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イベントレポート

第8回 LINK-J ネットワーキング・ナイト with Supporters~Biomedical SolutionsのExit成功事例からまなぶ~

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7月3日(月)、日本橋ライフサイエンスビルディングにて「第8回LINK-Jネットワーキング・ナイトwith Supporters」が開催されました。テーマは「大塚ホールディングス傘下の株式会社JIMROにより買収され、Exitに成功した株式会社Biomedical Solutions(以下BSI)の事例からの学び」。前半は同社の代表取締役の正林氏ら3名の講演が、後半はパネルディカッションが行われました。

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最初に登壇した大下創氏(MedVenture Partners株式会社代表取締役社長)は、「医療機器ベンチャーとエコシステム~Biomedical Solutions社成功の意義~」と題して、長年にわたりエコシステムを構築してきた米国の医療機器ベンチャー市場の「強み」と背景などを紹介しました。

大下氏は、米国の強みは過去三十数年間にわたる蓄積にあるといいます。米国には、シリコンバレーとミネソタという医療機器エコシステムの二大拠点があり、ベンチャーでの成功経験者が毎年何百人単位で誕生しています。彼らの多くは、再び起業する、別のベンチャーで働く、あるいは投資をする側に回り、新たなベンチャーや成功者を生み出しています。「エコシステムは生態系なので、構築するにはとても時間がかかる(大下氏)」。

同様のエコシステムを実現するには、何よりも「成功事例を生み出すことが重要だ」と訴える大下氏。BSIについては「ぜひ国内での成功事例のきっかけになってほしい」と期待を示しました。

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続いて登壇した正林和也氏(株式会社Biomedical Solutions代表取締役)は、「医療機器ベンチャーとしての挑戦~急性脳梗塞治療用血栓除去デバイス~」と題して、同社の設立経緯から今日までの歩み、製品の特徴、ご自身の経験から医療機器開発におけるボトルネックなどついて講演しました。

正林氏が代表取締役を務めるBSIは、工学博士である兄と2人で設立した会社で、急性期脳梗塞治療用のステント型血栓除去デバイスを開発しています。急性期脳梗塞における従来の治療は、薬剤を用いた血栓溶解療法(t-PA静注療法)が主流ですが、この方法で治療することのできる患者は限定的で、治療困難な患者が数多く存在していました。そこで登場したのがステントとカテ―テルという医療機器を用いて血管の中で機械的に血栓を回収し、血行を再建するという治療法です。この治療機器の登場により治療対象患者が著しく増加しました。一方で、脳血管は蛇行がきつく、繊細な構造をしているため、ステントという金属素材を用いて物理的に血栓を絡めとるという治療法では、合併症を起こすリスクが存在しています。その点、BSIが開発したデバイスは、特殊な設計構造を用いることにより、より末梢領域の血管にも対応でき、かつ、合併症リスクを軽減することを目的として開発されました。

創業当初は会計事務所の一画を間借りしてスタートし、資金繰りの工面に大変苦労しました。創業わずか2年以内で非臨床試験(動物実験など)を完了させ臨床開発を開始し、2017年に国内大手医療系企業と買収契約を締結しました。今回、「買収」という大きなステップを乗り越えた正林氏ですが、講演では「まだ本当のゴールではない。いち早く薬事承認を取得し、開発品を患者さんにお届けすることで、たくさんの命を救うことが我々の意義だと思っている。」と述べ、今後も真摯に開発に取り組む覚悟を示しました。

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最後に登壇した橋爪克弥氏(株式会社ジャフコ投資部産学連携投資グループリーダー)は、「大学発ベンチャーの課題と現状、今後への期待」と題して、国内の現状と課題を報告しました。

橋爪氏の調べによると、大学発ベンチャーの設立数は、現時点で累計約2千4百社。時価総額が1千億円を超える会社も誕生しています。橋爪氏は現況を「大きな潮目にある」と分析。その上で、国内大学の研究がもっとビジネスにつながれば、市場はさらに伸長するだろうとの展望を示しました。

正林氏とは大学の同級生だったという橋爪氏。講演で橋爪氏は、今回の正林氏らの成功は、産学連携グループを担当している自分にとっても、大いに刺激となっていると話しました。

パネルディスカッション

続いて行われたパネルディカッションでは、池野文昭氏(スタンフォード大学)の司会のもと、先ほどの登壇者3人に、高田尚悟氏(株式会社Biomedical Solutions最高財務責任者、税理士)が加わり、国内の医療機器ベンチャーの現状と課題をテーマに、活発な議論が行われました。

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高田氏は、ベンチャー企業では「何でも自分でやる」姿勢が不可欠だと指摘します。資金管理の担当者として途中入社した高田氏も、品質管理、設計文書、試験プロトコルの作成の手伝い、さらにはモデル血栓の作成まで、様々な仕事を担当しました。もっとも、大学時代にバイオを専攻していた高田氏は「実験のサポートについては、それほど違和感はおぼえなかった」と振り返りました。

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正林氏は、的確な事業化デザインに必要なポイントを聞かれ、「最先端の臨床現場におけるトレンドやニーズを把握することの大切さ」を挙げました。正林氏も、国内・海外のトップドクターからいただいた生の声をもとに、脳血管末梢領域も治療可能にした血栓回収デバイスの開発に挑戦したことを明かしました。

診断機器市場では優れた製品群を持つものの、治療機器市場では米国製品に圧倒されている日本。大下氏によると、米国でも大企業はリスクの大きい自社での技術開発は断念しており、それらの技術開発はベンチャー任せだといいます。大下氏は、クラスⅣ(ステントなど)など特にリスクの高い治療機器の開発は、診断機器の開発よりも「ベンチャー向き」だとの見解を述べました。

橋爪氏は、日本のベンチャーに対する率直な感想を問われ、「技術的には(日米で)圧倒的な差はないと思う」との感想を述べました。その上で、日本のベンチャー業界には成功経験者が少ない点を挙げ、「成功例が蓄積されることで、質も量も向上してくるだろう」との展望を示しました。

講演後は日本橋ライフサイエンスビル10階ラウンジにてネットワーキングが行われました。
今回は100名近くの方にご参加いただき、過去最多となる参加数となりました。次回のネットワーキングナイトは10月を予定しております。

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