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イベントレポート

医療機器×グローバルシンポジウムを開催(11/5)

11月5日、日本橋三井ホール(東京・日本橋)にて、「医療機器×グローバルシンポジウム」が開催されました。シンポジウムは2部構成となっており、午前のプログラムでは新進気鋭の5チームが参加してのベンチャーピッチコンテストが実施されました。また、休憩を挟んで行われた午後のプログラムでは、基調講演を皮切りに、グローバル展開に成功した国内企業や米国・シリコンバレーの関係者らが登壇し、医療機器市場を巡る海外の動向、海外展開に成功する秘訣、スタートアップを取り巻く現状などをテーマに講演・ディスカッションが行われました。

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左:会場の様子、右:展示ブースの様子

【ベンチャーピッチコンテスト】

[審査員]

Babak Nemati氏(Ph. D., Founder, President & CEO, Strategic Intelligence, Inc.)
Elton Satusky氏(Partner, Wilson Sonsini Goodrich & Rosati)
Kirk Zeller氏(Managing Director U.S. and Co-Founder Asia MedMarket Access)
Ryan McGuinness氏(Vice President, Science and Technology at Agility Labs/Vice President, in Vitro Technologies at Triple Ring Technologies, Inc)
池野文昭氏(Program Director(U.S.)Japan Biodesign, Stanford Biodesign Medical Director, Experimental Interventional Laboratory, Stanford University/MedVenture Partners株式会社 取締役 チーフメディカルオフィサー)
内田毅彦氏(株式会社日本医療機器開発機構 代表取締役CEO)

午前の部では、新進気鋭の国内スタートアップ5チームが登場し、優勝賞品(海外派遣プログラムまたは最大1億円の事業化費用)をかけたピッチコンテストが開催されました。審査員を務めるのは、医療機器業界及びスタートアップに精通した日米のスペシャリスト6人。登壇者たちは、ピッチ12分+質疑応答7分という限られた時間の中で、素晴らしいプレゼンテーションを披露しました。

ピッチコンテストに参加した5チームは、「小型・軽量のヘルス・モニタリング・デバイス(アフォードセンス株式会社)」、「自宅で簡単に睡眠時無呼吸症候群の検査ができるシャツ型デバイス(スマートウェアSASスクリー二ング)」、「⻭垢を可視化して磨き残しをスマートフォンで確認できる電動歯ブラシ(歯っぴ〜)」、「飲み込んで深部体温を計測する超小型体温計(NOMsense)」、「人工知能による予診で医師の仕事をサポート(Ubie株式会社)」など、いずれも個性的なアイデアで事業化に挑戦。そのレベルの高さに、百戦錬磨の審査員からも高い評価が飛び出しました。一方で、ピッチ終了後の総評では「競合地図をきちんと説明できることも必要」、「(特許関係など)他社に模倣されない理由を明確にしてほしい」、「最初は多様性を強調するより1つの用途に絞りこむべき」など今後の課題を指摘する声も上がりました。

審査の結果、「⻭垢を可視化して磨き残しをスマートフォンで確認できる電動歯ブラシ」を提案した「歯っぴ~」が優勝に輝きました。自身も熱心な歯みがきマニアで、日頃の歯磨きに不満があるという代表の小山昭則氏によると、本スタートアップを結成した目的は「日本の高齢者の残存歯数を、予防歯科先進国スウェーデンと同等のレベル(平均残存歯数25本)まで引き上げること」。国内の電動歯ブラシ市場は、外資企業の寡占状態が続いていますが、小山氏は「日本発のイノベーションで世界を圧倒できる技術を生み出していきたい」と、今後の意気込みを語りました。

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左:審査員の方々、右:優勝者「歯っぴ~」の代表小山昭則氏

【主催挨拶・来賓挨拶】

[主催]岡野栄之氏(LINK-J理事長/慶應義塾大学医学部教授/慶應義塾大学大学院医学研究科委員長)
[来賓]鴨下一郎氏(衆議院議員/優れた医療機器を国民に迅速かつ安全に届けるための議員連盟会長)
[来賓]菱山豊氏(国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事)

休憩をはさんで開催された午後の部では、医療機器開発に取り組む医療者、医療機器開発会社、スタートアップなどの関係者らによる基調講演やパネルディスカッションなどが行われました。最初に主催挨拶として、LINK-Jの岡野栄之理事長が登壇。岡野理事長は、ライフサイエンス・イノベーションの推進役として設立されたLINK-Jの概要について説明をした上で「ライフサイエンスは医学、理学、工学から社会科学や倫理まで広範に及ぶ」と述べ、問題解決のためには外部の専門家との連携が重要だと訴えました。

次に来賓挨拶として登壇した鴨下一郎氏は、診断技術では優れた技術を有しながら、治療機器の開発では海外に大きく後れを取っている日本の現状を指摘。関係者の力を結集して、日本発の素晴らしい医療機器で日本の国民、そして疾患に悩む世界の人々に貢献しようと呼びかけました。続いて登壇した菱山豊氏も、機構の活動方針などを紹介した上で、「最新の研究成果をいち早く国民に届けていくための支援を続けていきたい」と展望を表明しました。

