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イベントレポート

第2回再生医療産学官連携シンポジウムを開催(10/17)

10月17日、日本橋三井ホール(東京・日本橋)で、第2回再生医療産学官連携シンポジウムが開催されました。2016年に開催された第1回に引き続き、今回もアカデミア、産業界、行政機関を代表する関係者が多数参加。講演やパネルディスカッションなどが行われました。当日用意された一般席も、開演前にはほぼ満席となるなど、再生医療と産学官連携に対する関心の高さがうかがえました。

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左:会場の様子、右:髙橋政代氏(日本再生医療学会理事/理化学研究所 プロジェクトリーダー)

【基調講演】

基調講演には、眼疾患に対する再生医療に挑戦する髙橋政代氏(日本再生医療学会理事/理化学研究所 プロジェクトリーダー)が登壇しました。髙橋氏は、2例の再生医療(加齢黄斑変性症に対する網膜再生)の経験を通じて、「規制の枠内で新しい治療の形を考える」という考え方を捨て、むしろ「必要とされる治療の形に合わせて規制の方が変わるべきだ」と考えるようになったと述べ、「行き当たりばっちり方式」と表現しました。また、「再生医療等安全性確保法」における臨床研究や「条件及び期限付承認」制度については、「医師と企業が最初から最良の方法を模索する制度」だと高く評価。同法のもとで行われる臨床研究は、治験と同等の安全性が確保されていると指摘し、制度に対する理解を求めました。

【講演1】産業界より

続いて行われた講演1では、腎再生医療に取り組む小林英司氏(バイオス株式会社科学技術顧問)が登壇し、進行中の「腎臓再生プロジェクト」の概要について発表しました。小林氏は、動物実験と臨床試験を同じ評価項目で検討する「非臨床・臨床一体型研究手法」を用いた腎臓再生医療に挑戦しており、実際にブタの膀胱付腎原基(クロアカ)を用いた実験で、腎臓の再生はもとより、その尿排泄路も再構築されることを確認しています。小林氏はこれまでの研究結果から、いずれヒトでも同様の再生医療が可能になるだろうと指摘。さらに同技術の延長として、農学部とペット(ネコ)の腎再生医療にも取り組んでいることを明かし、異なる研究分野が連携する「学学連携」の重要性を訴えました。

橋本せつ子氏(株式会社セルシード代表取締役社長)は、自社製品である細胞シート工学をテーマに講演しました。同社は、細胞シートの臨床応用を目指して設立された会社で、現在は食道再生上皮シート(食道傷害の治癒に伴う狭窄予防)と軟骨細胞シート(変形性膝関節症)の製品化に挑戦しています。食道再生上皮シートについては、細胞シートを患部に接着させる専用デバイスも開発しており、コンビネーション製品(薬物、器具、加工細胞などの異なる種類を組み合わせた製品)としての製品化を目指しています。講演で橋本氏は、欧州や台湾など海外展開も紹介し、「日本発のユニークな技術を世界に広げていきたい」とその意気込みを語りました。

続いて登壇した飯野直子氏(クオリプス株式会社代表取締役社長)は、今年3月に設立された「クオリプス」の事業について講演しました。同社は、取締役が4名、社員も数名という小規模ながら、10月には第一三共グループと共同開発契約を締結するなど、いま最も注目を集める再生医療企業の1社です。その同社の最初の挑戦は、澤芳樹氏(大阪大学医学系研究科心臓血管外科・教授)が開発を進める「iPS細胞由来心筋細胞シートの事業化」。すでに筋芽細胞シートの開発で実績を挙げている澤氏の研究だけに周囲の期待も大きく、飯野氏曰く「会社設立の発表以来、最も多く寄せられた質問は〈いつから使えるのか?〉」。この日の講演で飯野氏は「5年以内の実用化」という目標を挙げ、引き続き努力をしていきたいと訴えました。

