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投稿日:2026.09.29 投稿者:株式会社アクセラレート・バイオ

創薬研究におけるAIエージェントの活用(前編)― ケーススタディーを中心とするレビューからAI創薬の現在地を探る

AI創薬の最前線③

創薬研究におけるAIエージェントの活用(前編)
― ケーススタディーを中心とするレビューからAI創薬の現在地を探る

創薬 × AIエージェント

今回紹介するのは、創薬関連トピックのレビュー雑誌である Drug Discovery Today に2026年に掲載された論文「AI agents in drug discovery: applications and case studies」である。近年、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする生成AI技術の急速な進歩は、創薬研究にも新たなトレンドをもたらしている。その一つとして注目されているのが、Agentic AI(エージェント型AI)である。

創薬におけるAIの進化
図1|創薬におけるAIの進化(当社作成)
Agentic AIとは、AIが与えられた目的に対して自ら計画を立て、必要な情報やツールを選択・実行し、その結果をもとに次の行動を決定していくAIの枠組みである。その中心的な役割を担うAIエージェント(AI agent)は、ユーザーからの質問に回答する従来の対話型AIとは異なり、LLMに文献・データベース、予測・解析ツール、さらには実験装置などを組み合わせることで、情報収集から解析・実験、得られた結果に基づく仮説の修正まで、一連の研究プロセスを反復的に進めることができる。
Agentic AIがつなぐ創薬研究の新しい形
図2|Agentic AIがつなぐ創薬研究の新しい形(当社作成)

創薬におけるAgentic AIの活用と注目点

論文では、Agentic AIの基本的なアーキテクチャを解説するとともに、文献・特許情報の統合、実験プロトコルの自動生成、毒性予測、低分子化合物の合成、ドラッグリパーパシング、さらには創薬プロジェクト全体を通した意思決定まで、幅広い応用事例を紹介している。初期の実装例では、研究に要する時間の短縮や再現性、スケーラビリティの向上が報告されており、AIの役割が個別の予測や情報生成から、複数の研究工程をつなぎ、研究そのものを進める方向へ広がりつつあることが示されている。

一方、実用化に向けては、データの不均一性、AIによる判断の信頼性、機密データやプライバシーの保護、システムを客観的に評価するベンチマークの整備など、解決すべき課題も多い。AIエージェントが研究者に取って代わるというよりも、複雑化する創薬研究において、情報収集から実験、意思決定までを支援する新たな研究パートナーとしてどこまで発展するのかが、今後の注目点となる。

創薬研究との相性は?

創薬は、標的同定・検証、ヒット探索、Design-Make-Test-Analyze(DMTA)サイクルによるリード最適化、前臨床安全性評価、臨床開発へと続く長期間かつ高コストなプロセスである。各段階ではオミクス、画像、アッセイ、PK、臨床データなど膨大な情報が生成されるが、それらを収集・統合して意思決定する作業の多くは依然として人間に依存している。

これまでのPredictive AIはQSARなどによる物性・活性予測を、Generative AIは新規化学構造などの生成を可能にした。しかし、基本的には人間が入力を与え、出力を解釈して次の作業を行う「受動的なAI」である。

これに対してAgentic AIでは、LLMに外部ツール、データソース、メモリーを接続し、AIエージェントが「考える → 行動する → 結果を観察する → 振り返る → 次の行動を決める」というサイクルを自律的に繰り返す。これは創薬におけるDMTAサイクルとも非常に相性のよい考え方である。

Agentic AI in Drug Discovery
図3|Agentic AI in Drug Discovery(当社作成)

AIエージェントが利用する4種類のツール

著者らは、創薬におけるAIエージェントが利用するツールを大きく以下の4種類に分類している。これらを組み合わせることで、「情報収集 → 予測 → 実験 → 結果の記憶 → 次の仮説」というclosed-loop型の創薬研究が可能になる。

ツール分類役割
Perception(情報取得)ChEMBL、PubChem、STRING、Reactome、論文、特許などから必要な情報を取得
Computation(計算・予測)AlphaFoldなどの予測モデル、シミュレーション、データ解析、ADMET予測などを実行
Action(行動・実行)ロボット分注、細胞アッセイ、NGSライブラリー作製などを介して実際の実験を行う
Memory(記憶)過去のSAR、毒性情報、実験結果、失敗例などを蓄積し、次の判断に利用

AIエージェントで「研究チーム」を編成できる?

