UCLA - LINK-J Longevity Innovation Conference 第一回：脳の健康と長寿（Brain health & Longevity）

	黒川 清 様 日本医療政策機構　終身名誉チェアマン 東大医学部卒、医学博士。在米１４年。UCLA内科教授、東大内科教授、東海大学医学部長などを歴任。その間、多くの国内、国際科学者連合体の役員・委員を務め、 国際腎臓学会理事長(1997年)、国際内科学会会長(2002年)に就任。その後も日本学術会議会長、WHO コミッショナー、内閣特別顧問、国会による東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長、世界認知症審議会副議長等を歴任。現在は東京大学・政策研究大学院大学名誉教授、東海大学特別栄誉教授、日本医療政策機構終身名誉チェアマン等。2011年の国会事故調委員長としての功績によりForeign Policy ‘100 Top Global Thinkers 2012’、“2012 Scientific Freedom and Responsibility Award” of AAASを受賞。
Coming soon	岩坪 威 様  国立精神・神経医療研究センター理事・神経研究所長 昭和59年　東京大学医学部卒 昭和61年　東京大学医学部附属病院神経内科入局 平成10年  東京大学大学院薬学系研究科　臨床薬学教室教授 平成19年　東京大学大学院医学系研究科　神経病理学分野教授（至・令和７年３月３１日） 令和２年　国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長（令和7年4月1日より専任） 同年  　日本認知症学会理事長 主な受賞　 MetLife Foundation 2008 Award for Medical Research 2012 米国神経学会Potamkin賞 2023年度上原賞 2024年 紫綬褒章　など
	瀧 靖之 様 東北大学　加齢医学研究所　教授 平成5年　東北大学理学部卒業、同年に東北大学医学部入学 平成11年　東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程入学 平成15年3月修了 平成15年4月より東北大学病院医員 平成16年より東北大学加齢医学研究所助手 平成19年より東北大学病院助教 平成20年より東北大学加齢医学研究所准教授 平成24年8月より東北大学東北メディカル・メガバンク機構　教授 平成25年8月より東北大学加齢医学研究所　機能画像医学研究分野　教授 平成29年4月より東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター　副センター長 令和3年4月より東北大学加齢医学研究所　臨床加齢医学研究分野　教授 （分野統合の為、機能画像医学研究分野より名称変更） 令和５年4月より東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター　センター長 日本老年医学会代議員、日本放射線学会放射線診断専門医 平成20年に第44回医学放射線学会秋季大会・学術展示優秀賞金賞、平成21年に第68回日本医学放射線学会総会・学会賞金賞等、これまで学会賞6回、論文賞2回。 専門は大規模脳MRIデータベースを用いた脳の発達、加齢に関する研究。
	文 鐘玉 様 慶應大学精神神経科　 精神・神経科　特任准教授 2000年　慶應義塾大学医学部卒業 2000年～慶應義塾大学病院精神神経科研修医、川崎市立川崎病院精神神経科 2006年～2010年　Beth Israel Medical Center (New York, USA）精神科レジデント  2010年～2015年    ホスピタル坂東 2015年　筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻修了　 2015年～2020年    公徳会佐藤病院（2016年～副院長、2017年～認知症疾患医療センター長） 2016年～2020年　慶應義塾大学医学部非常勤講師（精神科） 2020年～現在　　慶應義塾大学医学部　特任講師を経て特任准教授 2023年04月～　慶應義塾大学病院メモリーセンター　副センター長 2024年09月～　慶應義塾大学病院聴覚センター　副センター長
	木村 禎治 様 エーザイ株式会社　グローバルADオフィスヘッド　上席執行役員 1987年にエーザイの化学系研究者としてキャリアをスタートしました。2013年からエーザイニューロサイエンス領域のグローバル探索研究部門を担当し、多面的な切り口からのレカネマブを代表とするアルツハイマー病疾患修飾剤の創製や、抗てんかん薬ペランパネルの効能拡大や不眠症治療薬レンボレキサントの創製を行い、エーザイの中枢神経領域のポートフォリオの拡大に貢献しました。 2024年1月から、グローバルADオフィースのヘッドとして、レケンビの価値最大化を目指し、アルツハイマー病（AD）関連のコマーシャル、メディカル、バリュー＆アクセス・アドボカシー機能をグローバルに統括しています。 学歴は、1985年に京都大学薬学部薬学科を卒業、1987年には京都大学薬学研究科修士課程を修了しました。さらに、1993年に京都大学大学院薬学研究科にて博士（薬学）を取得しました。
	Prof. Jason D. Hinman, M.D., Ph.D. Associate Professor of Neurology, Director UCLA Alzheimer's Program Jason Hinman, M.D., Ph.D. is Associate Professor of Neurology, Interim Director of the UCLA Mary S. Easton Center for Alzheimer’s Research & Care, Member of the UCLA Comprehensive Stroke Center, and West Los Angeles VA Stroke Program Director. His NIH funded research group focuses on molecular pathways at the interface of stroke and dementia with a goal of developing new diagnostic and therapeutic tools for vascular cognitive impairment and brain repair. The lab is highly collaborative and uses a multimodal approach for novel diagnostic and therapeutic discovery using clinical, translational, basic science models of stroke and neurodegeneration. He is nationally recognized as a Fellow of the American Heart Association, Member of the AHA Council on Stroke, Member of the AHA Brain Health Committee, and an expert in vascular cognitive impairment.