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左:岡野 栄之 LINK-J理事長(慶應義塾大学大学院医学研究科委員長/慶應義塾大学医学部生理学教室教授)、右:鴨下 一郎 氏(優れた医療機器を国民に迅速かつ安全に届けるための議員連盟会長)

【基調講演】

[演者]西田庄吾氏(ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター)
[演者]澤芳樹氏(LINK-J副理事長/大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科 教授)

基調講演では、まず最初に西田庄吾氏が登壇し、世界の医療機器企業の成長戦略と日本企業の海外進出における課題について解説しました。講演で西田氏は、医療機器業界は今後も高い収益性と成長性を誇る産業であり続けるだろうと指摘。その上で、VBHC(Value-Based Health care:患者の価値観に基づく医療)に代表される、新たな価値観/新たな指標にも対応できるよう、現在の方法論にとらわれることなく、常に新しいビジネスモデルを考え、それを愚直に実行していくことが重要だと訴えました。

続いて、澤芳樹氏による基調講演が行われました。澤氏が所属する大阪大学心臓血管外科は、TAVI(経カテーテル大動脈置換術)を日本で初めて臨床導入するなど、新しい医療機器の臨床応用に積極的に取り組んできました。現在でも、iPS細胞由来心筋細胞による心不全治療、深層学習による心臓シミュレータ構築、ステントレス僧帽弁の臨床応用などに挑戦しています。これまでの機器開発の経験を通じて、澤氏は「国内にはアントレプレナー(起業家)となる人材が足りない」と指摘します。

海外に目を向けると、米国ではアントレプレナー型医療機器開発ビジネススクール「バイオデザイン」が10年前から活動しており、大きな成果を挙げていました。そこで澤氏らは、米国の関係者や国内大学の協力を得て、日本版として「ジャパン・バイオデザイン」を2015年に設立。アントレプレナーなどの育成を始めました。澤氏は講演の中で、研究開発・スタートアップの世界には「魔の川」、「死の谷」、「ダーウィンの海」と呼ばれる3つのハードルが存在すると指摘。「死の谷」については、橋渡し研究の進行で解決が進んでおり、次は「生き残りをかけた戦略」、すなわち「ダーウィンの海」を渡る戦略が必要だと述べ、今こそ後れを取ってきた日本の医療機器開発を変える好機だと訴えました。

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左:西田 庄吾 氏(ボストンコンサルティンググループ)、右:澤 芳樹 LINK-J副理事長(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科教授)

【セッション1】「グローバルコネクティッドインダストリーセッション」

[演者]西内誠氏(朝日インテック株式会社 執行役員 メディカル事業部 研究開発統括)

[モデレーター]
浅野武夫氏(大阪大学大学院医学系研究科•医学部附属病院 産学連携•クロスイノベーションイニシアティブ 特任准教授)

池野文昭氏(Program Director(U.S.) Japan Biodesign, Stanford Biodesign Medical Director, Experimental Interventional Laboratory, Stanford University/MedVenture Partners株式会社 取締役 チーフメディカルオフィサー)

セッション1の前半では、西内誠氏による講演が行われました。西内氏は、産業用機械の金属ワイヤーの製造会社であった朝日インテック株式会社が、内視鏡の操作に用いるコントロールワイヤーの共同開発という経験を経て、世界的な医療用ガイドワイヤーの開発企業に成長するまでの経緯を解説しました。西内氏は、海外展開に成功した秘訣について、日本の専門医たちが「慢性閉塞性病変」に対するPTCA(経皮的冠動脈形成術)に挑戦した時、既存の企業はその要望に対応しなかったこと、そこに新参の同社が名乗りを上げたことで、後に治療技術の普及とともに同社の製品も同時に普及していったという経緯を挙げて、「現場のニーズこそ医療機器開発の原点だ」と訴えました。

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左:モデレーターの浅野 武夫 氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部附属病院 産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ 特任准教授)と池野 文昭 氏(Program Director(U.S.) Japan Biodesign,Stanford Biodesign Medical Director,Experimental Interventional Laboratory,Stanford University /MedVenture Partners株式会社取締役チーフメディカルオフィサー)、右:西内 誠 氏(朝日インテック株式会社 執行役員)

セッション1の後半では、パネリストによる小講演とパネルディスカッションが行われました。長我部信行氏(株式会社日立製作所 理事・ヘルスケアビジネスユニットCSO&CTO)は、粒子線治療装置の米国での事業展開を紹介し、臨床現場のニーズを解決しようという「あくなき開拓者精神」の重要性を指摘しました。多田荘一郎氏(GEヘルスケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼CEO)は、同社の超小型エコー装置のように、新興国のニーズに合わせて開発した製品が、後に先進国の未進出領域を開拓した「リバース・イノベーション」を例に、あれこれ検討するより「小さく始めて失敗から学ぶ」ことが大切だと訴えました。

