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【2020年度 SCOOPプロジェクト最終報告】東の大和

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東の大和

項目 内容
アブストラクト     私たちはコロナ禍によるリモートワークの普及がもたらす「こころの距離感」に着目し、「社内コミュニケーションツールと連携して従業員の状態を分かりやすく可視化し、電波を超えた気遣いを可能にするデジタルツール」の開発及び実証実験を行いました。Slack APIをpythonベースで実装し、Slackにワンクリックで導入するだけで従業員の疲労度をリアルタイムでプロフィールに表示させる仕様を自前の開発で実現できました。現在は2社で実証実験を進めており、サービスの改善を行っていく予定です。
2021年3月以降の取組・方法    

■ニーズ検証パート

アプリケーションの雛形が6月ごとに完成したので、実証実験を学生団体inochi wakazo projectで開始しました。2週間にかけて以下のデータを取得し、分析することとしたが、実験協力者の集まりが悪く、なかなか実験を開始できない状態が続きました。8月第一週にやっと協力者が10人ほど集まったので、ここから2週間ほどのデータ取得及び分析を行っていく予定です。また、有限会社ノトコードでも実証実験を8月中に開始する予定です。
計測データ:
• パブリックチャットでのやりとり内容
• プライベートチャット・DMでのやりとり内容
• ユーザのオンライン時間及びタイミング
• 全ユーザの返信速度
• 全ユーザのメッセージの受送信数

■研究開発パート

研究開発パートでは、主に「社内コミュニケーションツールと連携して従業員の状態を分かりやすく可視化し、電波を超えた気遣いを可能にするプログラム」をslack APIを駆使したpythonプログラムで実現することを目標としています。

そのため、現在はSlackやPC本体から取得できる情報の選定を終え、それらを利用しやすい・セキュリティー(秘匿情報)が守られる形で取得できるAPIの開発及びセキュリティポリシーの作成を行いました。

結果 プロセス  

■ニーズ検証パート

「社内コミュニケーションツールと連携して従業員の状態を分かりやすく可視化し、電波を超えた気遣いを可能にする」が本プロジェクトの目的です。コロナ禍により仕事の中心がリモートに移行した方々何名かに本サービスについてインタビューしたところ、「同僚や部下の状態が見えると仕事しやすくていい」との意見が複数ありました。それと同時に、「新しい働き方にまだ慣れていなく、自分の限界を把握する上でも活用したい」意見もありました。ただ、「疲労度の可視化から本人の働き方改善にどう繋げていくかが不明瞭」「社内の情報がslack経由で流出するのが怖い」との消極的な意見も少なくなかったです。まだ実証実験が完了していないので、そこの結果を踏まえて改善していきたいと思います。

■研究開発パート

構築したSlackツールは三つのパートによって構成されます。
①Slackからデータを取得する部分
②取得したデータから疲労度を計算するパート
③計算した疲労度をSlackに返し、それぞれのユーザーのプロフィールに表示させるパート
これらにより、午前中と午後に分けて、それぞれの時間帯のデータを分析することで疲労度を1日2回更新して表示させるツールを開発することができました。

inochi wakazo projectのSlackにて送信されたメッセージやスタンプ等を解析することにより、参加している方がいつ主に活動しているのか、誰と関わることが多いのか、いつあまり参加できていないのか等のデータを取得することができました。また、メッセージに感情分析も併せて用いることで、とりわけ忙しく、ストレス値が高いタイミングを正確に特定することができました。今後得られた知見をどのようにユーザーに還元すべきなのかを実証実験を重ねると共に、ストレス値が高くなるタイミングをより精緻に特定することを目指したいと考えています。

全体考察・提言   

SCOOPの1プロジェクトとして開始してはや1年が経ち、当初の計画である「ADHD特性を持つ人の集中力・脳内疲労の可視化・定量化」から「社内コミュニケーションツールと連携して従業員の状態を可視化し、電波を超えた気遣いを可能にする」へとシフトしましたが、「一人ひとりがよりいきやすい社会を」というビジョンは当初から変わっていません。この1年間の取り組みで得られたインサイトとして特に大事なものを列挙します。
・普及を目指す上ではすでにあるデバイス(PCやスマホ)そしてプラットフォーム(SlackやTeams)にサービスを載せることが導入において重要であること
・Slackの社内情報を扱うことはかなり敏感なので、そこの扱い方(セキュリティポリシー)には細心の注意を払う必要があること
・Slackから取得するデータと既存の機械学習モデルだけでも組み合わせば一応の精度で疲労度の予測ができること

現在の新型コロナウイルスの感染状況を鑑みると、いわゆるwithコロナ世界は少なくともあと2、3年続くと想定され、リモートワーク(完全もしくは一部)は永久的に定着すると予想できます。そうした中で、一人ひとりが人生の1/3近い時間を費やす「仕事」におけるウェルビーイングのあり方そして保ち方も新しい働き方に適応していかないといけないと思います。企業の健康経営の新しい形に、私たちの取り組みが一石を投じることができれば幸いです。

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