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インタビュー・コラム

MIYAMAN's column vol.19 ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(2) 何を評価して上場が決まるのか?引き受け証券の謎

ここが不思議だ、我が国のバイオ・ベンチャー市場(2)
何を評価して上場が決まるのか?引き受け証券の謎

前回に引き続きバイオ・ベンチャー市場の不思議をお伝え します。しかも、これが我が国のバイオ・ベンチャー市場の常識 らしい。ベンチャーの本場、米国のNASDAQの常識とは雲泥の差。日本のベンチャー市場が"ガラパゴス化"していることを 実感しています。こんな上場審査を繰り返していては、日本から ユニコーンが出る訳はありません。ベンチャー振興に舵を切った経済産業省と厚生労働省はこの常識を打破する方策を検討 すべきです。  

年内に予定していたベンチャー企業の上場が来年の春にずれ 込むことになり、引き受け証券会社の担当者が投資家たちに釈明をする会を開きました。延期の理由は「事業計画達成の蓋然性が証明できない」。そのベンチャー企業は基盤技術を多数の ビッグファーマや海外のベンチャーに導出し、売り上げを増やしていました。しかし、今年予定していた数社とのライセンス契約締結が、新型コロナウイルスが原因で遅延、上場前に策定していた 事業計画と齟齬が生じたのです。  

よくよく聞いてみると、引き受け証券会社はこのベンチャーの革新的な技術の成長性を評価できず、売り上げや大手製薬企業 とのライセンス契約数という外形的な指標でのみ事業計画の推 移を判断していたことが露わになりました。「それは事業会社の評価であり、イノベーティブなベンチャーの評価法ではない」と 海外の出資者が叫んでも「蓋然性を示す必要がある」の一点張 り。米国ではベンチャーが革新的な技術を持ち、裏打ちする知財 があれば、売り上げの蓋然性など歯牙にも欠けず上場可能です。 証券会社にバイオのプロがおり、技術のポテンシャルを株価に 変換し、合わせてリスクも投資家に説明できるためです。残念ながらバイオに関しては一部の例外を除き素人同然の日本の証券 会社引き受け部門では、営業部門の圧力に抗しきれないのが現 状です。ペプチドリームの株価低落は蓋然性のしっぺ返し。一刻も早く私達は蓋然性の罠から脱却しなくてはなりません。

miyata.png 宮田 満 氏
東京大学理学系大学院植物学修士課程修了後、1979年に 日本経済新聞社入社。日経メディカル編集部を経て、日経バ イオテク創刊に携わる。1985年に日経バイオテク編集長 に就任し、2015年に株式会社宮田総研を設立、新Mmの憂 鬱などメディア活動を開始。2017年、株式会社ヘルスケアイ ノベーションを設立、2020年6月よりバイオ・先端医療関 連のベンチャー企業に投資を開始した。厚生労働省厚生科 学審議会、文部科学省科学技術・学術審議会、生物系特定 産業技術研究支援センターなど、様々な公的活動に従事。

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