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投稿日:2026.11.02 投稿者:株式会社アクセラレート・バイオ

AI創薬の最前線⑥ AIは化合物のどこを変えるべきか? ― Explainable AIとAIエージェントによる化合物最適化

AI創薬の最前線⑥

AIは化合物のどこを変えるべきか?
― Explainable AIとAIエージェントによる化合物最適化

AIによる化合物最適化の新しいアプローチ

今回紹介するのは、2026年に Artificial Intelligence in the Life Sciences に掲載された論文「A client-enhanced language model for interactive compound optimization guided by explainable artificial intelligence」である。

メディシナルケミストにとって、Structure-Activity Relationship(SAR)に基づく化合物最適化は創薬研究の中心的な業務である。近年、生成AIによる新規化合物設計が進歩しているが、「なぜその構造を提案したのか」を理解することは依然として難しい。著者らは、Explainable AI(XAI:説明可能なAI)と化合物生成モデルを組み合わせた「X-DeepSARM」を開発し、さらにLLMと接続することで、自然言語による化合物最適化を可能にした。

X-DeepSARMによる化合物最適化の流れ
図1|X-DeepSARMによる化合物最適化の流れ(当社作成)

SAR解析と生成AIを組み合わせる

X-DeepSARMの基盤となるDeepSARMは、化合物をコア(key)と置換基(value)に分解し、SAR Matrix(SARM)として整理する手法に由来する。これはメディシナルケミストが日常的に利用するR-groupテーブルに近い考え方である。初回のコラム「AI創薬の最前線①」においても、DeepSARMを利用した骨格変換を紹介しており、こちらも参考にされたい。

本研究ではSYK阻害薬5,047化合物からXGBoostによる活性予測モデルを構築し、R²=0.67、MAE(Mean Absolute Error:平均絶対誤差)=0.46(pIC50)の予測性能を得た。さらにSHAP解析(予測結果に対する各特徴量の正または負の寄与を説明する手法)により、高い予測活性に負の寄与を示す部分構造を特定・可視化した。これらを優先的に置換し、活性を再予測することで、説明可能な化合物最適化を実現している。

X-DeepSARMによるSYK阻害薬の構造最適化

2つのSYK阻害薬を用いた検証では、SHAP解析に基づいて置換基を段階的に変換し、出発化合物1は2サイクルで予測pIC50が6.08から8.59(約300倍)、出発化合物2は3サイクルで7.26から8.89(約40倍)へ改善した。

これらの結果は、活性に不利な部分構造を特定し、既存骨格を活かしながら段階的に最適化できる可能性を示している。

SYK阻害薬の構造最適化例
図2|SYK阻害薬の構造最適化例(当社作成)

LLMによる化合物最適化の自動実行

さらに著者らは、X-DeepSARMをMCP(Model Context Protocol:AIと外部ツールをつなぐ共通規格)を介してLLMに接続した。gpt-oss-20bを利用し、自然言語による指示から活性予測、SHAP解析、置換基生成などを自動実行できるシステムを構築している。

LLMによる反復最適化では、最大5サイクルの最適化を1ラウンドとし、最も高い予測活性を示した化合物を次の出発点として3ラウンド実行した。その結果、予測pIC50は6.08から最大9.42へ改善し、約2,200倍の予測活性向上が得られた。分子量650を上限とするフィルタを設け、最適化に伴う分子サイズの増大を制御した。

LLMによる反復最適化の実行例
図3|LLMによる反復最適化の実行例(当社作成)

前項の検証例がX-DeepSARM自体の構造最適化能力を示すのに対し、本項はLLMが最適化ツールを繰り返し操作し、次の化合物選択や終了条件を含むワークフローを実行できることを示している。

メディシナルケミストの視点から

本研究の特徴は、活性向上のために「どこを変えるべきか」をAIが予測モデルに基づいて示し、構造変換まで実行する点にある。SHAP解析による部分構造の寄与の可視化は、メディシナルケミストが行うSAR解析とも親和性が高く、化合物設計の解釈性を高める点で興味深い。

さらに、今回の活性向上は予測結果であるが、説明可能なAIと化合物生成、LLMによる自動化を統合した点に意義がある。今後、実験検証や物性・合成容易性の評価を組み込むことで、メディシナルケミストとAIが協働する実践的な化合物最適化への発展が期待される。

*本稿は原著論文をもとに内容を要約・再構成したものです。正確な研究内容や詳細については、原著論文をご確認ください。

図の出典
当社作成(AIツール使用)

論文情報(Open access)
Atsushi Yoshimori, Jürgen Bajorath, A client-enhanced language model for interactive compound optimization guided by explainable artificial intelligence, Artificial Intelligence in the Life Sciences, Volume 9, 2026, 100154, ISSN 2667-3185, https://doi.org/10.1016/j.ailsci.2026.100154.

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