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イベントレポート

「メドテック・イノベーション シンポジウム&ピッチ」を開催(11/9)

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医療機器をはじめとする「メドテック」領域における新たなイノベーションの創出を考えるシンポジウム「MEDTEC INNOVATON symposium and pitch」が11月9日、日本橋三井ホールで開催されました。

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シンポジウムは、澤芳樹氏による基調講演で始まり、続いて行われたパネルディスカッションでは、日本を代表する研究者・事業者・投資家が登壇し、日本発のメドテック・イノベーション創出における課題について活発な議論が行われました。その後、休憩を挟んで「メドテック・イノベーション・ピッチ」が開催され、国内外のスタートアップが豪華賞品(海外派遣または最大1億円の事業化資金)をかけたコンテストに挑戦しました。休憩時間には、ポスター展示コーナーでショートプレゼンテーション「メドテックオークション」が行われ、企業や団体が日頃の活動を紹介しました。

【基調講演】

「産学連携による医療機器開発の成功をめざして~阪大クロスイノベによるエコシステム~」
澤 芳樹氏(LINK-J副理事長/大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科 教授)

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心臓外科医である澤氏は、半世紀以上前に大阪大学で実施された日本初の「人工心肺を用いた開心術」から最新の大動脈弁留置術に至るまでの機器開発の歴史を振り返り、「心臓血管外科の技術は医工連携によって発展してきた」と指摘しました。一方で、現在の心臓血管外科で使用されている医療機器のほとんどが海外企業の製品である点に触れ、ほぼ一方的な輸入超過の状態にある現状に危惧を示しました。その上で、こうした現状に対する大阪大学の取り組みとして、産学連携による新たな医療機器創出を目指した「産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ」の概要や、米国・スタンフォード大学発の起業家教育プログラムの日本版「ジャパン・バイオデザイン」の導入による大学発スタートアップの育成などについて解説しました。澤氏は、日本には有望なシーズと技術はあるが、その産業化を支援する仕組みが足りないと述べ、この現状を逆手に取った日本独自のエコシステムが構築できれば、先行する米国やドイツを巻き返す機会もあるだろうと訴えました。

「Value-Based Healthcare(VBHC)に医療機器企業はどう対応すべきか」
西田庄吾氏(ボストン コンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター)

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日本を含む先進各国の医療費は高騰を続けており、様々な医療コスト削減策はコスト高騰のスピードに対応しきれていません。また、アウトカムには先進国での同じ施術においてもバラツキが存在しています。そこで、医療コストとアウトカムのバランスを最適化し、患者への医療価値を最大化する手法として注目されているのが「VBHC(Value-Based Healthcare: 価値にもとづく医療)」です。西田氏は海外での医療機器企業のVBHCへの取り組みを、①価値に基づくソリューションの提供(例:ペースメーカーと抗菌パッチを組み合わせ、術後感染率の低いインプラント手術を提供する)、②価値評価するためのアウトカム・コストのデータを提供(例:経カテーテル人工弁の患者からデータを取得し、アウトカムのデータベースを作成し、製品評価・改良に活用する)、③統合された価値に基づく医療の提供 (例:クリニックの買収を通して、包括的な疾患マネジメントのビジネスを展開する)、という3つの視点で紹介しました。VBHCについて、西田氏は「将来的には日本にもなんらかの形で導入される可能性もある」と指摘し、今後は海外での対応のみならず、日本市場でも対応が求められるのではとの展望を示しました。

日本発のメドテックユニコーン創成を目指して

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「医療系スタートアップのimplementation」
内田毅彦氏(株式会社日本医療機器開発機構 代表取締役CEO)

医療機器ビジネスでは、基礎研究→プロトタイプ→事業化→商業化という過程を経て社会実装(implementation)されます。しかし内田氏によると、日本では「プロトタイプの完成時点でストップして、事業化に至らない事例が大半」であり、どれほど優れた発明や技術も社会実装されなければ「イノベーション」とはいえないと指摘。一方で米国と英国にはそれぞれエコシステムがあり、技術を事業化に結びつけるシステムが整備されています。内田氏は、経験豊富なシリアルアントレプレナー(連続起業家)が事業化を支援する「米国型」と、実務そのものを請負う企業等が事業化支援をする「英国型」を比較し、日本にとっては「英国型」がヒントになると提案しました。