俵木登美子氏(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 組織運営マネジメント役)は、「条件付早期承認制度」や「イノベーション実用化連携相談(12月開始予定)」など承認審査の迅速化に向けた取り組みを挙げ、同機構のサービスを利用したグローバル展開を呼びかけました。鶴飼太郎氏(Johnson & Johnson Innovation ディレクター ニューベンチャーズジャパン)は、世界的な大企業であるJ&Jグループにあって、スタートアップの誕生・育成を目的に5年前に設立されたばかりの同社の業務や方針などを解説し、これからは日本の産業界及びアカデミアともコラボレーションを進めていきたいとの展望を述べました。

ディスカッションの最後には、会場からの質問ということで、人工心臓をメカニカルな点から研究しているという大学院生からの率直な海外展開への意見が飛び出し、会場を沸かせました。

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パネルディスカッションの様子

【セッション2】「ベンチャーセッション」

[演者]Babak Nemati氏(Ph. D., Founder, President & CEO, Strategic Intelligence, Inc.)
[モデレーター]内田毅彦氏(株式会社日本医療機器開発機構 代表取締役CEO)

セッション2の前半では、Babak Nemati氏による講演が行われました。Babak氏は、循環器領域(経カテーテル弁置換における人工弁)、糖尿病領域(インスリンポンプ&持続血糖測定器)、デジタルヘルス領域(ウェアラブル/遠隔医療/ビッグデータ)などを挙げて、米国におけるその最新の市場動向/開発状況を解説しました。そのうちデジタルヘルスケア領域は、疾患の管理/消費者の行動の変化を通じて医療コストを低減する可能性がある一方で、すでに何千というプレイヤーが市場に参入しており、その差別化もハッキリしていないと指摘。臨床的アウトカムも未検証で、薬事承認/保険償還のハードルも高いなど、成功を収めるのは容易ではないとの見方を示しました。

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左:Babak Nemati氏 (Strategic Intelligence,Inc.)、右:Ryan McGuinness氏(Vice President of Science & Technology)

セッション2の後半では、パネリストによる小講演とパネルディスカッションが行われました。Babak氏は、医療機器の開発に詳しい人材が不足しているという日本の事情について「実は米国も(シリコンバレーのある)カリフォルニア州を除くと、人材が豊富というわけではない」と述べ、メンターシップによる人材育成の重要性を指摘しました。さらにRyan McGuinness氏は、個人的には日本の人材レベル自体は高いと思うと述べ、あとは「失敗してはならないという恐れに勝つことが大切だ」との考えを示しました。

モデレーターである内田氏より挙げられた、「企業は開発成功後なら100億円の出資でも約束してくれるが、いま開発に必要な10億円は出資してくれない」という、スタートアップ時点での資金調達の難しさという課題について、谷口達典氏(株式会社リモハブCEO/大阪大学大学院バイオデザイン学共同研究講座 特任研究員・医学系研究科 循環器内科学)も自身の経験を振り返り、企業がもう少しリスクを踏んでくれれば、国内のスタートアップの成功率も上がるだろうと述べました。佐竹晃太氏(株式会社キュア・アップ 代表取締役社長)は、もしスタートアップがM&A(吸収と合併)をゴールに協力先を探すのであれば、外資系企業、それも最初から海外本社に提案するのが正解だろうとの見解を示しました。

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左:パネルディスカッションの様子、右:佐竹 晃太 氏(株式会社キュア・アップ 代表取締役社長)、谷口 達典 氏(株式会社リモハブCEO、大阪大学大学院 バイオデザイン学共同研究講座 特任研究員大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)

【企業展示】

シンポジウム会場の後方の展示ブースでは、後援・協力の自治体によるショートプレゼンが行われました。出展した企業は全部で9社。岐阜県から、株式会社タナック(岐阜県岐阜市)/フェザー安全剃刀株式会社(岐阜県関市)、三重県から、三重化学工業株式会社(三重県松阪市)/みえ医療機器コンソーシアム(三重県全域)、東京都からは、タマチ工業株式会社(東京都品川区)/東成エレクトロビーム株式会社(東京都西多摩郡)が出展し、各々製品の概要や紹介を行いました。午後の部では、広島県より、株式会社キャステム(広島県福山市)/有限会社MIZOUE PROJECT JAPAN(広島県府中市)/株式会社システムフレンド(広島県広島市)が企業紹介を行いました。シンポジウム参加者や登壇者の方を含め、活発な情報交換が行われました。

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企業展示ブースの様子

【懇親会】

全プログラムの終了後に行われた懇親会では、ピッチコンテストの審査員や出場者、午後の講演・パネルディスカッションなどの登壇者の他にも、本シンポジウムの後援・協力として出展していた企業や団体などの関係者も参加。一般参加者も加わり、にぎやかな懇親会となりました。

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懇親会会場の様子

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