いたします。
2. XtalPiの考える未来ラボ
XtalPiが描く未来ラボでは、AI、実験自動化、そしてAIエージェントがそれぞれ独立して動くのではなく、一つの研究開発システムとして統合されます。各モジュール毎の主な役割と具体例は下表の通りです。
| モジュール | 主な役割 | 具体例 |
|---|---|---|
| Scientific AI | 物理法則や知識ルール、マルチモーダルな実験データを統合して意思決定を支援し、それぞれの予測に信頼度を付与することで、あらゆる推奨結果の信頼性を明確にします。 | 分子設計、反応予測、活性予測、物性予測など |
| Physical AI | 精密かつ大規模な実験を、人手を介さず継続的に実行します。試薬の取り扱いや実験のセットアップから、リアルタイムでのモニタリングや分析まで、実験プロセス全体を自動化します。 | 合成、分析、評価などをロボットが実行 |
| Agentic System | ワークフロー全体を統括し、ロボット実験装置へのタスク割り当て、分析機器のスケジューリング、問題発生時の実験プロセスの再調整までを、人の介入を最小限に抑えながら行います。 | 実験の優先順位付け、実験条件の設定、ロボット制御、異常発生時の対応など |
3. 3つモジュールが統合されることにより、『クローズドループ』となる

未来ラボの本質は、3つのモジュールが組み合わせることです。上記ループが高速に回り続けることで、研究開発そのものを継続的に改善していくことができます。
特に重要なのが、成功した実験だけではなく、失敗した実験や実験プロセスの詳細もデータ(ネガティブデータ)として蓄積することです。
従来のR&Dでは、成功結果は論文や特許などに残る一方、失敗した条件や詳細なプロセス情報が十分に記録されないケースがあります。しかも、論文や特許は本来「人間が読んで理解し、知的財産として保護する」ために最適化された形式であり、AIモデルの学習に使える構造化データにはなっていません。その結果、AIが学習できるはずの「何がうまくいかなかったか」という情報が、業界全体として失われてしまっているのです。
未来ラボでは、こうしたNegative Dataも含めて、温度変化や分光データといった実験の一つひとつの詳細まで含めて蓄積し、次の意思決定に活用します。論文はこの点を「三者(Scientific AI・Physical AI・Agentic System)は共進化しなければならない」という核心的な洞察として整理しています。より良いモデルはより良いデータを必要とし、良いデータは標準化・大規模化された実験を必要とし、大規模な実験には賢いオーケストレーションが必要になる――どれか一つだけを鍛えても、全体としての力は発揮されないということです。
4. 事例から見る「未来ラボ」の現在地
未来ラボは、単なる未来予想ではありません。論文では、AI・自動実験・フィードバックを組み合わせた具体的な事例が紹介されています。ここでは、ペロブスカイト太陽電池の開発の事例を紹介します。
この研究では、robotic glove-box × recipe language model × autonomous planner を組み合わせたシステムが構築されました。そして、なんと50,764回の実験を不活性雰囲気下で実行し、26.5%の認証済み変換効率を達成しています。
この事例が示しているのは、AI×自動実験の価値が、単なる「省人化」にとどまらないということです。人間が手作業で実施するには現実的ではないほど大量の実験を高速に実行し、そこからAIが学習できるデータを生成する。つまり、『自動実験そのものが、AIを進化させるための「データ生成エンジン」になる』という考え方です。
今回は材料開発の事例を紹介しましたが、論文中では創薬に関する事例も紹介されており、未来ラボは材料開発、創薬研究など幅広い分野で活用可能であることが示唆されています。
