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インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.27 ここが不思議だ、我が国のバイオベンチャー市場(10)

ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(10)
世界は激動しているのに、硬直的な東証の上場日設定

 今年3社目のバイオ・ベンチャーの東京証券取引所グロース市場への上場が2024年6月14日に成し遂げられた。武田薬品からスピンアウトしたChordia Therapeuticsである。 公開価格は153円だったが初値は255円まで上昇した。その後257円をピークに株価が下落、終値は192円だった。7月2日は私のベンチャー・キャピタルの1号ファンドで投資したPrism BioLabが上場を予定しており、同月もう一社の バイオ・ベンチャーが上場すべく、準備を進めている。過去最多のバイオ企業の上場数は2011年と2013年の5社であるから、今年はわずか半年でその数字に達することになる。株価の大暴落など不足の事態が起こらなければ、2024年は過 去最多のバイオ企業が上場するバイオ・ベンチャー上場ブー ムとなるだろう。

 実はChordia社は昨年9月15日に上場予定だったが、 投資家の理解を得られず売り出し価格が見込みより低く設定 せざるを得なかったために、上場中止を発表していた。同社 は同年8月10日、東証から上場承認を得ていたが、この結果 を受けて、東証は上場承認を取り下げたのだ。Chordiaは その後、10か月を経て再上場を果たした。その間、CMOの 人事や開発中のフラッグシップ・パイプラインであるCLK阻 害剤の学会発表などがあったが、企業価値が著しく増大する イベントはなかったように見える。同社がIPOに成功した原 因は、株式市場の活況とバイオ・ベンチャー上場ブームに あるとしか思えない。実際、日経平均は2023年8月から今 月までに6500円以上も増加、一方グロース250指数は 100以上低下したが、バイオ・ベンチャーの上場数は勢い を見せた。

 状況が好転することを受けてChordiaの決算期を跨がず、 上場をもっと早くできたのではないかと考える。遅れた原因 は東証が一度上場承認を取り下げたら、再び上場審査を行う という硬直的な運用をしているためだ。米国NASDAQのよ うに上場届け出後、1年間は状況を測って最も資金調達可能 なタイミングを選択できるように柔軟な運用をすべきではな いだろうか?

 日米の株式市場は沸騰しているが、米国大統領選挙には暴 落のリスクも噂されている。激動する上場環境にバイオ・ベン チャーが対応するために、規制緩和が必要なのである。

miyaman_new_.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に 日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バ イオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長 に就任し、2015年に株式会社宮田総研を設立、新Mmの憂 鬱などメディア活動を開始。2017年、株式会社ヘルスケアイ ノベーションを設立、2020年6月よりバイオ・先端医療関 連のベンチャー企業に投資を開始した。厚生労働省厚生科 学審議会、文部科学省科学技術・学術審議会、生物系特定 産業技術研究支援センターなど、様々な公的活動に従事。

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