イベントレポート

次世代研究者が挑む再生医療の最前線【第5回 基盤技術】を開催(7/24)

2026年7月24日(金)、日本再生医療学会(チーム U-45)と LINK-J は「次世代研究者が挑む再生医療の最前線 【第 5 回 基盤技術】」をライフサイエンスハブウエストとオンラインのハイブリッド形式にて開催しました。
当日は会場・オンライン合わせて212名の方にご参加いただきました。

共催:一般社団法人 LINK-J、日本再生医療学会(チーム U-45)

LINK-JのYouTubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。
(一部編集を行っております。)

「未来志向で再生医療の最新研究を紹介」
LINK-Jでは日本再生医療学会(チームU-45)と共同で、再生医療の将来を担う研究者にスポットを当てる新しいイベントシリーズを実施しています。 病気や事故などで失われた細胞や器官の再生を促進することで、永続的な機能回復を目指す「再生医療」。今年2月には、ついにiPS細胞由来製品も厚労省の専門部会で条件付き承認が了承され、各種メディアでも大きく報道されました。

再生医療の臨床応用は、既存治療では根本的解決が期待できない疾患に対する切り札として期待を集める一方、科学的根拠が十分でないものも存在するのが現状です。そうした状況の中で、多くの再生医療の研究者が「科学的根拠に基づく再生医療の臨床応用」に向けて、日々努力を重ねています。本シンポジウムでは、再生医療の臨床応用に挑戦する研究者3名が登壇し、再生医療の現在地と将来展望について語りました。

開会挨拶
高橋 俊一(LINK-J 常務理事)



西田 幸二 氏(日本再生医療学会 理事長、大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学)教授) 


【座長】 
右:林 洋平 氏(日本再生医療学会 U45座長、 公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団) 
左:鳴川 晃生 氏(株式会社VC Cell Therapy 事業開発部 ディレクター) 


講演「iPS細胞の大量、自動化培養技術開発」
林 洋平 氏(日本再生医療学会 U45座長、 公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団)


iPS細胞を用いた再生医療は、眼科領域、パーキンソン病治療、重症心不全治療といった分野で臨床応用が進展しているが、今後の普及には細胞の大量生産や安定供給が重要な課題となっている。

本講演は、従来の接着培養に代わる浮遊培養技術に着目し、突発的な分化を抑制しながら、高精度な培養法を開発した。これにより、iPS細胞の樹立から増幅、凍結保存、解凍後の培養までを効率的に実施できるようになり、臨床グレード細胞の安定供給への道を開いている。さらに、自動細胞培養システムによる製造工程の自動化についても取り組んでおり、iPS細胞再生医療の産業化と社会実装に貢献する研究開発について紹介した。
 

講演「遺伝子治療用製品の安全性向上に向けたAAVベクターの高純度精製技術の開発」
和田 美加子 氏(東京大学 医科学研究所 遺伝子・細胞治療センター 分子遺伝医学分野 特任研究員) 


AAVベクターを用いた遺伝子治療は目覚ましい成果を上げる一方、高用量投与に伴う急性肝障害などの重篤な有害事象も報告されており、安全性と製品品質のさらなる向上が求められている。これに関し、空カプシドや宿主細胞由来成分などの不純物を低減し、高品質なAAVベクターを効率的に製造・精製する技術の確立が重要な課題である。

我々の研究グループは、大容量ゾーナルローターを用いた密度勾配超遠心法に着目し、従来法と比較して処理量を拡大するとともに処理時間を短縮し、最大1,000 mLを約4時間で処理可能な精製プロトコルを確立した。本手法により、高い回収率を維持しながら、full capsid率80%以上のAAVベクター画分を取得することに成功している。

本講演では、この改良型ゾーナル超遠心法によるAAVベクター精製技術を紹介し、高品質な遺伝子治療用ベクターの安定供給と製造プロセスの高度化に向けた今後の展望について議論した。

講演「灌流培養による血管網付き組織と配向性毛髪組織の構築」
坂口 勝久 氏(東京都市大学理工学部医用工学科 准教授)


灌流培養は、再生組織・臓器の構築技術の一つとして極めて有用であり、その応用が期待されている。灌流によって培養液を持続的に細胞へ供給することで、酸素や栄養素の供給のみならず、活性酸素種などの酸化ストレス因子の除去や老廃物の排出が可能となる。そのため、細胞の代謝活性を維持・促進し、組織の成長や成熟を支えるために不可欠な機能であると考えられる。

本研究では、灌流培養を用いることで細胞シート内に血管網を構築することに成功した。形成された血管網は単なる網目状構造ではなく、管腔を有する血管様構造を形成していた。さらに、その内部には培養液を灌流させることが可能であり、抗血栓性など血管としての機能も有していることが確認された。 一方、本研究室では培養皿上において発毛能を有する皮膚細胞シートの作製にも成功している。この発毛細胞シートを灌流培養系に適用したところ、約2週間の培養によって、配向性を有する数mm程度の毛髪様組織の形成が確認された。

以上の結果から、灌流培養は血管網の形成および機能維持に有効であるだけでなく、皮膚付属器官である毛包の発達や毛髪形成を促進する可能性が示唆された。今後は、血管網を有する発毛皮膚組織のさらなる成熟化や長期培養条件の最適化を進めることで、より生体組織に近い再生皮膚モデルの構築が期待される。また、本技術は再生医療や創薬評価、移植用組織の開発など幅広い分野への応用が期待される。
 

全てのイベントが終了した後は、登壇者および来場者をまじえてネットワーキングが行われました。会場には軽食や飲み物も用意され、和やかな雰囲気の中で歓談や名刺交換などが行われました。

参加いただいた皆様からは「再生医療の大量培養や組織化に関して最新の動向が聞けて非常に勉強になりました。」「最前線の研究者の先生方が大変わかりやすいご発表資料で解説してくださり、よく理解できました。おもしろかったです。」「様々な取り組みで成果を出しておられることに感心した。短い時間での発表ながら発表内容にかけた時間は測り知れず情熱を感じた。」と多くの感想が寄せられました。 ご視聴・ご参加、誠にありがとうございました。

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