Tonomach Outreach Communication vol.2 北陸先端技術大学院大学シーズ紹介セミナー

講演1　緑茶カテキン・ナノ粒子による疾患治療
　　　　北陸先端技術大学院大学　先端科学技術研究科　教授　栗澤元一氏

　先端医療を支える生体材料に関する研究は、難治性疾患を将来的に治療可能とする医療技術開発において益々重要な役割を果たすものと期待されています。講演者らは、がん治療を目的とした緑茶カテキン誘導体を薬物キャリアとする自己会合ナノ粒子を設計し、ドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究を推進してきました。この緑茶カテキン・ナノ粒子は、腫瘍への抗がん剤の送達のみならず、薬物キャリアの主成分である緑茶カテキンが抗がん活性を有することから抗がん剤と薬物キャリアの抗がん活性に基づくシナジー効果によって抗腫瘍効果を増幅する特長を有しています。本技術は、がん以外の疾患の治療にも有用なプラットホームテクノロジーとして国際的に高く評価され、世界中のニュース・メディアより、本技術による将来的な疾患治療の可能性について発信されています。緑茶カテキン・ナノ粒子を組み入れ、薬物単独では不可能とされてきた治療をはじめて可能にする材料設計の提案によって、産学官連携からの研究支援が期待され、医療での新事業創出を通じた社会貢献が可能になるものと期待されています。

講演２　JAISTスーパーコンピュータを活用した、超越バイオメディカルDX開発
　　　　北陸先端技術大学院大学　情報社会基盤研究センター　准教授　本郷研太氏

　現在、従来の学習系AIから生成系AIへの転換期に入り、AI技術の革新によって、様々な研究分野においてDX化が期待されています。これまでの機械学習・AI研究では、ビッグデータに基づくディープラーニング/深層学習によって、画像・音声認識に劇的な性能向上が実現されましたが、昨年度末より、大規模言語モデルに基づくChatGPTによるテキスト生成や、拡散モデルに基づくStable Diffusionによる画像・動画自動生成、といった生成系AIが進展し、データ駆動型研究の高度化が期待されています。超越バイオメディカルDX開発においては、大学の特色であるスーパーコンピュータシステムを活用し、機械学習やAIなどのデータ科学的アプローチに加えて、シミュレーション科学を組み合わせた、バーチャル空間でのバイオメディカル研究を推進します。本講演では、講演者グループの研究成果として得られた、「ホスト-ゲスト系のドッキングシミュレーション」や「タンパク質の動的解析」などのシミュレーション研究や、蛋白質構造の生成AIなどのデータ駆動型研究を中心として、最新の要素技術を紹介します。