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「いつかノーベル賞につながるイノベーションを」LINK-J SCOOP担当者インタビュー

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LINK-Jは、ライフサイエンスに関わる人々が「集まる」・「つながる」ための交流・連携と、そのなかで生まれたアイディアやイノベーションが「育つ」・「はばたく」ための育成・支援を行うことを目的に設立されました。そして、学生を中心とする次世代育成のプログラムとして、2017年度より"SANDBOX"の取り組みを開始しました。

SANDBOXのプロジェクトとして2018年度よりスタートしたこの"SCOOP"は、"SANDBOX Co-operative Project"の頭文字を取ったもので、「砂場」で使う「スコップ」をモチーフにしています。様々な分野の学生・若者が集った場に、楽しく創造するための道具・手段を提供するという思いが込められています。
今回は、SANDBOXおよびSCOOPプロジェクト担当者の清本さんにお話を伺いました。

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LINK-Jとは

聞き手(以下、聞):LINK-Jとはどのようなことをされている組織なのでしょうか?


清本(以下、清):LINK-Jは「健康長寿」という世界共通の課題に向けて、ライフサイエンスの各分野で活動する人同士を結び付け、支援する組織です。具体的には、様々なテーマのイベントを開いて人々の出会いを促進する交流連携と、より長期的な視点で若い学生や研究者などのプロジェクトを手助けする育成支援が、事業の二本柱となっています。
 ライフサイエンスは日本語に訳せば「生命科学」。医学や薬学はもちろん、理学・工学から社会科学まで、あらゆる分野を含む学問領域です。幅広い分野の人がLINK-Jを介してつながり、そこから新しい発想を得て、やがては社会的課題を解決するような大きなイノベーションを起こしてほしいと願っています。

日本橋をライフサイエンス分野のイノベーションの拠点に

:LINK-Jは日本橋を活動拠点とされていますが、日本橋といえばオフィスビルやおしゃれなショップが整然と立ち並ぶ大都会ですよね。サイエンス分野のイノベーションと聞くと、やはりネズミがたくさんいる研究室で実験を重ねて......といったイメージが浮かぶので、少し不思議な感じがします。


:日本橋は昔から薬の問屋街として知られ、現在も多くの製薬会社が本社をおいています。そして今では、製薬会社に限らず様々なジャンルの企業が参入してきたことで、世界中から人や情報が集まるビジネスの中心地に成長しました。この、異なる分野のスペシャリストが集まれる環境こそ、新しいアイディアを育てる土壌になるのです。
現在LINK-Jでは、ライフサイエンスに関わる様々なテーマで、年間380件以上のイベントが開催されています。「日本橋に来れば何かしらイベントをやっているし、誰かしら面白い人とつながれる」という環境を整えるのが私たちの務めだと考えています。

学生や若手研究者・起業家のプラットフォーム・SANDBOX

:そんなLINK-Jで昨年、SANDBOXというプラットフォームが設立されました。


:SANDBOXは、学生や研究者・起業家などの若者が集まる、自由な「砂場」をイメージして作った場です。クラスも学校も違う子供たちが砂場に集まり、一緒に山を作っては壊して遊ぶように、SANDBOXに集まった若い人たちが楽しみながらクリエイティビティを高めていってくれれば、という思いから始まりました。
 私が大学生だった頃を振り返ると、コミュニティといえば研究室くらいですから、「卒業したら一般企業に就職する」というキャリアパスが大方でした。もしも当時Facebookのようなテクノロジーがあって、違うコミュニティの人と情報交換する機会があれば、ベンチャー企業に入ったり自分で起業するというような違う未来もあったかもしれません。
 知らない世界に足を踏み入れられないのは現代でも同じです。ですから、まずSANDBOXで他の学生と触れ合って、知見を広げてほしいですね。漠然と「卒業したら有名企業に入る、医学部だったらお医者さんになる」、と思い込んでいる学生は多いでしょう。しかし、そういった学生の中にいる、埋もれた才能を持っている、いわば"天才"をもっと見てみたいです。
 もちろん"天才"だけではなく、才能をサポートする役割も必要です。そういう分担も含めて、力を合わせてイノベーションを起こしていく脱・優等生たちがたくさん生まれればいいなと。彼らに新しい道筋を示せるように、こちらからもセミナーなどの機会を提供していきます。


