2025年9月11日(木)、 LINK-J はGLOBAL LIFESCIENCE HUBおよびオンラインにて「LINK-J×AgVenture Lab『医食同源イノベーション:腸・菌・食から未来を創る』」を開催をしました。
LINK-JのYouTubeでアーカイブ動画を公開しています。(一部編集をおこなっております。)
LINK-JとAgVenture Labは、東京都協定事業TIB CATAPULTに採択された2つのクラスター「LINK-BioBAY TOKYO」および「Sustainable AgriTech & FoodTech(SA&F)クラスター」の協働特別イベントとして、「医食同源」をテーマにしたイベントを開催しました。
本イベントでは、千葉大学・清野先生、ユーグレナ、サイキンソー、KINS、MISOVATION、トイメディカル社など、各分野の第一線で活躍する企業・研究者の皆様をお招きして、医療・食・農業の領域を横断する革新的な取り組みをご紹介いただきました。
医×食・農業のクロスボーダー領域における実践的な取り組みについて幅広いお話を伺える機会であるとともに、講演後には多様なプレーヤーの情報交換・交流のためのネットワーキングも開催し盛り上がりました。
本イベントは、東京都協定事業「TIB CATAPULT(グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業)」の採択クラスター、ライフサイエンス領域のスタートアップ・インキュベーション・クラスター「LINK-BioBAY TOKYO」の活動の一環として実施しました。
LINK-BioBAY TOKYOについては、こちらをご覧ください。
Opening Remarks
林 幾雄 (一般社団法人LINK-J 事業部長 )
荻野 浩輝(一般社団法人AgVenture Lab 代表理事理事長)
基調講演「医学と農学の融合によって注射と冷蔵保存を不要にしたコメ型経口ワクチン」
清野 宏(千葉大学未来医療教育研究機構・医学部附属病院卓越教授)
【講演要旨】 口腔から始まり、呼吸器および消化器は広大な粘膜面によって被覆されており、多種多様な異物や病原体に対して最前線で監視・防御を担う「粘膜免疫機構」が存在する。この粘膜免疫機構における抗原特異的な免疫誘導・制御メカニズムの詳細が解明され、非注射型(経口・経鼻)ワクチンの開発に向けた理論的基盤が確立した。
医学と農学・植物工場科学の融合による研究開発プラットフォームの構築により、冷蔵保存(コールドチェーン)や注射器・注射針を必要としない「コメ型経口ワクチン MucoRice」の開発が進められている。MucoRice-CTBは、年間130~400万人が罹患する途上国におけるコレラ菌由来毒素(CT)による重篤な下痢症に対して、有効性と安定性を備えたサブユニット型経口ワクチンとして、基礎実験を重ねて実証されてきた。
MucoRice-CTBのヒトにおける概念実証(POC)を目指して、GMP対応型の完全閉鎖系MucoRice水耕栽培システムが構築され、ヒトに投与可能なGMP規格MucoRice-CTBを用いた医師主導型第I相治験が実施され、ヒト安全性と免疫原性が示された。コメ型経口ワクチンの研究開発は、これまで紆余曲折を経てきたが、臨床応用に向けた研究開発が着実に進展している。
基調講演「微細藻類ユーグレナ配合飼料の寄与について」
花城 拓史(株式会社ユーグレナ R&Dセンター 中央研究所 テクニカルエキスパート)
【講演要旨】
水産養殖業界では、養殖魚の健康状態の最適化を目的とした飼料を利用し、その免疫システムを増強して、病気への抵抗力を高める取組みが世界的に行われています。国連食糧農業機関(FAO)においても、抗菌剤の使用を抑え養殖魚の健康を促進する飼料の利用は強く推奨されています。
