イベントレポート

製薬×データサイエンスMeetup2026 業界外出身者も活躍! 製薬業界におけるAI、データ活用の最先端、講演&キャリア相談会を開催(8/22)

医薬品の研究開発を担う製薬企業では、バリューチェーンにおける効率化と価値創出に向けたデータサイエンスの活用ニーズが年々、高まっています。国内の製薬企業の多くがデータサイエンティストなどデジタル人財の採用・社内育成に力を入れるものの、

データサイエンティストやデータエンジニアの人財不足
製薬業界への転職やキャリアパスのイメージ不足
「製薬×データサイエンス」の具体的な取り組みや事例の認知不足

という課題があり、これに対応するため国内の製薬企業各社が協力し2021年に立ち上げたイベントが「製薬×データサイエンスMeetup」です。このイベントを通じて、データサイエンスの具体的な取り組みやキャリアパスをより広く発信していくことを目指しています。
6回目の開催となる今年は、アステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、塩野義製薬株式会社、住友ファーマ株式会社、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、田辺ファーマ株式会社、マルホ株式会社の9社からデータサイエンスやDX推進を担当するメンバーに加え、LINK-Jが事務局として参画し、2026年8月22日(土)に開催し、593名の方にお申込いただきました。

当日の発表内容を報告します。

【発表要旨 目次】

1⃣第一三共株式会社 
『AIは同僚になれるか:製薬DXにおけるエージェントAIの現在地』
柴原 琢磨/  Global DX、データファウンデーション&AI-ML部 生成AIグループ グループ長

2⃣アステラス製薬株式会社
『不確実性を乗りこなす:シナリオ分析による意思決定支援』
萩原 陽介/ デジタルX デジタルインサイト&アナリティクスソリューションズ シニアディレクター

3⃣小野薬品工業株式会社
『患者ペルソナモデルは現実を模倣できているのか?』
渡邊 崇/ 開発本部 データサイエンス部 PVデータ戦略課(兼務)デジタルテクノロジー本部 ビジネスIT&DX部 ビジネスソリューション一室 データ戦略課 Senior Manager

4⃣エーザイ株式会社
『創薬探索を支える内製Webアプリ開発 』  
酒寄 圭佑/ Integrated Data Science Human biology Data Ecosystem 部

5⃣塩野義製薬株式会社
『量子技術によるビジネス変革に向けた取り組みの紹介』 
松下 和希/ DX推進本部 データサイエンス部 コンピュータサイエンスグループ

6⃣田辺ファーマ株式会社
『データ統合解析基盤で加速する創薬プロセス変革~AIに働いてもらうデータ基盤構築に向けて~』   
氏家 謙/ 創薬本部 創薬基盤研究所 (兼務)ITデジタル本部 デジタル戦略部

7⃣マルホ株式会社
『データサイエンスは製剤設計をどこまで変えるのか ― AI×シミュレーションによる“製剤CAD”の実践 ―』
馬場 廣海/ データサイエンス部 デジタルトランスレーショナルリサーチグループ グループマネージャー

8⃣武田薬品工業株式会社
『臨床試験におけるAIによる統計解析・プログラミング関連業務効率化の取り組み』
高浪 洋平/ 日本開発センター 生物統計室 室長
仲家 諒/ 日本開発センター 生物統計室 主席部員
佐々木 英麿/ 日本開発センター 生物統計室 課長代理
水間 浩太郎/ 日本開発センター 生物統計室 課長代理

9⃣住友ファーマ株式会社
『異常の兆しと波形の違いを捉える、製造現場の課題に応えるデータ活用事例』
井深 健太郎/ IT&データアナリティクス部 データアナリティクス&デジタルソリューショングループ

【発表要旨】

1⃣第一三共株式会社  
『AIは同僚になれるか:製薬DXにおけるエージェントAIの現在地』
柴原 琢磨/  Global DX、データファウンデーション&AI-ML部 生成AIグループ グループ長

