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インタビュー・コラム

モジュール創薬で新薬開発の効率化。抗がん剤の承認を目指す Delta-Fly Pharma株式会社

日本橋ライフサイエンスビルディング2に入居されている「Delta-Fly Pharma株式会社」が2018年10月に東証マザーズに上場しました。「モジュール創薬」というコンセプトで、難治性・再発急性骨髄性白血病やがん等に対する5つのパイプラインの研究開発を進めており、今後の展開が期待されています。

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江島 清 氏(Delta-Fly Pharma株式会社 代表取締役社長&創業者)

「モジュール創薬」とは、既存の抗がん活性物質等を「モジュール」(構成単位)として利用し、用法用量・結合様式等を加えて、「アセンブリ」(組み立て)することで、臨床上の有効性と安全性のバランスを向上させるという発想に基づく手法です。一般的な抗がん剤の開発プロセスに対して基礎研究が殆ど不要で、研究開発を短期間かつ開発リスクを低減できるとされています。

モジュール創薬を基盤に創業された代表取締役社長である江島清氏、および代表取締役専務である飯塚健蔵氏に、創業の経緯と新規上場後の変化、日本橋にオフィスを構えられた理由などをお聞きしました。


――創業のきっかけについてお伺いしたいと思います。江島社長は大鵬薬品工業に35年近く務められておりました。以前から起業についてお考えだったのでしょうか。

江島:私は徳島県の出身で、県内の大手製薬企業である大塚グループに就職し、大鵬薬品工業に配属になりました。大鵬薬品から必ずしも飛び出す必要性はなかったのですが、初代社長である小林幸雄の下で研究開発をしていたことがあり、その経験がきっかけとなっています。小林の傍で経営の仕方を勉強させてもらい、マネジメントのやり方に自信が持てるようになりました。小林は経営において判断が非常に素晴らしく、ディシジョンのスピードを早めるためにも、小さい会社の方がいいだろうという考えでした。

――起業されたのは2010年ということでしたが、その当時は資金調達環境などベンチャーにとって厳しい状況だったのではないでしょうか。

江島:あるベンチャーキャピタル(VC)の社長さんから「こんな時期に起業するのは、何も考えてないか、先がよほど見えているかどっちかしかない」といわれるほど、経済環境はよくない状況でした。しかし、ドラッグディスカバリーに対する業務効率化し、成功確率をある程度見込めるという自信がありました。
一般的な創薬は労力も時間も非常にかかりますが、「モジュール創薬」では、アーリーステージをある程度スキップし、通常より少ない期間で済むこと、全く新規の化合物に対するリスクよりも低いリスクで創薬を行うことができます。当社が、厳しい環境の中で、VCの方に理解していただけたのも、このコンセプトがあったからです。

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――モジュール創薬というコンセプトはいつ頃からお考えだったのでしょうか。

江島:「モジュール」という言葉は使っていませんでしたが、前職ではよく似たアプローチで研究開発が行われていました。大鵬薬品工業では、ラトビア共和国で見つけた抗がん剤の例などが該当します。日本で臨床試験を行い、経口剤を出したことでヒットしました。特許がきれた後にモディファイして作るというプロセスは、様々な疾患に対する創薬おいても応用できるだろうと考え、私どもが先駆けて事業化することにしました。創薬は最適化していくのに、莫大な費用がかかります。ベンチャーにはそこまでのゆとりはありません。モジュール創薬の考え方で医薬品を仕上げることには、非常にメリットがあると考えています。

――モジュール創薬という言葉は江島社長が命名された?

江島:皆で決めました。ITや自動車産業の製品開発においてアセンブリ(組み立て)する手法は一般的に行われていますが、それを医薬品に応用した際の名前にふさわしいと考えました。

飯塚:当初は「既存の薬剤を良いものに効率よく変える」、「エコサイクルを回す」といったような意味で、「エコオンコロジー」なんていう候補もありましたが、VCの方に理解してもらいづらく、IT産業などの例に倣ったモジュール(構成単位)の方がわかりやすいということで、「モジュール創薬」になりました。VCの方は必ずしも創薬に詳しい訳ではないため、他産業のR&Dプロセスに擬えた「モジュール創薬」というコンセプトを用いることで、私たちの創薬アプローチが効率的なものだということをご理解いただけました。

――新規上場(IPO)に到るまでの道のりはいかがでしたか?

