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イベントレポート

「明日の創薬を担うオープンイノベーション」~産業革新機構が支援するバイオベンチャー~を開催(5/10)

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5月10日(木)、日本橋ライフサイエンスビルディング201大会議室にて「LINK-J ネットワーキング・ナイト「明日の創薬を担うオープンイノベーション」~産業革新機構が支援するバイオベンチャー~」を開催いたしました。

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産業革新機構が支援する創薬・バイオベンチャー6社の代表を招き、創薬シーズの発掘から新薬開発に至るまで、ベンチャーとしての躍進、新たな課題、オープンイノベーションへの取り組みについて、最先端の研究開発の内容を交えて議論いたしました。

挨拶:澤邉 岳彦(産業革新機構ディレクター)
登壇者:奥村 洋一(スコヒアファーマ代表取締役社長)
    三嶋 徹也(アネロファーマ代表取締役社長)
    二宮 智尚(キュラディムファーマ取締役研究部長)
    安藤 弘法(NapaJen Pharma, Inc CEO)
    佐々木 潤(レナセラピューティクス代表取締役社長)
    佐溝 剛一(メガカリオン執行役員 経営企画・事業開発部長)

バイオベンチャーによるオープンイノベーションヘの取り組み

はじめに澤邉氏より産業革新機構について紹介いただきました。産業革新機構は、産業競争力強化法に基づき設立され、「オープンイノベーションを通じて次世代の国富を担う産業を育成・創出する」という基本理念を掲げています。ライフサイエンス関連ベンチャーへの投資も行っており、今回はそのうち6社に登壇いただきました。

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澤邉 岳彦(産業革新機構ディレクター)

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奥村 洋一(スコヒアファーマ代表取締役社長)

スコヒアファーマ代表取締役社長の奥村氏より同社の特長についてお話を伺いました。同社は武田薬品工業のカーブアウトベンチャーとして産業革新機構と株式会社メディパルホールディングス(MEDIPAL)の共同出資を経て2017年4月に稼働を開始しました。「当社の強みは、生活習慣病領域において数々のブロックバスターを創製してきた実績を持つ「くすりの創り方」を熟知している研究開発チーム、そして臨床パイプラインと前臨床開発プロジェクトを複数有している点にある。循環器・代謝のエリアの患者は今後も増え続けていくと推測されているので需要は高いと考える。高分子(バイオ)医薬領域では対応できない創薬ターゲットを見出し挑戦し続けていきたい」と語りました。「循環器・代謝のエリアの患者は今後も増え続けていくと推測されているので需要は高いと考えている。科学の発展に伴い高分子(バイオ)医薬領域で対応できない創薬ターゲットが多く見出されてきており、ベンチャーとして挑戦していきたい」と語りました。

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三嶋 徹也(アネロファーマ代表取締役社長)

アネロファーマ代表取締役社長の三嶋氏からは、ビフィズス菌を用いた抗がん剤の研究開発の内容についてご紹介いただきました。同社では、in-situ Delivery and Production System ("i-DPS") を基盤技術とし、遺伝子組み換えを行ったビフィズス菌が低酸素状態でのみ増殖をするという特長を用いて抗がん剤を開発しています。この菌を静脈内投与すると正常組織では死滅し、低酸素状態である腫瘍内でのみ増殖するため、がんに対して選択的に抗腫瘍効果をもたらすことができます。現在は米国で臨床試験を進めており、抗PD-1抗体と併用することで相乗的な抗腫瘍効果が得られることも動物試験で判明しています。今後i-DPS技術により、副作用の問題解決や腫瘍局所的な効果を出せると強調されました。

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二宮 智尚(キュラディムファーマ取締役研究部長)

キュラディムファーマ取締役研究部長の二宮氏からは「日本に眠る創薬シーズを世界へ発信するスピンアウト・パイプライン型ベンチャー」と題し、日本の創薬環境の現状と事業ミッションについてご説明いただきました。創薬の国内シーズが、資金や人材、ノウハウの不足など様々な要因で埋没している現状を踏まえ、同社の目利きで選別し、より早いスピードでPOCを取得、販売までつなげていくことをビジネスモデルとしているといいます。現在は2つの化合物(多発性硬化症:英国P1および特発性肺線維症:前臨床)のパイプラインについて開発が進行中です。どちらの難治性疾患も先行薬がありますが、的確にアンメットニーズをとらえたターゲット・ポジションを狙い、より安全性、有効性の高い新薬を目指している、と説明されました。

