※セミナー当日までにお申込みいただくと、同内容の「見逃し配信」を期間限定でご視聴いただくことができます。
大阪大学大学院工学研究科 准教授
山野-足立 範子 先生の講演をお送りします。
「メタボローム解析を活用したバイオものづくりのための新規宿主細胞の開発」
= 要 旨 =
Chinese hamster ovary(CHO)細胞は、雌のチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)の卵巣から1957年に樹立され、現在も組換えタンパク質であるバイオ医薬品の宿主細胞として産業利用されている。チャイニーズハムスター肺組織より新たに樹立したChinese hamster lung(CHL)-YN細胞(理化学研究所バイオリソースバンク:RCB5004)は、従来のCHO細胞と比較して約2倍速く増え、組換えタンパク質である糖タンパク質をより早く生産することが可能であり、これまでに海外の大手製薬企業を含む複数の企業に本細胞を導出している。本講演では、メタボローム解析より明らかにした本細胞の特徴についてお話しする。抗体生産CHL-YN細胞および抗体生産CHO-K1細胞を用いて、グルコース濃度が一定に制御されるように流加培養を行い、細胞増殖期の異なる4段階(増殖速度の違いにより日数は異なるが、それぞれ誘導期・対数期・静止期・死滅期に対応)でメタボローム解析を実施した。その結果、CHL-YN細胞ではアルギニンとメチオニンがより多く消費されることが明らかとなった。アルギナーゼ2を発現していないCHO-K1細胞では、アルギニンからオルニチンに分解することができないが、CHL-YN細胞の培養においては、細胞内外のオルニチンの量が増加した。さらに、システイン生合成の前駆体であるシスタチオニンは、CHL-YN細胞培養時の細胞内・細胞外において共に高い濃度で検出されたが、CHO-K1細胞では検出されなかった。これらの結果から、CHO-K1細胞と異なり、CHL-YN細胞では細胞内でオルニチンとシスタチオニンが生産されることが示唆された。メタボローム解析により得られたこれらの結果は、トランスクリプトーム解析で得られた結果とも一致する内容であった。以上のように、メタボローム解析を実施することで、新規細胞の特徴をより深く理解し、バイオものづくりの向上を目指した次の戦略を考えることが可能となる。今後、CHL-YN細胞の速い増殖メカニズムが明らかになり、また、最適化された培養方法が確立されることにより、本細胞の需要がさらに高まることが期待される。
申込締切
参加費
無料
定員
300名 ※ご参加には事前登録が必要です。先着順となりますのでご了承ください。
主催
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
お問い合わせ先
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 セミナー窓口 hmt_seminar@humanmetabolome.com