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「VCが投資したいメドテックスタートアップ」
大下 創氏(MedVenture Partners株式会社 代表取締役社長)

大下氏が代表取締役社長を務めるMedVenture Partners株式会社は、医療機器分野に特化したベンチャーキャピタルで、大下氏自身は、これまでにも脳動脈瘤用ステントを開発するスタートアップの支援などを通じて、投資実績を上げてきました。大下氏はこれまでの経験から、スタートアップを評価するポイントとして「ニーズの高さ」「市場規模」「競合状況」などを例示。特に侵襲性の高い医療機器はリスクが高く、大手企業は実質的には自社開発はできておらず、新技術の導入を買収に頼っているため、スタートアップが勝負すべき分野である訴えます。最先端の医療機器の開発は簡単ではありませんが、大下氏は「開発の難易度が高くても、革新的な医療機器を開発している方々と、ぜひ一緒に仕事をしたい」と呼びかけました。

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「臨床現場で取り組むメドテック・インキュベーション」
竹下修由氏(国立がん研究センター東病院 NEXT医療機器開発センター 医員)

NETX医療機器開発センターは、医療現場のニーズにもとづく次世代医療機器の開発と人材育成を目的に設立された医療機器開発プラットフォーム/インキュベーション施設です。これまでにも、エンジニアやスタートアップとの「医工連携」を通じて、手術支援ロボット、消化管接着剤、便秘治療デバイスなどの技術開発に挑戦し、成果を生み出しています。さらに、「柏の葉をシリコンバレーに」を合言葉に、千葉県柏市で進行中のライフサイエンス・エコシステム構築事業においても、同センターは中核施設に位置づけられています。竹下氏は、最近は人材育成などを支援する資金面も充実しており、今後はインキュベーターとしても日本の医療機器開発の加速に貢献していきたいと訴えました。

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「医工連携」
松谷正明氏(マニー株式会社 取締役兼執行役会長)

マニー株式会社の松谷氏は、これまでの「医工連携」を通じて得た経験則や失敗談などを紹介しました。縫合針や手術用メスなどの領域で圧倒的なシェアを誇る同社ですが、決して最初から順風満帆というわけではありませんでした。松谷氏は、試作品を作っては医師に評価をしてもらい、その意見をもとにさらに改良を重ねた日々を振り返り、「日本の医師の評価水準が高いため、世界でも通用するものができる」との感想を述べました。さらに「無償提供による製品評価では本音を聞きだせない」「一般開業医の意見も聞かなければ売れる製品には育たない」など、これまでの実例を紹介。その上で「日本の医師と一緒に仕事ができたことは、私たちにとって幸運であった」との感想を述べました。

【パネルディスカッション】

モデレーター
浅野武夫氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部附属病院 産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ特任准教授)
前田祐二郎(ジャパン・バイオデザイン 共同ディレクター/アイリス株式会社 ディレクター/MedTech Designer 代表)

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4名の講演終了後には、基調講演の2名を交えた6名によるディスカッションが行われました。日本のスタートアップ環境の課題については「起業志向の医師は増えてきたが、エンジニアとシーズの数が絶対的に足りない(竹下氏)」「優れた技術はあるのに生命に関わる領域の機器開発には取り組みたがらない(澤氏)」と指摘する声が上がりました。またスタートアップだけでなく投資側の課題を指摘する声として「リスクの程度と期待できるリターンを見据えて投資をできる投資家が少ない(大下氏)」との声も。今後の展開については「日本発イノベーションも重要だが、エコシステム自体が日本だけで閉じてしまうと厳しい(西田氏)」という意見も出ました。また医工連携で多くの製品を生み出してきた松谷氏は「海外(特にドイツ)は医師と企業の関係が非常にフラットだった」と述べ、意見交換しやすい環境も必要だと指摘。内田氏は、新しいことを始める時は想定外の事態はいくらでも起きると述べ、失敗を恐れる前に「とにかく始めてみよう」と挑戦を促しました。