講演1の最後を務める木村正伸氏(タカラバイオ株式会社取締役)は、同社で開発中の「遺伝子改変T細胞療法」の概要と再生医療の展望について解説しました。木村氏によると、同社が開発に挑戦している「キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法」は、海外でも難治性白血病などを適応症に開発が進行しており、うち1剤は今年8月に米国で小児の難治性白血病を適応症として製造販売承認を取得しました。木村氏は、同剤は薬価が超高額(47万5千ドル:約5400万円)である一方、製薬会社が「成功報酬型(有効性が確認された場合のみ治療費が生じる)」を提案している点にふれ、再生医療製品の薬価については「今後は日本でもこうした議論が必要になるだろう」との展望を述べました。

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左:講演1の座長である岡野栄之氏(LINK-J理事長/日本再生医療学会理事)と長我部信行氏(再生医療イノベーションフォーラム副会長)、右:小林英司氏(バイオス株式会社科学技術顧問)

【講演2】アカデミアより

講演2では、アカデミアを代表する関係者が登壇し、研究課題や今後の展望などについて講演しました。その1人である梅澤明弘氏(日本再生医療学会理事/国立成育医療研究センター再生医療センター センター長)のテーマは、「ES細胞の臨床応用の現状と展望」。梅澤氏によると、ヒトES細胞を用いた再生医療研究は海外が先行しており、その対象領域も眼疾患、糖尿病、心不全など多岐にわたります。日本はというと、海外と比べて出遅れたものの、2014年にヒトES細胞の臨床応用が解禁され、現在では70を超える研究が計画されています。自身も「尿素サイクル異常症」に対する再生医療研究を計画中だという梅澤氏。講演の最後に「患者さんと共に病気と闘っていきたい」と決意を明らかにしました。

続いて登壇した山本卓氏(広島大学大学院理学研究科 生命理学講座 教授)は、ゲノム編集技術に関する研究と日本の状況について解説しました。山本氏によると、遺伝子の任意の部分を切断して改変を促すゲノム編集技術は、疾患モデル細胞や動物の作製、メカニズムの解明、がんの誘導、そして再生医療の研究において非常に重要な技術です。しかし実際には、非臨床研究及び臨床研究におけるゲノム編集研究の実施数で、日本は海外勢に大きく差をつけられており、出願人国籍別出願数でも、米国、フランス、中国などの後塵を拝しているのが現状です。講演で山本氏は、ゲノム編集の基本特許の部分は米国に抑えられたが、日本は疾患の診断・治療などの応用分野に目を向け、その技術開発を目指すべきだと訴えました。

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左:講演2の座長である西田幸二氏(日本再生医療学会理事)と森尾友宏(日本再生医療学会理事)、右:山本卓氏(広島大学大学院理学研究科 生命理学講座 教授)

【講演3】行政側より

休憩をはさんで行われた講演3では、行政の関係者が登壇しました。最初に登壇したのは、文部科学省ライフサイエンス課長の永井雅規氏。永井氏は、再生医療研究に対する文科省の取り組みを紹介しました。文科省/経産省/厚労省の3省の中で、文科省は主に「基礎研究」の支援を重視してきました。その支援方針について、永井氏は「出口を見据えた目標管理型の研究」はもちろん、新たなシーズが枯渇することがないように、基礎研究と臨床研究のバランスに配慮した支援を実施していると指摘。文科省としては、「再生医療の実現」と「iPS細胞を用いた創薬」を2本柱として、さらに独創的な基礎研究などは「若手枠」を通じて積極的に支援していきたいと語りました。

続いて登壇した上村昌博氏(経済産業省 生物化学産業課長)は「医療分野における社会的ニーズと政策の方向性」として、再生医療に対する経産省の取り組みを紹介しました。基礎研究を支援する文科省と異なり、経産省の主な支援対象は「再生医療の産業化」。具体的には「製品開発の加速化」、「製造の低コスト化」、「企業間連携の促進」、「国際標準の獲得」などの支援に取り組んでいます。また、神奈川県の再生・細胞医療産業化拠点「ライフイノベーションセンター」の整備支援など、拠点整備事業にも注力してきました。上村氏は、産業の育成と企業の誘致を経て「日本を再生医療領域のイノベーション拠点に育てる」という同省の展望を紹介し、引き続き様々な支援を続けていきたいと呼びかけました。