AIを使える人を増やすだけでは、組織はAIで変わりません。本講演では、製薬企業の全社インフラそのものをAIが扱える状態、すなわちAI-Controllableにしていくという発想を起点に、AI-Ready な組織への変革が論じられました。ツール導入や人材育成にとどまらず、データ、業務、システムをAIが安全に操作できる前提条件の設計が、第一三共での実践を交えて紹介されました。AIが同僚として働ける会社とは何かを、基盤の側から問い直す内容となりました。

#DX #生成AI #LLM #Agent

2⃣アステラス製薬株式会社
『不確実性を乗りこなす:シナリオ分析による意思決定支援』
萩原 陽介/ デジタルX デジタルインサイト&アナリティクスソリューションズ シニアディレクター

製薬企業の経営には、研究開発の不確実性や大規模な投資判断、地政学的変動に伴う供給網の再構築など、多様なリスクが存在します。本発表では、こうしたリスクとベネフィットを定量化し、複数のシナリオにおける価値の時間変化をシミュレートすることで、リスクとベネフィットのトレードオフを踏まえた意思決定を支援する取り組みが、複数の事業領域における実践例を交えて紹介されました。

#事業戦略 #製造 #サプライチェーン #シミュレーション #意思決定支援 

3⃣小野薬品工業株式会社
『患者ペルソナモデルは現実を模倣できているのか?』
渡邊 崇/ 開発本部 データサイエンス部 PVデータ戦略課(兼務)デジタルテクノロジー本部 ビジネスIT&DX部 ビジネスソリューション一室 データ戦略課 Senior Manager

LLMによるペルソナ生成・シミュレーションは、個人模倣から社会シミュレーションまで応用が拡大しています。本発表では、合成されたペルソナにユーザーが求めるものは「完全な模倣/正解」ではなく、納得感と意外性を両立する「仮説生成」であるという立場から、疫学データ等で分布を反映した合成ペルソナ集団を例に、実患者像とのずれが生む論点と設計上の課題を整理しつつ議論されました。    

#全般 #LLM #Temporal Knowledge Graph #Simulation

4⃣エーザイ株式会社
『創薬探索を支える内製Webアプリ開発 』  
酒寄 圭佑/ Integrated Data Science Human biology Data Ecosystem 部

エーザイの創薬探索研究では、化合物評価・スクリーニング依頼・結果解析・在庫管理など多岐にわたる研究業務を支えるITシステムが不可欠です。本発表では、研究者の要望に100%応えることをモットーに、クラウドネイティブな技術基盤のもとで多様なWebアプリを内製で設計・開発・運用してきた実践と、内製だからこそ実現できる柔軟なカスタマイズで研究者の探索活動を支え続けた事例が紹介されました。

#創薬研究 #探索研究 #内製開発 #Webアプリ #ツール開発 #クラウド #LLM 

5⃣塩野義製薬株式会社
『量子技術によるビジネス変革に向けた取り組みの紹介』 
松下 和希/ DX推進本部 データサイエンス部 コンピュータサイエンスグループ

近年、ハードウェアとソフトウェアの両面から、量子コンピュータの実現に向けた動きが加速しています。
特に量子技術によって、シミュレーションや最適化計算といった大規模な計算が高速に実行できるようになると言われており、塩野義製薬では、製薬ビジネスの様々な課題解決を達成するために、量子技術によるビジネス変革の可能性を模索しています。本発表では、量子ゲート、量子アニーリング(イジングマシン)の方式を問わず、創薬プロセスでのシミュレーションや製造分野、医療医薬品の情報提供活動での最適化計算の適用例など、各バリューチェーンにおける量子技術の活用事例の一部が紹介されました。

