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イベントレポート

中高生のための未来教室vol.2 「中高生による中高生のためのライフサイエンスイベント~科学技術って本当に役立っているの?~」(1/22開催)

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2022122日(土)に日本橋ライフサイエンスハブで、LINK-J主催による中高生向けイベントを開催いたしました。

本イベントは、開智日本橋学園の中高生たちが主体となって実行委員を作り、テーマ決定から当日の運営までを行いました(実行委員の活動報告はこちら)。ライフサイエンスの先端分野であるデジタルヘルスに的を絞り、実際に第一線で活躍している大学生や会社経営者にご講演いただいた後に直接質問を投げかけるイベントとすることで、医療への新たな視点を得たり、自分自身のキャリアプランを模索するきっかけ作りを行いました。

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【登壇者】
多羅尾 沙織 氏(開智日本橋学園中学・高等学校 理科教諭)
開智日本橋学園中学・高等学校の生徒の皆さん
田邊 翼 氏(慶應大学発ベンチャーX-pain、大阪大学医学部医学科4年)
中山 俊氏(アンター株式会社 代表取締役社長)
青山 裕紀 氏(株式会社 Splink 代表取締役社長)

挨拶

まず初めに、開智日本橋学園 理科教諭の多羅尾先生にご挨拶頂きました。デジタルヘルスに興味のある生徒にとっては、医療と科学技術の組み合わせを行う人たちってどんな人たちだろうと問いかけを行い、進路の視野を広げたいという子にとっては、中高生の時だけでなく、その後の人生でも続く進路選択について登壇者の方のお話を聞くことで、新たな気づきを得てほしいと参加目的に応じた見どころを示して頂きました。

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実行委員の活動報告

続いて開智日本橋学園の生徒から、このイベントに至るまでの実行委員の活動報告を行いました。「生徒が密接に運営に関わっているというところ」がこのイベントの魅力だといい、自分たちで作ったHPをスライドに映しながら、去年10月からイベント当日までの取り組みを説明しました。

今救うことができない命を 新医療機器を用いて救う

続いて登壇者のプレゼンテーションを行いました。「今救うことができない命を 新医療機器を用いて救う」とは田邉氏のライフミッションです。cancer and you という活動を通じてがんを発症した後でも再発を防ぐことができるような新医療機器の開発を行っています。田邊氏はこの開発に至るきっかけや大学生活を通した医療の疑問などを講演いただきました。

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大学12年時に祖父母を救うことができなかった経験と、恩師から言われた「医者にならないと命を救えないの?」という言葉が田邉氏の人生を大きく変えたといいます。医療機器開発のために必要な視点として①まず現場の患者の課題から出発すること、②身の回りにある身近なテクノロジーを掛け算すること、③小さな自治体やコミュニティから成功事例を生み出すことの三点を紹介して頂きました。質疑応答の際に生徒から「医学部での生活で感じる医療の課題は何か」と質問を受けると、田邉氏は「分野毎に課題は異なると思うが、その課題を発見するためには自分自らが行動しないと見つからない」と語りました。


Takeの思考ではなく、Giveの思考に。

アンター株式会社の代表取締役の中山氏からは、医師として11年、起業をして5年というキャリアの中でどのような選択をして、どういうことを考えてきたのかをご紹介頂きました。

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もともと医師を目指していたのではなく、ぼんやりと「自分の人生の中で何か大きな仕組みを作れたらいいな。」と考えていた中山氏は、大学受験の際両親との話し合いで、地域医療に貢献する医師を目指し医学部に進学。医学部で過ごす中、自分の意思決定で後悔しないような決断をしようと、東京を拠点に苦手だった整形外科の分野で医師としてのキャリアをスタートさせます。医師となって感じたのは、自分の知識を得る力と治療の進歩の速さのギャップ。この差を埋めるため試行錯誤をする中で、「自分の事業のために情報を提供してください」というTake の思考を抱いてしまっていたことに気づきました。中山氏はそこでLINEのアカウントを病院内の先生方に教え「整形外科の疑問に24時間365日対応」するというGiveの思考に行動を転換させます。すると他の先生からも「自分も答えられる範囲で回答したい。」という反応をもらい、実名制の医師同士のQAサービス「Antaa」に発展していくことができました。
最後に中山氏は中高生に向けて「最初からゴールは見えない」「常に様々な選択と意思決定がある」「振り返って、後悔のない努力を」という言葉を贈り、プレゼンを終えました。


ITAIが医療の限界を超えていく。

株式会社 Splink 代表取締役社長の青山氏からは科学技術がどのように社会の課題を解決していこうとしているのか、自身の起業経験と合わせてご紹介頂きました。


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世界全体で高齢化が進んでいる中で、他の国と比べても日本は高齢化が進んでいます。高齢化に伴い、医療費などの社会コストの逼迫、医療の質の地域格差も問題になっていきます。このような現状を解決するのがテクノロジーです。テクノロジーを医療に持ち込むことで、遠隔医療や医療記録のデジタル化なども可能となり、どこにいても医療にアクセス可能となります。いままで様々な制限があった医療に対して、ITAI(人工知能)によってブレイクスルーし、新しい可能性をつくっていきます。
青山氏は主に認知症といった脳の疾患に注目し、事業をされています。認知症は、今までできていたことができなくなったり、今まで覚えていた人を忘れてしまったりしてしまうなど「つながりを失ってしまう病気」です。認知症は症状に個人差が大きく、診断が難しいため、医師たちの属人性が高い領域です。Splink社では、脳画像や脳波など客観性があり、数値化できるデータを、名医と呼ばれる専門医が解釈する手法でAI(人工知能)に学ばせることによって、誰が見ても一定の診断を短時間で行えるようにする画像診断支援技術を開発しました。
理化学研究所の客員研究員でもある青山氏ですが、もとは医学部に在籍したことはなく、医療機器メーカーでの勤務の経験もありません。父の病気への治療の在り方への疑問と商材として扱っていたテクノロジーに接した経験が、起業へのきっかけとなったと言います。「なんでもできる」と自分を信じてほしいと中高生へメッセージを贈りプレゼンを終えました。



講演後は、参加者の中高生と登壇者を囲んでパネルディスカッションを行いました。

各登壇者の技術の話に加え、「これから進路を選んでいく中高生のためにいろんな選択をしてきた登壇者の方からアドバイスをお願いしたい」「中高生の時にやっていた方がよかったこと、よくなかったこと」「これから何を目指していますか?」など中高生自身がキャリアを考える質問が多く寄せられました。
生徒たちにとってはITAI技術が命を救う役割を担っていることを改めて認識し、将来への向き合い方を改めて考えるよい気づきをたくさん得ることができました。

今回のイベントを開催するにあたり、開智日本橋学園の多羅尾沙織先生、佐久間貴之先生、およびご登壇にご協力頂きましたお三方には多大なるご協力を頂きまして、誠にありがとうございました。

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