江島:起業時からパイプラインの開発はほぼ順調に来ていますし、資金調達についても、VCから2回、事業会社から2回ほどご支援いただきました。最終的にPhase3をグローバルに展開するためにもIPOすることが必要と考え、2014年頃からIPOの準備を進めましたが、当初考えていたよりも時間がかかり、必ずしも順調な道のりではありませんでした。

――現在の開発パイプラインの状況はいかがでしょうか。

江島:創業から、8年間で3品目が臨床試験入りしております。今後は、難治性・再発の急性骨髄性白血病(AML)の治療薬DFP-10917が承認になるかどうかが大きいところです。現在は、米国でPhase 3の試験移行段階ですが、知財に関しては、主要国の80%は特許出願し、グラントされていますので、承認後はグローバルの販売権をライセンスアウトする予定でおりますが、我々のようなバイオベンチャーでも抗がん剤であれば販売も可能ではないかと考えております。

――御社は徳島県に本社を置かれ、研究を進められておりますが、日本橋にも来ていただいた理由を教えて頂けたらと思います。

江島:製薬会社といえば、昔は大阪の道修町が主な拠点でしたが、グローバル化が進むにつれて、日本橋が主な製薬会社の拠点となったと思います。主な渉外活動は東京で行っています。IT環境が整っていますので、最大限に活用し、各拠点と連携しながら、コミュニケーションを取っています。

飯塚:日本橋は、外部の人とのコミュニケーションが非常にしやすいです。東証も近くにありますし、製薬協やAMEDも日本橋に拠点を置かれています。LINK-Jで多様なイベントを開催していただいているので、情報収集もできます。

江島:徳島に研究所と工場をおいている大手製薬会社は、土地としての単価も安く、人材的にもヘルスケア分野に強い人が多いからです。徳島大学は地方大学の中では珍しく、医学部、歯学部、薬学部が揃って、ライフサイエンスに力を入れています。私も徳島大学の産学連携推進部でライセンス交渉のお手伝いをさせていただいています。

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飯塚 健蔵 氏(Delta-Fly Pharma株式会社 代表取締役専務)

――人材のリクルートという点ではどうでしょうか。

江島:ベンチャーにとって人材集めは重要なポイントだと思います。おかげさまで、ここまでたどりつけたのは研究開発のマネジメントができる人を確保できたことにあります。現在、徳島に5人、東京に3人、中国とアメリカに3名ずつおり、役員入れれば約20名の少数精鋭の体制です。エグゼクティブに近い人ばかりで、外部委託の人が社員に近い感じで働いています。受託会社のレベルは非常に高くなっており、中国の大手企業は動物試験やものづくりが可能で、FDAに精通しており、コストが安く、品質も高いです。

江島:北京に事務所を置いているのは、前臨床のマネジメント以外に、将来的なマーケットのサーチもしながら、臨床開発ができる環境を整え、リソースを用意するためです。臨床開発のために、アメリカにも事務所が必要だと考えていたのですが、バンクーバーの方が、社員の住む環境が良いと考え、バンクーバーを北米のネットワークの正式な拠点とする計画を進めています。

江島: IPOをする上で、コーポレートガバナンスを含めて、管理体制を固める必要がありました。リクルートも積極的に行っています。ここ5年くらいまでには、40名ほどの規模にしたいと考えています。

飯塚:大手企業にいる人でノウハウはあるが、やりたいことができない人、我々の事業に賛同してくれる方がいれば一緒に仕事をしたいです。シニアの人が活躍できる場が必要だと考えています。

――IPO後の変化について教えてください。

江島:やはり、IPOする前と後では会社の信用力が違うと感じます。例えば、米国拠点の解説に向けて事業開発の経験があり、CMCから臨床開発までわかる適任の人材が見つかったのですが、上場企業だということが採用の最後に決め手になりました。もし上場していなかったら、採用は厳しかったと思います。
また、上場会社となることで、一般の投資家から直接電話でお問い合わせを受けることが多くなりました。創薬の専門家にとっては当たり前で、これまでニュース・リリースを行なっていなかった特許取得に関することなど、投資家への情報開示についても、我々の方から積極的に公開していかなければいけないということを感じています。今後も、株主の期待に応えながら、事業の発展に努めていきたいです。

――最後に今後の抱負をいただけますか。

江島:当社の薬をいち早く患者さんに届け、安心して多くの人が薬を使えるよう尽力したいと思います。マネジメント面では透明性を高くし、進捗状況について皆様に公開しながら、着実にステップを踏んで事業を拡大していきたいと思います。

eshima_100.png江島 清 氏  Delta-Fly Pharma株式会社 代表取締役社長&創業者
1976年 大鵬薬品工業会社入社。同社の取締役開発センター長、取締役徳島研究センター長を経て、2010年12月、Delta-Fly Pharma株式会社設立、代表取締役社長就任。2010年より徳島大学客員教授兼任。

iiduka_100.png飯塚 健蔵 氏 Delta-Fly Pharma株式会社 代表取締役専務
大鵬薬品工業(株)の開発三部部長を経て、2012年、Delta-Fly Pharma株式会社入社。
臨床開発部兼東京事務所所長、取締役常務管理本部長を経て現任。

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