Menu

イベントレポート

「東京医科歯科大学発!オープンイノベーションイニシアティブ2021 vol.1」を開催(2/22)

  • twitter
  • Facebook
  • LINE

2021年2月22日(月)、Zoomウェビナーにて東京医科歯科大学発!オープンイノベーションイニシアティブ2021 vol.1を開催いたしました。(主催:東京医科歯科大学、LINK-J)

本イベントは、東京医科歯科大学(TMDU)のオープンイノベーションの取り組みや、連携企業の皆様からの講演、企業が大学と連携する際のメリット、課題、進め方などについて議論するパネルディスカッションを行いました。 TMDUは、医療イノベーションの創出のために、民間企業との組織対組織の連携を推進しています。個々の研究者と民間企業との単発的な共同研究ではなく、複数の研究者・学内組織を巻き込んだプロジェクトを組成し、プロジェクトで得た成果を、着実に社会実装するためのマネジメント体制を強化しており、現在、多くの特色ある民間企業の皆様とプロジェクトを進めています。

(1)「TMDUのオープンイノベーションの取り組み紹介」
渡辺 守氏・東京医科歯科大学 理事・副学長、オープンイノベーション機構長

渡辺先生からは東京医科歯科大学が2022年度より指定大学法人となることを踏まえ、大学全体としてのコンセプトや「トータル・ヘルスケア」を実現するために、産学連携を最大限活用したいというお話をいただきました。オープンイノベーション機構は2018年にスタートしましたが、2003年設立の産学連携研究センターや、2013年設立の医療イノベーション推進センターとともに2021年度中に統合イノベーション推進機構と統合し、TMDUの産学連携を統括していく体制になることを説明されました。また、これまでに従来の個別研究者(研究室)と企業の一部署との連携ではなく、組織対組織で連携する組織間連携プロジェクト(包括連携)は7社と締結し、多様な業界と大型プロジェクトを進められています。

tmdu_watanabe.png

(2)「TMDUと東京都のオープンイノベーションに資する機器共用の取組みについて」
土屋 卓敬氏・東京都 戦略政策情報推進本部 戦略事業部 特区・戦略事業推進課 先端事業推進担当

東京都では、イノベーションの創出・持続的な経済成長などを目的に、2020年1月に「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」を設立しております。具体的には、東京の「稼ぐ力」や国際競争力のさらなる強化に向け、この東京圏をグローバルなエコシステムの拠点とするため、多彩なプレイヤーに参画いただき、ワーキングを立上げるなど活動を開始しております。その中で、大学を中心としたエコシステム拠点強化ワーキングでは、2020年11月にTMDU含む4アカデミアと「産学官民の連携による共創の場の形成に向けた連携」協定を締結しております。
また「創薬・医療分野のオープンイノベーション支援」では、東京における大学、病院、製薬企業、支援機関などの集積を強みに、創薬・医療系ベンチャーの育成を通じたオープンイノベーションを促進しています。その中でもTMDUとは「創薬・医療データ科学イノベーション人材育成」「大学が保有する機器等の供用促進」の事業について連携しており、機器等の共用事業では、創薬・医療系ベンチャーと大学を繋ぎ、大学が保有する機器等を外部の創薬・医療系ベンチャー等が利用しやすい形に整備し、その研究開発を後押ししています。
※機器の詳細や不明点などはこちらまで

tmdu_tsutiya.png

(3)「産学連携による新しい共用機器運用方法の検討に関する活動紹介」
杉本 典史氏・株式会社 島津製作所 分析計測事業部 営業統括部 東京支社 産学官・プロジェクト推進室長

島津製作所は明治8年(1875)年創業、「科学技術で社会に貢献する」を社是に掲げ、分析計測機器、医用機器、産業機器、航空機器を扱い最先端技術に挑戦しています。
創業以来、産学官との連携を重視しています。昨今の国立大学などの教育研究設備予算の動向を調べると、設備の老朽化が進み、また設備整備予算額も少なくなっており、近年十分な予算措置が講じられていない状況があります。共通機器室運用に関して、様々な大学から初期投資、装置の維持管理の問題、操作方法や利用頻度についても心配の声がありました。そこでTMDUと島津製作所において、共用機器の新しい運用方法の検討を開始します。
学内でアンケートを実施し、利用したい4つの新しい機器について、3月中旬にTMDU内に設置しトライアル期間を設けて試用を開始頂きました。トライアル成功のカギは密接な情報の共有、互いにメリットを享受できるかどうかという点です。連携をしっかり取り、このプランを進めていきたい、とお話いただきました。
2019年から順次国内に3つの開発拠点を立ち上げ、お客様とのオープンイノベーションの場として活用して参ります。2022年度には3つの拠点が全て完成し、基礎研究、製品開発、アプリケーション技術開発の新拠点を揃える予定とのことです。

tmdu_shimadzu1.png

tmdu_shimadzu2.png

(4)「包括連携プログラム『Visualized Medicine』の活動紹介」
ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社 メディカルビジネスグループ 研究開発シニアアドバイザー / Senior Principal Engineer 市村 功氏