【展示者によるショートプレゼン メドテックオークション】

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株式会社コヴィア
株式会社コヴィアは、同社の製品である「睡眠状態のモニタリングに用いる睡眠センサー」を紹介しました。イスラエルの睡眠測定器企業から技術供与を受けて開発された同社の製品は、小型・軽量ながらも「ほぼ医療機器並みのデータが取得できる(担当者)」のが特徴です。マットレスの下に設置する圧力式センサーで、充電不要のため充電による事故の心配がないなど、安全性にも配慮されています。同社の担当者は、終末期患者の睡眠状態の把握、睡眠時無呼吸診断の簡易診断、乗務員・運転手の健康管理など様々な用途が期待できると述べました。

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国境なき医師団 日本
国境なき医師団 日本は、人道医療援助活動を行う特定非営利活動法人です。その活動方針は、発展途上国や被災地での医療・人道援助活動に留まらず、「人道支援のためのイノベーションの創出」を目指した企画も推進しています。昨年9月には「人道援助における外科治療のためのハッカソン」を開催し、医療者、エンジニア、デザイナーからビジネス関係者まで多岐に渡る領域の参加者が2日間にわたって課題抽出と革新的な解決策の探求に挑戦しました。同団体はこうした活動を通じて、課題発見とソリューションの提供を目指していく予定です。

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第一医科株式会社
第一医科株式会社は、同社が開発したメニエール病治療機器を紹介しました。メニエール病は、難聴・耳鳴などの耳症状に合併するめまい・吐き気などを主訴とする疾患で、中高年の発症事例が多いことで知られています。同社は、メニエール病の産学コンソーシアムに参画し、小型かつ軽量で持ち運びできる「中耳加圧機器」の開発に着手。その後、正式に医療機器としての製造販売承認を取得し、さらに保険適応も取得しました。現在は販売網の構築に取り組んでおり、担当者は「専門的な知識のある人達とぜひ一緒に仕事をしたい」と呼びかけました。

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大日本印刷株式会社
総合印刷会社である大日本印刷株式会社は、同社の印刷技術を活用した新たな服薬管理デバイスを紹介しました。同デバイスは、電子モジュールを内蔵したパッケージ台紙と読み取り装置で構成されており、台紙から薬剤を取り出すとその時刻が装置に記録されます。専用台紙を用いる分コスト高になりますが、市販直後調査などに同デバイスを活用してもらい、製薬会社にコストの一部を負担してもらうことで、利用者の負担軽減につなげたい考えです。担当者は、治療効果の最大化から無駄な薬剤の削減まで、様々な課題の解決に活用できると訴えました。

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東大阪市(東大阪市医工連携研究会)
中小の製造業者が集中する東大阪市(大阪府)で活動する東大阪市医工連携研究会は、市内に拠点を置くモノづくり企業に対して、医療ビジネスに役立つ情報の提供、勉強会やネットワークづくり、医療現場を知る機会の提供などを行う組織です。大阪大学が設置した「産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ」に自治体として唯一参画するなど、「医工連携」にも積極的に取り組んでいます。同市の企業とのパイプ役も担っており、試作品や特注品の製造、部品・部材の調達などの案件についても、気軽に相談をしてほしいと呼びかけています。

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ふくしま医療機器産業推進機構
ふくしま医療機器産業推進機構は、福島県郡山市に開設した「ふくしま医療機器開発支援センター」の概要を紹介しました。同センターの特徴の1つは「医療機器の安全性評価機能」。たとえば、開発中の埋め込み型医療機器の長期に渡る影響を検討できるよう、センター内の設備は動物の長期飼育に対応しています。またセンター内には「模擬手術室」も用意されており、模擬臓器などを用いたトレーニングにも対応しています。担当者は、承認申請用データの収集から新製品の手技訓練まで、様々な用途に利用できる同施設の利便性をアピールしました。

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ミヨシ電子株式会社
無線技術の開発製造などを業務とするミヨシ電子株式会社は、同社の技術を用いて医療周辺機器の無線化に成功した2例を紹介しました。1例目は「点滴中の抜針事故を予防するサポーター」で、同社が開発した小型の通信モジュールを内蔵することで、就寝中などにサポーターを留めるテープが外れると自動的にナースコールにつながるように改良しました。もう1例は補聴器用リモコンで、補聴器の紛失時にはアラームを鳴らして場所を探すことができます。同社の担当者は「無線技術を活かした医療周辺機器の開発をお手伝いしたい」と呼びかけました。

