2021年に配信し大変ご好評をいただいたウェビナーのアンコール配信(2本立て)となります。
1本目は、筑波大学 体育系 助教(運動生化学)
松井崇先生によるご講演
「メタボロミクスを活用したスポーツ脳科学研究
:運動-認知インタラクションの神経機構解明に向けて」
です。
「スポーツ脳科学研究」に関する研究成果のご発表をいただき、運動−認知インタラクションを担いうる脳グリコーゲンとその応用可能性について、メタボローム解析の今後も踏まえながらご講演をいただいております。
2本目は、順天堂大学大学院 医学研究科神経学 准教授
斉木臣二先生によるご講演
「パーキンソン病患者における血液メタボローム解析」
です。
パーキンソン病患者を対象にメタボローム解析でバイオマーカー探索を行った事例についてご講演をいただいております。
プログラム
2021年に配信し大変ご好評をいただいた以下2つのご講演を再配信させていただきます。
筑波大学 松井崇先生
「メタボロミクスを活用したスポーツ脳科学研究
:運動-認知インタラクションの神経機構解明に向けて」
= 要 旨 =
運動が脳にもたらす有益な効果や身心機能(有酸素能や認知)の関連が明らかになり始め、「運動−認知インタラクション」として注目される。身心機能を司る脳は主なエネルギーを糖質に依存することから、脳糖代謝が運動−認知インタラクションに寄与すると想定できるが、運動により脳糖代謝がどう機能し、適応するかは大部分が不明である。
アストロサイトに局在する脳内唯一の貯蔵糖質・グリコーゲンは、神経のエネルギーや修飾因子となる乳酸の生成源として記憶機能に役立つ。私どもは、長時間運動がラット脳のグリコーゲン減少と乳酸上昇を中枢疲労因子(低血糖やセロトニン代謝)と関連して引き起こし(J Physiol、2011)、脳のグリコーゲン分解と乳酸輸送の阻害が持久性と脳ATPを低下させることをメタボロミクスを活用しながら見出した(PNAS、2017)。これらの結果は、脳グリコーゲンが神経のエネルギーとなる乳酸の産生・供給を通じて運動持久性に役立ち、その代謝破綻が機能低下(中枢疲労)の原因となることを初めて示唆する。
さらに、一過性運動後のグリコーゲン超回復が骨格筋と同様に脳でも生じ、4週間の慢性中強度運動が海馬グリコーゲン貯蔵を高めることを見出した(J Physiol、2012)。加えて、II型糖尿病ラットで低下した空間認知と海馬グリコーゲン代謝は、4週間の慢性中強度運動により高血糖とは独立して改善された(Diabetologia、2017)。これらのことから、脳、特に海馬のグリコーゲン代謝適応が運動で高まる認知機能を担う可能性がある。
今回は、運動持久性を高める「グリコーゲンローディング」の脳への効果(Sci Rep、2018)やメタボロミクスを用いた脳グリコーゲン動態のバイオマーカー探索研究についても触れながら(Front Neurosci、2019)、運動−認知インタラクションを担いうる脳グリコーゲンとその応用可能性について議論できれば幸いである。
順天堂大学大学院 斉木臣二先生
「パーキンソン病患者における血液メタボローム解析」
= 要 旨 =
パーキンソン病(PD)は患者数がわが国で16万人程度の神経変性疾患で、黒質ドパミン神経細胞・末梢器官への自律神経の変性を主徴とする全身性疾患である。障害されるニューロン・その構造物にalpha-synuclein沈着を認めることが病理学的な特徴とされる。我々は、低侵襲で精度の高いPDの診断・進行モニタリング・薬効評価バイオマーカーを特定するため、2011年より血漿/血清代謝産物に着目し、検討を進めている(JNNP 87:295, 2016; Sci Rep 7:7328, 2017; Neurology 90:e404, 2018; Ann Neurol 86:251, 2019; Mov Disord 35:1438, 2020など)。本講演では、我々が網羅的メタボローム解析データを端緒として、どのように研究を進めているかを概説する。
参加費
無料
定員
300名 ※ご参加には事前登録が必要です。先着順となりますのでご了承ください。
主催
お問い合わせ先
hmt_seminar@humanmetabolome.com