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インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.20 ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(3) 引き受け証券会社はベンチャーの味方ではないの?

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ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(3)
引き受け証券会社はベンチャーの味方ではないの?

米国の利上げとロシアのウクライナ侵攻によって、日米の新興 市場、東京証券取引所マザーズ(22年4月4日からグロース)と NASDAQが急落しています。頭を抱えている投資家も多いでしょうが、新興市場の急落と回復は歴史的に繰り返される現象で悲観する必要はありません。1年から1年半後には間違いなく市況は回復し、ベンチャー企業に対する投資ウインドウは再び開くのです。 腹を据えて、ベンチャーの事業進展による価値増大と市場の回復 をどっしりと待つべきです。  

しかし、バイオ・ベンチャーに対する長期投資の信念をぐらつか せる欠陥が我が国の新興市場にはあります。バイオ・ベンチャー の株式公開を引き受ける主幹事證券が自社の顧客の利益を優先 して、公開価格を正当な企業価値より引き下げて定める陋習です。 2022年1月28日、公正取引委員会が「新規株式公開(IPO)にお ける公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」という 報告書で「独占禁止法抵触のおそれがある」と指摘しました。実際 新米のVCとして、この一年間だけでも主幹事證券がバイオ・ベン チャーの公開価格交渉で企業価値に見合わない引き下げ要求をすることを目撃。「主幹事證券はバイオ・ベンチャーの味方ではなかったのか?」と深く嘆息したものです。主幹事證券にとっては上場時の手数料収入よりも、各支店の顧客への利益供与が重視されるのです。 

昨年上場したバイオ・ベンチャー企業の初値を公開価格で割り算 すると、6社中5社が115%を上回り、3社は146%から173%まで 上昇しました。上場時の株価上昇によって顧客は一瞬で大儲けしましたが、上場時の新株発行を低い公開価格で売り出すバイオ・ベン チャーの資金調達額は細りました。本来、株式上場はバイオ・ベン チャーの企業成長を加速するはずですが、我が国では企業成長の 足を引っ張る仕組みに堕しています。  

断固としてこの陋習を断たなくては、我が国の経済的沈没は到 底避けられません。

miyata.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に 日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バ イオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長 に就任し、2015年に株式会社宮田総研を設立、新Mmの憂 鬱などメディア活動を開始。2017年、株式会社ヘルスケアイ ノベーションを設立、2020年6月よりバイオ・先端医療関 連のベンチャー企業に投資を開始した。厚生労働省厚生科 学審議会、文部科学省科学技術・学術審議会、生物系特定 産業技術研究支援センターなど、様々な公的活動に従事。

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