20181109_0313.jpg メディギア・インターナショナル株式会社
ナノデバイスで新たながん治療に挑戦するメディギア・インターナショナル株式会社は、開発中のがん治療用ナノデバイスの概要を解説しました。ナノサイズのポリマーで物理的にがん細胞への酸素・栄養供給を遮断する技術で、同社の担当者は「即効性が期待できる上にがんの種類に限らず治療効果が期待できる」といいます。生体適合性物質を使用するため、従来の動脈塞栓術よりも安全性が高く、薬剤ではないので他の治療薬とのバッティングも起きないとされます。前臨床時点では良好な結果が得られており、担当者は今後の展開に自信を見せました。

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PGV株式会社
大阪大学発スタートアップのPGV株式会社は、同大学で開発されたウェアラブル脳波センサーを紹介しました。非常に小型かつ軽量な脳波センサーで、額に貼り付けるだけで脳波を測定できるのが特徴です。性能も「医療用脳波計とほぼ同等のシグナルを前頭部から取得できる(担当者)」。まだ市販はされていませんが、大学や企業などに貸与しており、効果検証試験などの用途で利用されています。医療機器としての承認取得を目指した開発も進行中で、担当者は「将来的には脳波測定を通じて将来の疾患リスクを知る手段に活用したい」と述べました。

【大学・企業・病院発 メドテック・イノベーション ピッチ】
難治性便秘の治療機器開発に挑戦する「株式会社Alivas」が優勝


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ピッチコンテストには、選考で選ばれたスタートアップ企業ら6チームが参加。プレゼンテーションの結果、難治性便秘の治療機器開発に挑戦する「株式会社Alivas」が優勝に輝き、賞品(海外派遣プログラムまたは事業化費用)が授与されました。審査員からは株式会社Alivasに対して「技術的な課題もあるがターゲットは面白い」「便秘患者にとっては現在の外科治療も内科治療も苦痛。第三の選択肢があるのは良い」との意見が出され、また他の発表も「非常にレベルが高い」「ブレイクスルーが期待できる可能性もある」と高く評価されました。受賞を受けて株式会社Alivasの田島氏は「まだ始まったばかり。先の長いプロジェクトなので、これを機会に応援して頂ければと思う」と謝辞を述べました。

【審査員】

内田毅彦氏(株式会社日本医療機器開発機構 代表取締役CEO)
大下 創氏(MedVenture Partners株式会社 代表取締役社長)
Kirk Zeller氏(US-Japan Medtech Frontiers, Board member)
高宮慎一氏(株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ Chief Strategy Officer)

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株式会社Alivas:田島知幸氏
株式会社Alivasは、デバイスを用いた難治性便秘治療の技術開発に挑戦する企業です。慢性便秘は直接命に関わる疾患ではないものの、症状による苦痛はもちろん、睡眠障害や労働生産性の低下など様々な合併症状を引き起こし、生活の質まで大きく低下させることがわかっています。現在の治療法は内科治療(服薬)または外科治療(結腸摘出)ですが、薬物治療に対する満足度は低く、外科治療は侵襲性の高さゆえにほとんど選択されません。そこで同社は、低侵襲で治療効果の高い「第三の選択肢」としてデバイスの可能性に着目。これまでの動物実験では良好な結果が得られているといいます。田島氏は、同様のアプローチは世界的にみても同社だけであると指摘し、その独自性をアピールしました。

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A10 Lab Inc. /エーテンラボ株式会社:長坂 剛氏
エーテンラボ株式会社は、生活習慣病治療の継続性に取り組むソフトウェア企業です。糖尿病などの生活習慣病の治療では、何より患者自身の行動変容が重要ですが、実際にはなかなか長続きしないのが現状です。同社はもともと、同じ目標を共有する5人がチームとなって行動変容を目指すスマートフォン用アプリケーション「みんチャレ」を開発。すでに一般公開され、ユーザーから高い評価を獲得している人気アプリとなりました。そこで今度は同アプリを通じて、「生活習慣改善アプリ」として糖尿病患者さん同士のピアサポートによる治療継続に使っていただく活動を始めました。長坂氏は「ヒトは自分から積極的に行動を起こすと幸せになれる」と指摘し、行動変容を通じて人を幸せに健康にしていきたいと訴えました。