5. AI×ラボオートメーションの可能性を体験してみませんか?
ここまで紹介したLab of the Futureは、決して遠い未来の話ではなく、AIによる分子設計、自動化された実験、そしてAIエージェントによる研究開発のオーケストレーションは、すでに一部の研究現場で実用化に向けた取り組みが進んでいます。論文内でも、『今の統合システムの多くはレベル2~3(人間とAIの協働レベル)にとどまっており、レベル4以降に到達するには意思決定の質・モジュール化された自動化設備・継続学習のさらなる進化が必要だ』と述べているように、Lab of the Futureは今まさに発展途上にあります。
一方、すべての企業がいきなりこのトレンドに乗っかり、『AIモデルを自社開発する』、『ロボット実験設備を導入する』、『Agentic Systemを構築する』、『大量の実験データ基盤を整備する』といったことを行う必要はないと考えます。
むしろ、最初の一手として、『AI×ラボオートメーションが、自社の研究開発がどこまで変えるのかを体験してみる』というアプローチがあります。
近年、CROは積極的に最新技術の導入を進めており、また、既に複数の顧客とそれらを用いたPoC(概念検証)を実施しています。そのため、『AI×ラボオートメーションを活用した研究開発を実際の研究テーマで試すためのパートナー』としてCROを活用するという戦略は合理的であると考えます。特に自動化実験設備への投資は高額になるため、関心はあるけど導入に二の足を踏んでいる企業にとってはベストな選択ではないかと考えています。
アクセラレート・バイオでは、上記の最適なソリューションとして『ChemLexのCROサービス』を提供しています。
ChemLexは、AI×ラボオートメーションに強みを有する合成CROであり、化合物合成、反応条件最適化などの化学合成に関連するサービスをFTEおよびFFSで提供しております。そのため、お客様のご予算やご状況に合わせてご利用いただくことが可能です。
詳細が気になる方は是非とお問い合わせください。
AI×ラボオートメーションによって、研究開発がどこまで変わるのか。まずは、あなたの研究テーマで体験してみませんか?
参考文献
Yang, M. et al., "The Lab of the Future: An Industrial Infrastructure for Scalable Molecular Innovation," National Materials, 2026;1:106–109 (オープンアクセス、CC BY) の内容をもとに作成しました。
当社の強み:AI × 物理シミュレーション × 自動化実験による次世代創薬支援
AI・量子計算・分子動力学・自動化実験を統合した、次世代の創薬プラットフォーム
株式会社アクセラレート・バイオは、AI・量子計算・分子動力学、さらに自動化合成プラットフォームを融合したアプローチにより、創薬研究の効率化と高精度化を実現しております。低分子創薬の探索段階からリード最適化、さらに合成検討・条件最適化に至るまで、一貫した技術支援をご提供しております。
AI
生成AI・機械学習による分子設計と予測
物理シミュレーション
量子計算・分子動力学による高精度解析
自動化実験
自動合成プラットフォームによる高速検証
提供サービス
サービス 01
AIと物理シミュレーションを融合した動的構造解析
分子動力学シミュレーションとAIの融合により、標的タンパク質の動的挙動を可視化・解析いたします。静的構造では捉えられない結合部位の変動を捉え、より現実に近い創薬デザインを可能にします。
サービス 02
量子AI創薬プラットフォーム
量子計算とAIを組み合わせ、従来手法では捉えきれなかった分子特性を高精度に予測いたします。エネルギー計算・電子状態解析に基づく次世代の分子スクリーニングを実現します。
サービス 03
ターゲットベースの分子設計
標的タンパク質の構造情報に基づき、有望な候補化合物を効率的に設計いたします。結合親和性と選択性を両立させたde novoデザインをスピーディにご提供します。
サービス 04
リード化合物の最適化
活性・選択性・薬物動態を考慮した多面的な最適化を高速に実現。ADMET予測と組み合わせ、開発候補化合物へのスムーズな展開を支援します。
サービス 05
AI逆合成解析・自動合成最適化
目的化合物の合成手順をAIが逆算し、自動化合成プラットフォームによる実験でコスト・収率・反応条件を最適化いたします。設計から検証・合成まで、ワンストップで対応いたします。
探索から合成までの一貫支援フロー
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当社は、海外の先端AI創薬技術と国内の研究開発ニーズをつなぐ架け橋として、国内外の企業・研究機関との連携を通じ、新薬研究開発現場における課題解決と新たな価値創出に貢献してまいります。
| 会社名 | 株式会社アクセラレート・バイオ(Accelerate Bio Co., Ltd.) |
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