:出会いや発想の場の提供という意味では、従来のイベント開催と重なる部分も大きいように感じます。


:一般向けのイベント開催はあくまでも交流連携事業で、そこで生まれたアイディアをどう展開していくか、たとえば事業化するのか否かといった部分は参加者自身に委ねています。一方SANDBOXは、学生や若手研究者の育成支援事業でもあるので、出会ってアイディアが生まれたその先までフォローします。言い換えれば、イノベーションの起こし方をLINK-Jと一緒に探していくような取り組みです。

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SCOOPで学生の最初の一歩を支援する

:「一緒に探していく」とき、LINK-Jと学生はどのような関係になるのでしょうか。


:今年から始動したのが、"SCOOP"という資金提供とプロセス支援の取り組みです。応募する皆さんには、取り組むテーマや目標とするアウトプットなどをまとめた1年間のプロジェクト計画を提出していただきます。採択されたチームには、最大20万円の資金と日本橋の会議室を提供します。進捗報告のチェックも行い、必要があればLINK-Jのネットワークから専門家や研究者の方をご紹介します。
 名前の由来は砂遊びに使うスコップで、「SANDBOXという大きな砂場で最初に手にする道具」という位置づけです。若者が踏み出す最初の一歩、すなわち0から1を生み出す大事な部分のサポートを目的に行っています。


:応募する際の条件などはありますか。


:ライフサイエンスに関わるものであれば、テーマやアウトプットの形は自由です。応募条件は35歳未満の人が代表になること、医学だけではなく複数の専門の人が3~6人のチームを組んで応募することです。若い人に活躍してほしいという理念があるため、代表者の年齢だけは限定させていただきました。ですが、プロジェクトの成果報告を行うオープンカンファレンスには年齢・専門を問わず参加可能ですし、随時Facebookやホームページも更新しています。まだ始まったばかりの取り組みですので、いろいろな方からフィードバックをいただきたいと考えています。


:自由度が高いだけに、プロジェクトの採択基準が気になります。


:まずはシンプルに、新しくて面白いことが大切です。次に重視したのは、これから学生自身の力でチャレンジしていけそうなプロジェクトであること。スケールが大きいだけで実現性の低いものや、逆にもう起業フェーズあたりに到達できてしまっているものは除きました。これらをクリアした中でも、単なる調査結果の報告ではなく、何らかの提案や発信につながりそうなものを選んでいます。


:現状を学んでもらうだけでは足りないということですね。


:そこは中間報告などを見る際にも意識している部分です。特にサイエンス系の学生のみなさんは、普段きちんと手順を守って実験をしてデータを仮説に照らして...とやっているから、指定された形式で報告をまとめるのはとても上手い。そんな皆さんにプロジェクトの成果をまとめてもらうと、「こういう援助を得てこういう活動をして、こういうことが分かりました」というお行儀のいいものになってしまいがちなんです。でもSCOOPとしては、そういう小ぎれいにまとまった報告よりも、もっと大胆なアウトプットが見たいと思っています。
 最終報告ではプレゼンテーションを例えば投票で相互評価するのもいいかなと考えているところです。とにかく最終発表で集まる仲間の心が動く形で伝えてください、と。同世代にしか受けないものが出てくる懸念があるかもしれませんが、本当に面白いものは世代を越えて面白いという確信も持っています。

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学生に向けてのメッセージ


:最後に、これを読んでいる学生の皆さんへメッセージをお願いします。

:様々な人や情報に出会えば出会うほど、将来の選択肢の幅は広がっていきます。研究室や大学という狭いコミュニティの外に出て多くの人や情報に触れ、自分の知見を広げることを大切にしてもらいたいと思いますし、LINK-Jがその接点のひとつになれば幸いです。今まで触れ合わなかった異分野の人と交流することで、これまで思いつかなかったような新たな気づきを手にしてください。
 そして、「こんなことできたらいいな」という発想、研究で言えば初期のシーズのようなものがあったときには、それを社会やビジネスにつなげる起爆剤としてSANDBOXをぜひ活用してもらいたいです。ここからベンチャー企業が生まれたり、法律を変えるような提言が出てきたりして、SANDBOXがノーベル賞につながる前哨戦のような場となっていけば素晴らしいと思います。
 様々な人と出会い、チームを組み遊び、必要であればSCOOPの資金提供を活用してください。はじめから評価を気にするよりも、まずは楽しんでいただきたいです。どうすればライフサイエンスの知を活かして社会にイノベーションを起こすことができるのか、共に考えていきましょう。

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