講演要旨

岩坪 威 様ご講演
本邦で認知症を持つ方の総数は450万人、その前駆段階とされる軽度認知障害（MCI）を含めると1000万人に達し、認知症は誰にとっても自分事となってきました。アルツハイマー病（AD）は最も頻度の高い認知症の原因疾患で、脳にアミロイドβというタンパク質の塊が溜まり、それが引きがねとなって神経細胞が冒され、認知機能の障害を起こします。最近、アミロイドβの除去を促す「抗アミロイドβ抗体薬」が実用化され、ADの早期段階での治療に用いられ始めました。本講演では認知症を生じる前にもの忘れを防ぐことをめざす新しい治療の方向性についてお話しします。

瀧 靖之 様ご講演
日本が直面している超高齢化社会において、脳の病的な加齢を可能な限り抑えることは重要である。我々はおおよそ3000人、5歳～80歳の健常小児～高齢者の脳MRI、認知力、生活習慣、遺伝子等のデータを収集し、横断的、縦断的な脳画像データベースを作成している。これらのデータを用いて、脳MRI画像からみる健常な脳発達、加齢を明らかにし、更にどのような生活習慣などの要因が脳発達、加齢に影響を与えるかを明らかにしてきた。飲酒、肥満など複数の要因が脳加齢を促進することを明らかにした。他方で、認知症予防には種々の生活習慣が関わっていることが明らかになっている。これらの結果は、生涯にわたる健康脳の維持に対して有用な知見であり、ひいては認知症予防の観点から健康寿命伸長にも重要である。今回、これらの研究成果を発表すると共に、これらの成果の社会実装に関しても提示していく。

文 鐘玉 様ご講演
アルツハイマー型認知症を中心とする認知症診療は、抗アミロイドβ抗体薬の実臨床への導入を契機として、大きな転換期を迎えた。これまでのように、認知機能低下が進行し「認知症」と診断される段階で介入するのではなく、より早期の段階、すなわち軽度認知障害（MCI）の段階からの治療介入が可能となった。さらに近い将来、非侵襲的な血液バイオマーカーによる診断技術が臨床現場に導入されると考えられ、簡便かつ精度の高い早期診断法として大きな期待が寄せられている。今後は、アルツハイマー型認知症にとどまらず、他の認知症疾患においても、疾患特異的な異常タンパク質を標的とした治療が実現し、早期段階での治療介入が可能になることが期待される。

木村 禎治 様ご講演
1990年代初頭、家族性アルツハイマー病（AD）に関する遺伝子研究に基づき、「アミロイドカスケード仮説」が発表されました。その後、この仮説に基づいて多くの臨床試験が実施されましたが、その多くは残念ながら成功には至りませんでした。
しかし、これらの失敗から多くの知見が得られ、以下のような進展につながりました。
1）毒性を有するアミロイドβ種の同定
2）適切な対象者の選定
3）バイオマーカーに基づく適切な用量設定および投与期間の設計
4）感度の高い臨床評価項目の開発
本講演では、抗アミロイドβ（Aβ）薬の創薬の歴史、非臨床研究における作用機序の解明、バイオマーカーを含む臨床試験の結果について概説します。また、抗タウ薬をはじめとする次世代アルツハイマー病治療薬の展望についても紹介いたします。

Prof. Jason D. Hinman, M.D., Ph.D. ご講演
Stroke risk and cognitive decline are major threats to healthy brain aging, often driven by chronic vascular inflammation. This talk will highlight emerging blood-based biomarkers that reflect inflammatory pathways linked to cerebral small vessel disease and impaired brain resilience. Using population and clinical cohort data, we demonstrate how these biomarkers can predict stroke risk and serve as tools for monitoring brain health. These findings support a precision medicine approach to brain longevity by targeting vascular contributions to neurodegeneration.

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