当社は国立大学法人鹿児島大学水産学部 の横山佐一郎助教との共同研究を通して、微細藻類ユーグレナを配合した飼料の給与により、カンパチ稚魚の成長と自然免疫能の向上を示す可能性を確認しました。
本講演では、これまで当社の行ってきたユーグレナの飼料利用についての取り組みや、今後の発展についてご紹介させていただきたいと思います。
TIBクラスター事業紹介
安賀 弘子(一般社団法人LINK-J)
坂本 卓哉(一般社団法人AgVenture Lab)
医療×食・農業領域のSUによる事業紹介
株式会社MISOVATION 代表取締役 斉藤 悠斗
【紹介内容】
株式会社MISOVATIONは「日本の食×テクノロジーで世界を健康にする」をビジョンに掲げ、市場が縮小傾向にある味噌の高付加価値化と流通のDXに取り組むフードテックベンチャー。日本各地40以上の伝統味噌蔵と連携し、発酵技術、食品加工技術、栄養設計技術、DX流通モデルを駆使し、完全栄養食の味噌汁「MISOVATION」やクラフト味噌汁の定期便「MISOBOX」などのサービス展開を行なっている。
トイメディカル株式会社 代表取締役社長 竹下 英徳
【紹介内容】
WHOの勧告によると、塩分摂取量が1日あたり5gを超えると、心疾患や脳卒中のリスクが高まることが指摘されています。この2つの疾病だけで年間1500万人が死亡しており、これは世界の死因の27%を占めています。
そうであるにも関わらず、世界の大多数の人がWHOの推奨量よりはるかに高い塩分を毎日摂取し、自らの健康を害しています。
これは食習慣や食文化、そして「かくれ塩分」の存在により、減塩を続けることは難しいからです。 この課題を解決するため、トイメディカルは海藻に含まれるアルギン酸に着目し、「機能性アルギン酸」を用いた塩分オフセット技術を開発しました。
この技術は、胃の中で食事に含まれる塩分(ナトリウム)をキャッチし、ゲル状にしてそのまま排泄することで塩分吸収を抑制するため、減塩とは異なり味を低下させることがありません。
この技術を用いた製品は、フライドポテト、ラーメン、餃子、ハンバーガー、パスタなど、様々な食品に応用可能です。世界の減塩食品市場は毎年5%以上の市場拡大が見込まれており、約3500億ドル(約50兆円)規模の市場に成長すると予測されています。
原料となる海藻を養殖することで、環境、地域経済に良いインパクトを与えながら、原料の安定供給を可能にします。
株式会社サイキンソー 代表取締役社長 沢井 悠
【紹介内容】
株式会社サイキンソーは、「腸から自然に健康になる0次予防」として実施する腸内フローラ検査事業を通じて培った巨大な腸内細菌データベースを保有している。これを活用した腸内環境シミュレーターや、食品開発のためのインサイト収集プラットフォーム、臨床試験設計サービスなどについて紹介。
株式会社KINS 取締役CFO 枝常 拓
【紹介内容】
株式会社KINSは『菌の力で世界を慢性疾患や症状から解放する』をミッションとし、プロダクト事業、治療および臨床研究の場としてのクリニック事業、両事業で取得できるデータや検体を用いた創薬事業の3つの事業を展開。当日は女性、男性、動物等の健康を対象にした既存事業の概要と今後の展望について説明した
パネルディスカッションでは、荻野氏がモデレーターとなり、ご登壇の皆様と熱い議論を交わしました。
講演後はLINK-Jラウンジにて登壇者および参加者間の交流を目的としたネットワーキングを行いました。 ネットワーキングでは、名刺交換や情報交換が積極的に行われました。
参加者からは「登壇者によるディスカッションは新しい価値創造が生まれそうなお話しでしたので、大変、よかったです。」「未来を明るく迎えられると感じることのできるお話ばかりでした。」「食とヘルスケアを結ぶスタートアップの話が聞けて良かったです。」といった感想を頂きました。
リアル・オンライン合わせて180名の皆様にご参加頂きました。
ご参加頂いた皆様には心より御礼を申し上げます。