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吃音VR Adversity Project:梅津 円氏
吃音VR Adversity Projectは、発話障害の一種である「吃音症」の解消を目的としたトレーニング機器の開発に取り組んでいます。CEOの梅津氏は、自身も吃音でアルバイト先で叱声を浴びた経験を振り返り、「吃音者は働くことに困難を感じることが多い」と指摘。同時に、苦手だった接客業を続けたことで吃音が改善した経験から「小さな成功の積み重ねが吃音の改善には有効だ」と考えるに至りました。実際に開発中の吃音改善トレーニング機器にも、就職面接など吃音者が苦手な場面を再現することで、その「小さな成功の積み重ね」を体験できる構造が採用されています。講演で梅津氏は「吃音者が自分の可能性を諦めなくて良い社会を実現したい」との展望を述べました。

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九州大学先導物質化学研究所田中賢研究室:田中 賢氏
九州大学先導物質化学研究田中賢研究室は、がんの診断・治療から新薬開発に至るまで様々な用途が期待される血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)の新規回収技術の実用化に挑戦しています。CTCは、血液中にはわずかな量しか含まれていない中、既存のCTC分離回収技術は様々な課題を抱えています。そこで田中氏は、同研究室で開発した中間水コンセプトを用いることで、効率的かつ低コストにCTCを回収できる方法を考案しました。田中氏は、製薬会社から臨床現場まで様々な領域の関係者が「効率的に回収できる技術を求めている」と指摘。「何とか製品化したい」と今後の決意を示しました。

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DTCO(Digital Treasury Corporation):ヤコブ・リー氏
DTCO(Digital Treasury Corporation)は、ブロックチェーン技術の医療応用に挑戦する台湾の企業です。ユーザー全員で分散的にデータを管理することで安全性を担保する「ブロックチェーン」は、医療現場で主流の「クラウド」と異なり、外部からの攻撃にも強いなどの利点があります。そこで同社は、ブロックチェーンを用いた医療用プラットフォームを独自に開発。同技術を用いて、患者・医師・医療機関・保険者・製薬会社などを結ぶネットワーク構築に取り組んでいます。リー氏は、ブロックチェーンによって実現する将来像として「国際基準に準拠した個人情報保護」「新たな医薬品や医療機器の加速」「世界規模の健康データ市場の創出」などの実例を挙げ、実現に意欲を見せました。

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ミニマムラボ/京都府立医科大学:横尾誠一氏
ミニマムラボ/京都府立医科大学は「再生医療用シングルユースシステム」を用いた「再生医療の低価格化」の可能性を追求しています。現在の再生医療における課題のひとつは「費用の高さ」。現行制度ではクリーンルームで細胞培養を行う必要があり、クリーンルームの設置には億単位の費用が必要です。そこで横尾氏は「テーブルの上で作業が可能。クリーンルームの消耗品化」、すなわち「細胞投入口を備えたガス透過性バッグ(シングルユースシステム)」を試作。横尾氏は、同システムが使用可能になればクリーンルームも臨床培養士も不要になると述べ、製造プロセスの低価格化を通じて再生医療の産業化に貢献したいと訴えました。

【懇親会】

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シンポジウム終了後は、同会場内で懇親会が行われました。来賓挨拶として、文部科学省の吉田光成氏(研究振興局 研究振興戦略官)、厚生労働省の飯村康夫氏(医政局経済課 ベンチャー等支援戦略室長)、および経済産業省の富原早夏氏(商務情報政策局 商務・サービスグループ 医療・福祉機器産業室長)にご登場いただき、応援メッセージを頂きました。そして、LINK-J副理事長を務める澤芳樹氏が開会と乾杯の音頭を取りました。登壇者および参加者、展示者による意見交換が積極的に行われ、活気ある賑やかな会となりました。

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