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イベントレポート

次世代研究者が挑む再生医療の最前線 【第2回 体性幹細胞】を開催(1/20)

2025年1月20日(月)、日本再生医療学会(U-45)とLINK-Jは「次世代研究者が挑む再生医療の最前線 【第2回 体性幹細胞】」をハイブリッド形式にて開催しました。
当日は会場・オンライン合わせて389名の方にご参加頂きました。

主催:一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン、日本再生医療学会(U-45)

「未来志向で再生医療の最新研究を紹介」
LINK-Jでは日本再生医療学会(U-45)と共同で、再生医療の将来を担う研究者にスポットを当てる新しいイベントシリーズを開始いたします。 再生医療は、損傷した人体の細胞や機能を回復する次世代の治療であり、これまで根治が難しかった疾患を治療しうる技術として大きな期待を寄せられています。市場も急速に拡大しており、特に、細胞・遺伝子治療の市場に関しては、2030年まで年率30%以上の成長率で拡大することを見込まれるなど、成長著しい分野です。

第2回は体性幹細胞をテーマに、再生医療研究の最前線を牽引する3名の先生方にご登壇を頂き、細胞センシングを利用した幹細胞純化、新規局所歯髄幹細胞の同定、造血幹細胞の多様性と機能予測について、最新のトピックをご発表頂きました。

開会挨拶
高橋 俊一(LINK-J 事務局長)

開会挨拶
岡野 栄之 氏(日本再生医療学会理事長、LINK-J 理事長/慶應義塾大学再生医療リサーチセンター・センター長、慶應義塾大学教授)

【座長】
右:渡部 正利喜 氏(株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 新規事業部 事業探索推進部長)
左:堀田 秋津 氏(京都大学iPS細胞研究所 准教授)

講演「新規局所歯髄幹細胞の同定」
黄地 健仁 氏(東京歯科大学 生理学講座 講師)


■講演要旨■
歯の延命は、食事やコミュニケーションという現代社会でも欠かすことのできない口腔機能の改善と維持に直結し、口腔の健康がもたらす幸福は経済社会の発展にも影響する。病的な歯質破壊が開始・加速する前に歯髄細胞の制御による健康歯質の再生メカニズムを明らかにできれば、予防的な観点から歯の長期保存と口腔機能の維持が可能となる。歯髄には体性幹細胞である歯髄幹細胞がこれまでに報告されているが、その詳細な局在や細胞内シグナル伝達と機能連関、周囲細胞との細胞間連絡、生体内での挙動など、歯髄幹細胞そのものの実態はまだ多くの不明な点が残されていた。
 我々は歯髄の最外層に存在する象牙芽細胞直下の微小環境に存在するpericyteに着目した。遺伝的象牙芽細胞枯渇マウスで象牙芽細胞を死滅させると、pericyteマーカーであるNG2陽性細胞が、細胞稠密層(セルリッチゾーン)で増殖し、象牙芽細胞に分化・再生した。再生象牙芽細胞は、従来の象牙芽細胞の特徴である機械感受性を有し、また象牙質石灰化を駆動した。NG2陽性pericyteを標識した細胞系譜解析では、血管周囲pericyteが歯への機械的刺激に反応し、歯髄を保護するための防御的な歯質石灰化に関与していることが明らかになった。以上より、これまでに長らく不明であった歯髄幹細胞の実態は、象牙芽細胞直下に存在するpericyteであることが明らかになった。局所歯髄幹細胞としてのpericyteの可能性と今後の展望に関しても議論したい。

講演「細胞センシングを利用した幹細胞純化」
馬渕 洋 氏(藤田医科大学 医学部 臨床再生医学講座 准教授)


■講演要旨■
加齢による臓器機能障害や疾患を克服し、健康な生活を少しでも長く続けるには、各々の臓器、さらには幹細胞機能を健康に保つ必要があります。本講演では、骨髄幹細胞の機能を解析し、再生治療へ応用を促進する基盤技術を紹介します。
骨髄には、血液を作り出す造血幹細胞や、組織を作り出す間葉系幹細胞が存在します。近年、これらの幹細胞を生体内から分離・培養し、機能障害のある組織や疾患への細胞移植による治療(再生医療)が研究されています。しかし、体外での培養・増幅によって幹細胞は分化・老化し、本来の特性とは異なる状態に変化してしまうことが確認されています。
本講演では、特殊な培養条件下に置くことで、骨髄幹細胞の機能を維持し、高い機能を有する細胞を作り出すことに成功しました。遺伝子発現や代謝解析を行うことで、生体に近い基底状態を維持していることが示唆されました。骨髄幹細胞の細胞特性を解明することは、幹細胞を用いた細胞治療における品質を担保する重要な指標となると考えられます。これらのメカニズムを応用することで、生体内の幹細胞をより簡便にかつ作成し、再生医療治療に応用できるのではないかと考えています。

講演「造血幹細胞の多様性と機能予測」
山崎 聡 氏(東京大学医科学研究所 教授) 


■講演要旨■
造血幹細胞は骨髄のニッチに存在し、生体内で全血液細胞を供給する組織幹細胞の一種である。造血幹細胞移植は、さまざまな血液疾患や免疫疾患の治療法として知られているが、その成功率を向上させるには、生体外での造血幹細胞の増殖技術の開発が重要である。これまでに、多くの研究者が造血幹細胞の増殖に関与するタンパク質(造血因子)を分離・同定し、未分化性を維持する上で重要な骨髄微小環境の造血支持細胞を明らかにしてきた。しかし、造血幹細胞を安定的かつ再現性高く増幅させる方法は、これまで確立されていなかった。我々は最近、マウスおよびヒト造血幹細胞の長期培養増幅技術を確立し、報告した。本講演では、この技術を活用し、生体内および生体外における造血幹細胞の挙動をモニタリングし、予測する手法について紹介する。

イベント後のネットワーキングは非常に盛り上がりました。 皆様、登壇者をはじめとした多くの方とお話をされており、活発なネットワーキングが行われました。

参加頂いた皆様からは「体性幹細胞に関する新たな知見や技術を知ることができ、大変興味深かったです。」「歯髄細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞のトップの研究者の講演が聞けて良かったです。」「最先端の研究における技術が今後の実用化に繋がることを期待します。」と多くの感想が寄せられました。

ご視聴・ご参加、誠にありがとうございました。

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