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イベントレポート

製薬×データサイエンスMeetup2025 データがリードするヘルスケア・イノベーション、講演&キャリア相談会を開催(8/30)

医薬品の研究開発を担う製薬企業では、バリューチェーンにおける効率化と価値創出に向けたデータサイエンスの活用ニーズが年々、高まっています。国内の製薬企業の多くがデータサイエンティストなどデジタル人財の採用・社内育成に力を入れるものの、

データサイエンティストやデータエンジニアの人財不足
製薬業界への転職やキャリアパスのイメージ不足
「製薬×データサイエンス」の具体的な取り組みや事例の認知不足

という課題があり、これに対応するため国内の製薬企業各社が協力し2021年に立ち上げたイベントが「製薬×データサイエンスMeetup」です。このイベントを通じて、データサイエンスの具体的な取り組みやキャリアパスをより広く発信していくことを目指しています。
5回目の開催となる今年は、アステラス製薬、エーザイ、小野薬品工業、塩野義製薬、住友ファーマ、武田薬品工業、田辺三菱製薬、第一三共、中外製薬の9社からデータサイエンスやDX推進を担当するメンバーに加え、LINK-Jが事務局として参画し、2025年8月30日(土)に開催し、910名の方にお申込いただきました。

当日の発表内容を報告します。

【発表要旨 目次】

1⃣田辺三菱製薬株式会社 
『Wet出身研究者が語る自然言語処理による創薬プロセス変革』
西村 裕一/ 創薬本部 創薬基盤研究所

2⃣アステラス製薬株式会社
『創薬研究における情報収集の効率化:NLP・画像処理による非構造化データ解析事例 』  
小松 祐城/ DigitalX R&DX Biology Informatics データサイエンティスト  

3⃣エーザイ株式会社
『探索合成効率化を目指した予測AIモデルのシステム構築』
黒木 章弘/ Integrated Chemistry Advanced Technology部 

4⃣第一三共株式会社 
『Agentic AIを活用したデータサイエンス業務の効率化』
前寺 正太郎/ グローバルDX データインテリジェンス部 データアナリシス&AIーMLグループ

5⃣中外製薬株式会社
『LLMで加速する、創薬業務プロセス』 
水谷 圭佑/ デジタルトランスフォーメーションユニット デジタルソリューション部 データサイエンスグループ

6⃣小野薬品工業株式会社
『つながりを科学する:協同の知とイノベーション創発』   
山下 博史/ デジタルテクノロジー本部 ビジネスIT&DX部データ戦略課

7⃣塩野義製薬株式会社
『メディカルライティング x 生成AI = ??』
西村 亮平/ DX推進本部 データサイエンス部 Generative AIグループ グループ長

8⃣住友ファーマ株式会社
『アンメットメディカルニーズ情報の全社活用基盤の構築 -デザイン思考で「化けた」案件-』
坂本 光/ IT & データアナリティクス部 データアナリティクス&デジタルソリューショングループ

9⃣武田薬品工業株式会社
『グローバルな製造DXの最前線 - 予測型工場の実現に向けた武田薬品工業の実践』
劉 玉平/ グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン 戦略企画部 データサイエンスグループ 主席部員  

【発表要旨】

1⃣田辺三菱製薬株式会社 
『Wet出身研究者が語る自然言語処理による創薬プロセス変革』
西村 裕一/ 創薬本部 創薬基盤研究所

創薬難易度が高まるなか、R&Dの生産性向上は製薬企業共通の課題である。AI・DX技術の活用がその解決策として期待され、当社でも複数のDX施策を推進している。なかでも自然言語処理技術(NLP)は汎用性が高く、創薬研究の多様な領域に応用可能である。本発表では、バイオインフォインフォマティクスとNLPを活用した創薬プロセス変革の実例を紹介し、Wet出身の立場からデータサイエンティストとの協働の重要性についても考察する。

#創薬研究 #バイオインフォマティクス #論文データ #自然言語処理 #LLM 

2⃣アステラス製薬株式会社
『創薬研究における情報収集の効率化:NLP・画像処理による非構造化データ解析事例 』  
小松 祐城/ DigitalX R&DX Biology Informatics データサイエンティスト  

創薬研究者は日々、最先端の科学的知見や研究成果、臨床試験の結果などを調査し、創薬に資する情報の収集に多くの時間と労力を費やしている。本発表では、自然言語処理や画像処理を活用し、膨大な論文や特許などに含まれるテキストや画像から、研究方針の策定や新規アイデアの検証などに有用な情報を効率的に抽出・整理する取り組みを紹介する。また、創薬研究におけるデータ分析の魅力や、現場で直面する難しさについても触れる予定である。  

#創薬研究 #自然言語処理 #LLM #画像処理 

3⃣エーザイ株式会社
『探索合成効率化を目指した予測AIモデルのシステム構築』
黒木 章弘/ Integrated Chemistry Advanced Technology部 

化学構造から薬効、物性、薬物動態を予測するAIモデルは、効率的に医薬品候補品を見出す上で重要な技術である。本発表では、モデル構築時に複数の特徴量を同時に比較できるシステムや、有機合成化学者が構造アイデアをアップロードするだけで、様々な予測値が自動で計算・表示されるwebツールについて、その活用事例を通して紹介を行う。

#創薬研究 #機械学習 #活性予測 #ADMET予測 #ツール開発

4⃣第一三共株式会社 
『Agentic AIを活用したデータサイエンス業務の効率化』
前寺 正太郎/ グローバルDX データインテリジェンス部 データアナリシス&AIーMLグループ

