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【2020年度 SCOOPプロジェクト最終報告】医療者とデザイナーのためのホスピタルアートの研究室

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医療者とデザイナーのためのホスピタルアートの研究室

項目 内容
アブストラクト     豊田地域医療センター総合診療科の医療者、デザイナー、プログラマーが協力して、入院中の患者のために病室の絵(原画)と、時間帯によって変わる絵(デジタルアート)を完成させた。原画は、トヨタを代表するクラウンが浜辺にあり、愛嬌のある鳥が灯台の上に立ち、海の向こうを眺めている自然の風景の絵を用意した。デジタルアートでは、この絵が、朝、夕、夜によって風景が変わり、見ている者にその時の時間帯を教える。デジタルアートはURLのみで簡単に共有できるため、同じような手法(iPad+額縁購入)を取り入れれば、世界中の病院で同じアートを病室に飾る手法を開発できた。
入院中の患者は、時間帯が分からなくなり、せん妄を発症することがある。今回は、病室に日内変動のある絵を飾ることで、入院中の患者のせん妄を予防できるか研究を行った。
2021年3月以降の取組・方法     ・日本プライマリケア連合学会で「デジタルホスピタルアート」を活動報告として宮地敬弘先生が発表
https://sites.net-convention.com/jpca2021/comments/viewp/100341
・16時に夕方、18時に夜に切り替わるデジタルアートが完成した。

ホスピタルアート1.pngのサムネイル画像ホスピタルアー21.pngのサムネイル画像


・夜間に電気が消え、朝になると画面がつくような設定に変更した
・研究参加者はn=14になった。
結果 プロセス   私たちは、入院中の患者の病室に絵を飾り、絵の効果を検証するために、病室の絵(原画)と時間帯によって絵の風景が異なるデジタルアートを作成した。原画は村岡ケンイチが作成、村岡氏が普段ホスピタルアートで描く愛嬌のある鳥が灯台の上に立ち、海の向こうを眺めている絵になっている。また今回の病院が豊田市に位置するため、トヨタを代表するクラウンが浜辺に停車している。

ホスピタルアー3.png
(図1)
そして絵や細かいパーツをスキャンしデータ化し、時間によって、太陽が出たり、夕陽に変わったり、月になったり、朝、夕、夜それぞれの風景をiPadの画面で表示できるよう吉岡純希が作成した。原画と同じような額縁になり、また常に充電できるような差し込み口のある特殊なiPad用の額縁を作成した。
豊田地域医療センター総合診療科にて2021年3月より日内変動のある病室の絵とせん妄の関連性の臨床研究を開始した。2021年7月31日の時点で14名の患者が研究の趣旨に同意し臨床研究に参加した。(臨床研究は2022年3月で終了を予定し、合計100名の患者のリクルートを予定している。7月31日の時点では研究は病室の普通の絵がある群と絵がない群のみの途中結果の解析となり、十分な症例数は集まっていない。)
表1. 病室にアートがある群とない群のせん妄の発症率及び患者背景

アートあり (n= 8)

アートなし (n= 6)

せん妄あり (DST)

2

2

点滴の自己抜去あり

0

1

年齢 (平均)

85

87

性別 (男性)

3

4

認知症あり

6

3

身体拘束あり

2

1

病室に窓がある

5

5

Barthel Index (平均)

50

33

Charlson Comorbidity Index (平均)

2.9

4.2

全体考察・提言    ・一人の患者からは「病室に絵が飾ってあって嬉しい。海は病院の近くにないけれど、いい風景を見ることができていい気分になる。素敵な絵だね」と感謝の言葉をいただいた。
・デジタルアートはURLのみで簡単に同じ画面を共有できるため、同じような手法(iPad+額縁購入)を取り入れれば、世界中の病院で全く同じデジタルアートを病室に飾る手法を開発できた。
・時間によって絵が変わる仕組みを作り、日内変動を利用した絵とせん妄の関連性の研究は世界で初めての試みになる。

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