赤川治郎氏(医薬品医療機器総合機構:PMDA理事)は、再生医療製品領域におけるPMDAの取り組みについて解説しました。医薬品・医療機器の承認審査業務を行うPMDAは、再生医療製品に対応するため、審査部内に「再生医療製品等審査部」を新設し、審査・対面助言・相談などの対応を始めました。その結果、対面助言や薬事戦略相談(レギュラトリー・サイエンス戦略相談)などの実施数は、ここ数年では順調に増加。まだ1品目とはいえ、「承認及び期限付承認」制度を利用した製品も登場しました。赤川氏は、同制度について「現在は2~3カ月で処理をしている」と述べ、少なくとも行政側で時間がかかることがないように努めていると指摘。制度に対する理解を求めました。

最後の講演は、AMED(日本医療研究開発機構)理事を務める菱山豊氏。菱山氏は、AMEDが支援する再生医療プロジェクトの概要や今後の課題などをテーマに講演しました。AMEDは、文科省/厚労省/経産省が独自に計上していた研究支援を一元的に管理し、「切れ目のない支援」を実現するために設立された研究開発法人です。設立されてまだ2年半ですが、すでに5つの横断型と4つの疾患領域対応型のプロジェクトの支援を通じて、「加齢黄斑変性症に対する他家細胞移植」や「進行性骨化性線維異形性症に対する創薬研究」など、着実に成果を上げてきました。講演で菱山氏は、同機構の役割を通じて「疾患で苦しむ世界中の人々に成果を届けていきたい」と抱負を述べました。

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左:講演3の座長である髙戸毅氏(日本再生医療学会副理事長)と梅澤明弘氏(日本再生医療学会理事)、右:菱山豊氏(AMED理事)

【パネルディスカッション】

「講演3」終了後には、パネルディスカッション「国際的潮流の中におけるわが国での再生医療等のあり方について」が実施されました。ディスカッションに先立ち、澤芳樹氏(日本再生医療学会理事長/LINK-J副理事長)と佐藤陽治氏(日本再生医療学会理事/国立医薬品食品衛生研究所 部長)の2名が登壇。澤氏からは、新事業「再生医療ナショナルコンソーシアム事業」の概要が紹介されました。「オールジャパンでの臨床研究の促進」、「産業界との連携による次世代人材の育成」、「NRMD(再生医療等臨床研究データ登録システム)の整備」を掲げる同事業について、澤氏は「再生医療学会が目指す〈再生医療の普遍的発展〉にとって大きなインパクトになる」と指摘。新法(再生医療等安全性確保法)が施行され、いよいよ臨床応用も始まろうという現在、今後は「この新法にいかに魂をいれるか」が重要になってくると訴えました。

次に登壇した佐藤氏は、再生医療に関する海外の最新動向を解説しました。佐藤氏は、「オバマ政権の最後の置き土産」といわれる米国の「21st Century Cures Act(21世紀の医療法)」に、「エンドポイントについて開発初期から相談できる」、「優先審査を受けることができる」、「(要件を満たせば)迅速承認が適応される」など、日本の新法に似た制度が導入された点を挙げ、「彼らもその重要性に気づいている」と指摘。また、製造技術/評価技術の標準化に向けた議論も世界中で始まっており、この領域では日本の存在感が弱いと訴えました。佐藤氏は「議論から取り残されないように、日本も積極的に意見を発信する必要がある」と述べ、「いま動かないと後で困ることになる」と呼びかけました。

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左:パネルディスカッションの様子、右:澤芳樹氏(日本再生医療学会理事長/LINK-J副理事長)

【情報交換会】

シンポジウム終了後は、同会場内にてLINK-J主催による情報交換会が開催されました。会場には、シンポジウムの登壇者はもとより、聴講に訪れた一般参加者も多数参加。LINK-J理事長を務める岡野栄之氏が開会及び乾杯の音頭を、同副理事長を務める澤芳樹氏が中締めの挨拶を務め、終始和やかな雰囲気での意見交換となりました。

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右:情報交換会の様子、左:岡野栄之氏(LINK-J理事長/日本再生医療学会理事)

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