近年、大規模言語モデル(LLM)の急速な発展により、幅広い分野での業務プロセスの飛躍的な改善、効率化が期待されている。本トークでは、LLMを活用した第一三共におけるデータサイエンス業務の効率化を、特にagentic AIに注目して概説する。Agentic AIによってサーベイ、仮説立案、検証、コーディングのプロセスを高速化させる試みを、実際のデータサイエンス業務を例に挙げて発表する。

#創薬研究 #生成AI #Agentic AI  #機械学習  #創薬研究 #LLM

5⃣中外製薬株式会社
『LLMで加速する、創薬業務プロセス』 
水谷 圭佑/ デジタルトランスフォーメーションユニット デジタルソリューション部 データサイエンスグループ

本発表では、創薬研究活動を支援するLLMを応用した取り組みを3つ紹介する。初めに、テキストに加えて分子表現を入力とした、マルチモダールLLMによる分子の物性説明文生成である。続いて、バイオ/化学分野での画像識別タスクにおいて、モデルの推論精度を最大化する自動プロンプトチューニングを解説する。最後に、社外発表資料の審査効率化のため、マルチモダールLLMを活用した類似資料検索アプリケーションを紹介する。

#創薬研究 #LLM #マルチモーダルモデル #自動プロンプトチューニング #ケモインフォマティクス #業務効率化 #Google Cloud 

6⃣小野薬品工業株式会社
『つながりを科学する:協同の知とイノベーション創発』   
山下 博史/ デジタルテクノロジー本部 ビジネスIT&DX部データ戦略課

人と人、人とAIの関係からイノベーションが生まれる。本講では、社員間のつながりの構造からコミュニケーションを計測する取り組みを紹介し、人とAIが対等な関係性のもとで医薬分子デザインを行うシナリオを考察する。

#創薬研究 #社内コミュニケーション #ソーシャルネットワーク分析 #人とAIのインタラクション

7⃣塩野義製薬株式会社
『メディカルライティング x 生成AI = ??』
西村 亮平/ DX推進本部 データサイエンス部 Generative AIグループ グループ長

生成AIはライフサイエンス領域の業務に大きな革新をもたらす技術として期待されており、2025年度は具体的な業務への適用が進む段階にあると考えられます。塩野義製薬データサイエンス部 Generative AI グループでは、全社共通のAIインフラを構築するとともに、事業部門と密に連携しながら研究開発の効率化や経営意思決定の高度化など幅広い応用に取り組んでいます。本講演では、これらのうち医薬開発領域にフォーカスし、メディカルライティングの効率化を目指す事例をご紹介いたします。

#医薬開発 #生成AI

8⃣住友ファーマ株式会社
『アンメットメディカルニーズ情報の全社活用基盤の構築 -デザイン思考で「化けた」案件-』
坂本 光/ IT & データアナリティクス部 データアナリティクス&デジタルソリューショングループ

とある部門から寄せられた学会抄録情報の活用の相談。よくよく話を聞くと、真のニーズは情報資産の全社的な活用だった…!本講演では、いちユーザー部門の要望がデザイン思考により全社規模のデータの利活用を目指すプロジェクトに変貌する様や、プロジェクトで目指す構想および取り組み状況について紹介する。住友ファーマは、社員全員がビジネスを考える会社へ。

#育薬戦略 #データ活用基盤 #アンメットメディカルニーズ #デザイン思考 #アジャイル

9⃣武田薬品工業株式会社
『グローバルな製造DXの最前線 - 予測型工場の実現に向けた武田薬品工業の実践』
劉 玉平/ グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン 戦略企画部 データサイエンスグループ 主席部員
  

武田薬品工業では、より高いレベルで患者さんに高品質な医薬品を安定的にお届けするために、予測型工場の実現を目指した技術開発・現場実装を行っています。今回紹介する事例では原薬製造のプロセス・品質試験データなどを横断的に利用し、理論計算や機械学習などの技術を巧みに組み合わせた予測モデルを構築しました。製造プロセスで起きている現象の理解や収量などの予測に役立てている様子や今後の展望についてお話します。

#製造 #製造DX #機械学習 #デジタルツイン #Factory of the Future

アンケート結果、今後に向けて

本イベントは、製薬企業をはじめIT企業、製造業、教育・研究機関など様々な業界から参加者が集まりました。アンケート回答者の9割が「イベントに満足した」、「今後も製薬×データサイエンスMeetupイベントに参加したい」と回答しています。

・今後データサイエンスに関わる業務を志望する中で、各企業のバリューチェーンにおけるデータ活用事例について具体的に知ることができてとてもよかったです。

・製薬企業は一見データサイエンスと関わりが薄そうというイメージもあり、就活の視野に入ってなかったが、今回のイベントを通じて様々な企業や場面で活用されていることを知り、興味をもつきっかけとなった

・各社の取り組みをかなり具体的にご説明いただき、製薬企業でのLLMを中核としたシステム・アプリケーションの現状を知ることができました。

・古典的な創薬から脱皮したイメージです。

・一度に9社が集う企画力がまず素晴らしいと思いました。その上で創薬タイムライン上の、異なる各ステージで、どのようにデータサイエンスやAIが利用されているかを幅広く知れて、大変参考になりました。


といったコメントが寄せられました。また、キャリア採用だけでなく、データサイエンスで製薬業界を目指す大学生・大学院生の皆さんにも第2部まで多く参加いただきました。

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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