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インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.24 ここが不思議だ、我が国のバイオベンチャー市場(7) 短いVCファンド年限、セカンダリー市場創設が急務だ!

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ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(7)
短いVCファンド年限、セカンダリー市場創設が急務だ!

 私のベンチャー・キャピタル(VC)、ヘルスケア・イノベーションは、1号ファンドなので、まずパフォーマンスを見せることを重視しています。そのため、ミドルステージ以降のベンチャーにファンドの8割を投資しています。勿論、私の友人達が創立10年でも上場できない、このもたもたを何とか解消して、バイオベンチャーの上場やエグジットを加速することも狙っています。投資→資金回収のサイクルをなんとか回さなくては、金融機関はバイオベンチャーを有望な投資先とみなさないばかりか、上場やM&Aの事例が少ないとROI(投資利益率)を算出できず、「バイオ投資は難しい」というため息をつくだけで、資金はAIなどに流れてしまいます。日本のバイオベンチャーは常に金欠状態というわけです。

 通常のVCの投資ファンドの年限は10年前後です。延長を含めても最長12年ですが、実は現在の東京証券取引所の状況を鑑みると、この期間内に上場を成功させることは到底困難です。米国ではより迅速に上場しているようですが、一方で抗EGF受容体抗体を実用化した米Imclone Biosystems社の様に、創設後20年近く商品化までかかる例もあります。通常のバイオ医薬でも、創薬概念が構築されてから商品化まで15年以上かかることは珍しくありません。VCが出資者から資金を預かり、投資して資金を回収するファンドの期限があまりにも短すぎることは明白です。期限を過ぎたファンドでは、足元を見透かされてたった1円で持ち株を第三者に売りさばかざるを得ない場合も多いのです。米国では、バイオベンチャーの企業価値を、製品や技術の科学的進展と市場での成功確率から算定して、期限切れのVCファンドの持ち株を妥当な株価で買収するセカンダリー市場が存在します。しかし、金融機関に目利きのいない我が国ではこの市場が存在しません。VCはぼろ儲けか、1円で売却かのギャンブルを強いられるのです。金融機関の目利き人材育成が喫緊の急務なのです。文科系だからと卑屈な表情でバイオベンチャーの企業価値の評価を避け続け、まだ海山のシード投資に逃避する我が国のVCに未来はありません。

miyata.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に 日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バ イオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長 に就任し、2015年に株式会社宮田総研を設立、新Mmの憂 鬱などメディア活動を開始。2017年、株式会社ヘルスケアイ ノベーションを設立、2020年6月よりバイオ・先端医療関 連のベンチャー企業に投資を開始した。厚生労働省厚生科 学審議会、文部科学省科学技術・学術審議会、生物系特定 産業技術研究支援センターなど、様々な公的活動に従事。

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