Menu

インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.18 ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(1) ~人気集中のプラットフォーム型企業~

  • twitter
  • Facebook
  • LINE
ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(1)
~人気集中のプラットフォーム型企業~

新米のベンチャー・キャピタリスト(VC)として1年間が過ぎました。これから数回に わたって「ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場」をお伝えいたします。

第1回は日本のバイオ・ベンチャーがパイプライン型からプラットフォーム型を目指す傾向が強くなったことです。我が国で初めてバイオ・ベンチャーが上場した時は、ほとんどがパイプライン型か、バイオ研究の試薬やサービスを提供する小型の創薬支援型でした。パイプライン型の上場条件は治験フェーズ2(P2)に入った新薬のパイプラインを持ち、なおかつ大手企業に製品導出の契約を結んでいること。この条件を満たせば、赤字でも上場可能です。これはロンドン株式市場のバイオ・ベンチャーの上場基準を翻訳したもの。当時の日本の証券取引所では赤字企業の上場など想定外でしたが、バイオ企業を欧米のように上場させ、21世紀の成長産業を我が国でも育てたいという政府の期待に応えたのです。しかしその結果、バイオ・ベンチャーはP2に入ることができる新薬候補を開発するまでに長期間が必要というハンデを負い、投資家の意欲を削いでしまいました。

そこで誕生したのが、プラットフォーム型バイオ・ベンチャー。昨年上場に成功したゲノム編集のモダリスが典型で、源流はペプチドリームにあります。つまり、自社の技術で多数のパイプラインを創製、治験入りを待たず早期に導出して、短期間に営業黒字を計上して上場するモデルです。我が国のバイオ市場を支えている個人投資家は何よりも黒字を好みます。また、技術の本質を必ずしも評価できない証券企業や機関投資家にとって、営業黒字は何よりも、銘柄に対する安心感となります。株主保護という名の政府の投資家甘やかし政策もあり、我が国のバイオ・ベンチャーの上場市場は本来のハイリスク・テイクから、世界的に見れば中途半端なミドルリスク・テイク市場になってしまったのです。私はこれを進化の過程と考えたい。VCとして成長性の高いバイオ・ベンチャーを次々と上場させ、投資家の信頼を得て、我が国の株式市場を本来のハイリスク・テイクの市場に成熟させるべく、皆さんと努力を重ねたいと思っています。

miyata.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に 日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バ イオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長 に就任し、2015年に株式会社宮田総研を設立、新Mmの憂 鬱などメディア活動を開始。2017年、株式会社ヘルスケアイ ノベーションを設立、2020年6月よりバイオ・先端医療関 連のベンチャー企業に投資を開始した。厚生労働省厚生科 学審議会、文部科学省科学技術・学術審議会、生物系特定 産業技術研究支援センターなど、様々な公的活動に従事。

pagetop