ソニーグループは1980年代よりメディカル事業を開始し、主に医療イメージング機器、ライフサイエンス研究機器を扱い、2012年より担当事業本部を設置して本格的にメディカル事業に取り組んでいます。
TMDUとの関わりについては、2004年国立大学行政法人化を契機に、TMDUが企業との産学連携・医歯工連携を目的としたオープンラボを開設し、ソニーが入居第一号となったことがはじまりです。その後2011年包括連携協定を締結し、翌2012年から実際に4つのプログラムを開始しました。この連携はTMDUとソニーが有するすべての研究分野・開発分野・技術力が主体となり、相互に協働できるテーマに取り組める体制となっており、単発の共同研究ではなく、組織と組織とが一体となった連携が実現しました。
大学や医療機関との連携について、市村氏は「企業のみでは自分たちが保有する技術を何かに活かすという思考に陥ってしまうが、実際の医療現場や生命科学の研究において必要とされているものが分かれば、そこを出発点として技術開発、製品開発を進めることができる」と述べられ、医系大学、医療機関のみならず企業間の連携についても今後期待を寄せる点を述べられました。

tmdu_sony.png

(5)「協創アプローチによるイノベーション創生 ―医工連携の手作り経験― 」
株式会社日立製作所 ライフ事業統括本部 経営戦略本部長 助川 直伸氏

助川氏は2017年4月よりヘルスケア事業企画部門本部長に就任され、5月よりTMDUと医療の現場ニーズに基づいたイノベーション探索に向けて「医工連携」をスタートさせました。
「医工連携」に重点を置いたのは、ヘルスケア全体ではサイエンスに基づいたイノベーションが加速していたが、日本の医療機器におけるイノベーション創生は停滞しており、社内においても同様の課題があったため、医師と連携を通じたイノベーション創生に挑戦することで解決できると考えたためです。これまでも、開発内容がある程度定まった後で医療機関と連携することはあったが、より現場ニーズの散策を医師と共に取り組もうということで、「ニーズ探索」をスタートしました。
2017年5月~2019年8月の間、ニーズ探索討論会30回を含め、技術検討、現場観察を多数行い、そこから生まれた対象と定めた現場ニーズをもとに「IBD患者とかかりつけ医、TMDU」の関係性に着目し、IBDの臨床研究をスタートしました。この医工連携によって、「社内だけでは決して生まれないサービスを構想できたこと」「クリニックも巻き込み実証実験にまで至ることができたこと」「社内の人材育成」にまで成果を得ることができました。

tmdu_hitachi.png

(6)「株式会社CeSPIAのご紹介:新たな創薬戦略への取り組み」
日本電子株式会社 経営戦略室室長 兼 株式会社CeSPIA 取締役 塩田 将司氏

同社は2017年4月に設立、創薬に関する構造解析の受託やコンサルテーション、創薬に関する研究や開発に取り組んでいます。塩田氏は、CeSPIA社が目指していることとして、「構造解析に基づく創薬戦略」であることをご説明頂きました。「一般的な薬の上市のプロセスでは、臨床試験の際に副作用が出た時点でその後のプロセスに進むことが難しいが、CeSPIAは、構造情報を基に候補化合物のより良い設計を可能にすることで、再度候補化合物を薬にするプロセスにのせることができます。これはタンパク質の構造解析において前処理から構造解析・データ処理まで高レベルで一貫したサービスの提供が可能なためです。
TMDUとはクライオ電子顕微鏡の活用に関する共同研究を実施しております。また顕微鏡のリモート操作の共同運用も行っており、一般の企業の方も使っていただけるのでぜひお問合せください。」とご紹介頂きました。
日本電子が高性能クライオ電子顕微鏡装置開発を行い、CeSPIAが顕微鏡を使ってタンパク質の構造解析、構造創薬技術の提供を行う。そしてTMDUが学術的知見や創薬プロセス支援、製薬企業とのネットワークといったそれぞれの役割を活かし包括連携を行うなかで、今後さらに受託事業の促進や、創薬プロジェクトの立ち上げが課題だとお話いただきました。

tmdu_cespia.png

パネルディスカッション

パネルディスカッションは、東京医科⻭科⼤学 オープンイノベーション機構 副機構⻑、産学連携研究センター⻑、教授 飯⽥⾹緒⾥先生と、LINK-J曽山をモデレーターとし、パネリストとして、市村氏、助川氏、塩田氏にて行われました。
ディスカッションでは、包括連携協定を結んだうえでの企業側大学側のメリットについて、さらに今後乗り越えるべき双方の課題について議論しました。 最後は飯田先生より「大学、企業との信頼関係が必要で、さらにオープンイノベーションであるからこそ今回のように包括連携企業が交わる機会、横展開ができるような取り組みを行いたい」というお言葉をいただきました。

tmdu_panel.png

ご視聴いただいた皆様誠にありがとうございました。今後もこのようなウェビナーを開催していきますのでぜひご覧ください。

pagetop