Agentic AIには複数の設計方式がある。最も基本的なのがReAct(Reasoning + Acting)で、一つのAIエージェントが必要なツールを選択しながら「推論→実行」を繰り返す。さらに、別のエージェントが計画を評価・修正するReflection型、Supervisor agentが複数の専門agentへ仕事を割り振るSupervisor型、複数のagentが互いにコミュニケーションするSwarm型などが紹介されている。

特にSupervisor型は、創薬研究に置き換えるとイメージしやすい。Supervisor agentをプロジェクトリーダーとすれば、その下に「文献調査」「バイオインフォマティクス」「メディシナルケミストリー」「毒性評価」などを担当する専門AIエージェントを配置できる。つまり、Agentic AIによって、複数の専門AIエージェントからなる仮想的な「研究チーム」を構成するという考え方である。
AIエージェントを利用して研究チームを編成できる?
図4|AIエージェントを利用して研究チームを編成できる?(当社作成)

次回へ続く

次回は、本論文で紹介されている実際のAIエージェントシステムのケーススタディーに焦点を当てる。文献・特許調査から低分子合成、創薬プロジェクト全体の意思決定まで、AIエージェントが研究の現場でどこまで実用化されているのかを紹介する。

【Divamicsが提供する創薬研究用AI】

Agentic AIの進歩について、実際のプラットフォームの例を挙げておきたい。当社が国内でのご紹介・支援を行っているAI創薬受託企業のDivamics(ダイバミックス)は、ヒット同定から前臨床候補化合物(PCC)までの初期創薬を、次の2つのプラットフォームを軸に支援している。

・BioTrajectory AI:文献・特許・臨床データを解析し、SARの整理から分子設計の提案までを担うデータ基盤である。対話型アシスタント「Diva」を備え、創薬研究におけるAgentic AIを体感することが可能である。

BioTrajectory AI
図5|BioTrajectory AI(Divamics)

・Molecular Dynamics Platform:マルチスケールMD×AIにより、薬物分子の透過や標的タンパク質との結合・相互作用を物理ベースで再現する、Computationの中核。

図6|分子ムービー技術(Divamics)

低分子・ペプチド・抗体の各モダリティに対応し、50社超のグローバルクライアントとともに80以上のパイプラインを進めており、ペプチドBGM0504など2つのプログラムがすでに第III相に到達している。

本稿で述べた「研究チーム」を構成する「専門家」は、すでにこうしたプラットフォームとして動き始めている。あとは、それらを統括するSupervisorの役割をAIエージェントがどこまで担えるのかという課題が存在するが、その答えの一部も現場で見え始めていると感じる。当社としても、この動きを見逃さず、国内の創薬研究への活用につなげていきたいと考えている。

Divamics|分子動力学 × AIによる創薬受託サービス

Hit同定からPCC到達まで、初期創薬プロセスを加速するプラットフォーム

技術・事業の詳細は当社サイトの紹介ページへ 【Divamicsの詳細を見る】→ 

*本稿は原著論文をもとに内容を要約・再構成したものです。正確な研究内容や詳細については、原著論文をご確認ください。

図の出典
当社作成(AIツール使用)

論文情報(Open access)
Huynh DL, Seal S; AIA4S Consortium; Reid D, Carpenter AE, Bender A, Spjuth O. AI agents in drug discovery: applications and case studies. Drug Discov Today. 2026 May;31(3):104650. doi: 10.1016/j.drudis.2026.104650. Epub 2026 Mar 24. PMID: 41887499.

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本社営業部 03-4540-7578

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