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安藤 弘法(NapaJen Pharma, Inc CEO)

NapaJen Pharma, Inc は2004年に米国で創業、「樹状細胞・マクロファージによる免疫機能を調節する医薬品の開発を通じて、難治性疾患に対する明確な新規治療方法を実現する」をビジョンとし、核酸医薬DDS(薬物運搬技術)および免疫調節技術のプラットフォームをコアテクノロジーとしたがん免疫、免疫分野での研究を推進しています。CEOの安藤氏は、基盤技術となる核酸/SPG複合体を利用したメカニズムを解説され、通常のCD40をターゲットとした医薬品とは異なり、樹状細胞やマクロファージに特異的に作用する副作用の少ない医薬品開発を目指していると説明されました。

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佐々木 潤(レナセラピューティクス代表取締役社長)

レナセラピューティクス代表取締役社長の佐々木氏は、核酸医薬市場が5年間で25倍に成長しているとし、アンメットメディカルニーズへの対応としての可能性を示されました。これまで上市された核酸医薬は5つ。毒性やデリバリーなどに課題があるため、ヘテロ核酸(HDO)技術を用いた課題解決を目指すといいます。デリバリー、安全性、有効性において、アンチセンス核酸やsiRNAプラットフォームを超える可能性があるHDO技術で核酸医薬市場に参入していきたいとしました。ビジネスモデルとして、パイプラインではなくプラットフォーム型を取ることで、早くから収益を上げられることも特長であると説明されました。

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佐溝 剛一(メガカリオン執行役員 経営企画・事業開発部長)

メガカリオン執行役員 経営企画・事業開発部長の佐溝氏は、まず輸血医療の課題を挙げられました。100年来、輸血医療は大きく変わっておらず、その原材料は全て善意の献血に委ねられており、特に我が国においては少子高齢化が進むにつれて、血液製剤の需給バランスに影響を及ぶことが懸念されている。血小板については年間約80万回が必要とされており、その有効期限も4日間と短い。メガカリオンは、ヒトiPS細胞から血小板を製造する技術を有しており、献血に依存しない安定的且つ安心・安全な供給を実現したい、と話されました。技術的には、血小板を産生する巨核球細胞を不死化させることで半永久的な保存が可能となり、これを中間在庫的な位置づけとした安定生産が実現でき、一方、血小板はそもそも無核細胞であることに加えてX線照射によってiPS細胞由来であることに伴うがん化のリスクを排除することができるので、優位性があると解説されました。製造プロセスの開発は、自社のみでは具現化することは難しく、要素技術をもつアカデミアや企業と連携した「コンソーシアム」をコンセプトとして取り組んでいるということでした。

バイオベンチャーの醍醐味 ~パネルディスカッション~

ベンチャーには「人・モノ・金」が必要だと言われます。その中で「人」に焦点を当ててパネルディスカッションが展開されました。澤邉氏より登壇者一人一人へ、「自身がベンチャーを選んだ理由」「大企業に勤めることとベンチャーに勤めることの違い」などの質問が投げかけられました。

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ベンチャーであることの醍醐味として、「予算や人も制限があるが、大企業と求められているものは変わらない」(佐溝氏)、「一人一人の成果がそのまま業績につながる。大企業では味わえないものを感じることができる」(佐々木氏)、「たった一つの技術を10年以上温めることができる」(安藤氏)、「責任の重さや意思決定の速さが異なる。やりがいがある」(二宮氏)、「産業別でみると、この業界が唯一大企業と変わらない手法で研究開発をしている」(三嶋氏)、「組織が小さいので、顔を見ながら仕事ができ、結束力が強くなる」(奥村氏)などの意見を頂きました。

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セミナーの後は懇親会が行われました。当日は民間企業、大学関係者など幅広い層の方から、100名を超える方にご参加いただきました。誠にありがとうございました。

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次回のネットワーキング・ナイトは、「生産性は睡眠で上がりますか?」をテーマに7月6日に開催いたします。ぜひご参加ください。

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