#量子技術 #最適化計算 #シミュレーション

6⃣田辺ファーマ株式会社
『データ統合解析基盤で加速する創薬プロセス変革~AIに働いてもらうデータ基盤構築に向けて~』   

氏家 謙/ 創薬本部 創薬基盤研究所 (兼務)ITデジタル本部 デジタル戦略部


増大していく各種研究データから最大限の価値を生み出し、創薬研究を加速化していく必要があります。本発表では、創薬本部・ITデジタル本部合同で進めている創薬プロセス変革の取り組みの概要と、データ統合解析基盤活用の取り組みについて個別事例も交えながら紹介されました。

#創薬研究 #データ統合解析基盤 #生成AI #AI-Ready

7⃣マルホ株式会社
『データサイエンスは製剤設計をどこまで変えるのか ― AI×シミュレーションによる“製剤CAD”の実践 ―』
馬場 廣海/ データサイエンス部 デジタルトランスレーショナルリサーチグループ グループマネージャー

データサイエンスの進展により、製剤設計は経験依存から計算・予測駆動へと変化しつつあります。本講演では、機械学習および分子シミュレーションを組み合わせた製剤CADの取り組みを紹介し、各製剤特性の統合最適化や処方設計支援の実例を通じて、製剤開発におけるデータ駆動型アプローチの可能性と課題が議論されました。 

#製剤開発 #機械学習 #計算化学 #分子シミュレーション #製剤設計 #製剤特性予測

8⃣武田薬品工業株式会社
『臨床試験におけるAIによる統計解析・プログラミング関連業務効率化の取り組み』
高浪 洋平/ 日本開発センター 生物統計室 室長
仲家 諒/ 日本開発センター 生物統計室 主席部員
佐々木 英麿/ 日本開発センター 生物統計室 課長代理
水間 浩太郎/ 日本開発センター 生物統計室 課長代理

近年の生成AIの発展を背景に、武田薬品工業ではAIに関する様々な取り組みが進められていますが、本講演では、医薬品開発関連業務の効率化を目的とした部門横断型のAIプロジェクトの中から、臨床試験における統計解析・プログラミング業務を対象に、統計解析計画書や帳票レイアウトの自動作成、過去の試験情報や関連資料に基づく解析計画支援ツールの開発、CDISC形式データセットおよび解析プログラムの自動生成に向けた取り組みが紹介されました。

#開発 #統計解析 #プログラミング #CDISC #LLM #RAG #AIエージェント

9⃣住友ファーマ株式会社
『異常の兆しと波形の違いを捉える、製造現場の課題に応えるデータ活用事例』
井深 健太郎/ IT&データアナリティクス部 データアナリティクス&デジタルソリューショングループ  

住友ファーマでは、グループ会社内の共同取り組み事例として、設備予兆保全と波形解析アプリの二つの内製DX事例を推進しています。設備予兆保全では、センサーデータの正常パターンからの乖離を捉えて故障予兆の早期検知を目指しました。波形解析アプリでは、クロマトグラムのずれ補正と過去データ比較により不純物解析を迅速化しました。現場課題を起点に、安定稼働、品質向上、コスト低減、意思決定高度化を支える取り組みが紹介されました。

#生産 #機械学習 #信号処理 #AWS

アンケート結果、今後に向けて

本イベントには、製薬企業をはじめIT企業、製造業、教育・研究機関など様々な業界から参加者が集まりました。アンケート回答者の9割が「イベントに満足した」、「今後も製薬×データサイエンスMeetupイベントに参加したい」と回答しています。

・様々な企業様における、製薬のデータサイエンスへのアプローチを知ることができたので非常に有意義な時間だった。

・研究開発部門や製造部門に限らず、企業としてデータサイエンスにどう取り組み、それを各分野でどのように活用しているかの様子を垣間見ることができ、大変参考になりました。

・業界でのAI利活用の幅と深度を知ることができた。

・普段きくことのできない、興味深い話を多方面の取り組みから知ることができた。

・将来のキャリア像のイメージを具体化することができたため。

といったコメントが寄せられました。また、キャリア採用だけでなく、データサイエンスで製薬業界を目指す大学生・大学院生の皆さんにも第2部まで多く参加いただきました。

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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