2024年9月17日(火)、LINK-Jは「ライフサイエンス×半導体の未来~半導体の新潮流とライフサイエンス領域へのインパクト~」を日本橋ライフサイエンスハブとオンラインのハイブリッド形式にて開催しました。
LINK-JのYouTubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。
ご興味がございましたら是非ご覧ください。
ライフサイエンス領域、半導体企業、半導体政策のキーパーソンをお招きして、様々な視点から半導体とライフサイエンスとのコラボレーションについてお話しいただいた後、パネルディスカッションでは、北海道大学での取り組みなども踏まえながら議論を行いました。
本イベントは、ライフサイエンス関係者が新しい技術を知ることによりイノベーション創造や競合優位性構築につながるきっかけを掴むことを企図して開催されました。
開会挨拶
曽山 明彦(LINK-J常務理事)
講演
「ライフサイエンス領域における半導体の利活用促進に向けて」
金指 壽 氏(経済産業省 情報産業課長)
■講演要旨■
YouTubeアーカイブをご覧ください。
「先端半導体教育・研究と大学 ーライフサイエンス分野におけるUse Case開発を目指してー」
寳金 清博 氏(国立大学法人 北海道大学 総長)
■講演要旨■
半導体の微細化は、技術的限界への挑戦というレベルで世界が注目している領域である。ラピダス社が目指す2nmの微細先端半導体も、技術的には可能であり、量産化(実現には多くの困難が想定されるが)も現実的なレベルに達している。
こうした先端半導体の出現は、「微細化」が計算能力の「高性能化」「省エネルギー」をもたらすものであるという点で、イノベーションを牽引しているが、必ずしも明確な社会的needに対応したものではない。これは、従来のneed-drivenの新産業創生の歴史的過程を考えると、特異なものである。
この問題は、わが国における半導体産業再興に関わる関係者は強く認識している。様々なレベルで、大学における教育・研究に関する人財育成が急速に進んでおり、技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)においても、オールジャパンで取り組む半導体人材育成の旗振り役として、3つのワーキンググループ(WG)が活動しており、産業界との連携に基づくUse Caseの開発のための人財育成は、半導体産業の再興を左右する大きなテーマとなっている。
こうした先端半導体のUse Caseの中でも、我々、医療者の立場から見ると、ライフサイエンス分野への期待は極めて高く、人の健康に直接かかわるという点で、社会的インパクトは計り知れない。私たち医療者の立場から、先端半導体への期待を述べたい。
「半導体がもたらすライフサイエンスの進化」
岡野原 大輔 氏(株式会社Preferred Networks 共同創業者、代表取締役 最高研究責任者/株式会社Preferred Computational Chemistry 代表取締役社長/株式会社Preferred Elements 代表取締役社長)
■講演要旨■
AIの進化により、ライフサイエンス分野で大きな発展がもたらされている。このAIの進化を支えているのが、半導体の性能向上であり、これまで困難だった多くのライフサイエンスの課題が解決されるようになっている。
例えば、生成AIの分野では、大規模言語モデルがライフサイエンスの膨大な知識を取り込み、それに基づいた判断や予測を行うことが可能となっている。こうしたモデルは文献情報だけでなく、診断情報、ゲノム情報、オミックス情報を取り込もうとしている。
また、タンパク質の構造予測や設計といった分野でも、AlphaFold3をはじめとしたAIの進化が重要な役割を果たしている。創薬分野では薬を設計したり、薬の候補を評価する自由エネルギー計算などに膨大な計算が必要となるが、半導体の進化によって誰でも使えるようになってきている。
本講演では、表面的には無関係に見える半導体技術とライフサイエンスの進化との関係について詳しく解説する。
「北海道大学における医療AI・半導体開発の取り組みと展望」
工藤 與亮 氏(北海道大学大学院医学研究院 画像診断学教室・教授/北海道大学病院 医療AI研究開発センター・センター長)
■講演要旨■
北海道大学では2021年より大学院生や社会人を対象にした医療AI開発者養成プログラム(CLAP)を開始し、ほぼ同時期に社会実装を見据えた研究開発拠点として、北海道大学病院に医療AI研究開発センターを設置した。さらにヘルスケア全体のAIXを実現することを目指し、本年度よりヘルスケアAIXイノベーションセンター(HAIXIC)も立ち上げ、半導体研究開発における医療での出口戦略も構想中である。HAIXICでは①先端GPUを用いたデータ解析、②手術における次世代VR/ARによるシミュレーション・ナビゲーション、③高性能センサー・ウエアラブルデバイスの3つのユニットにて、医療における次世代半導体のニーズ分析、要件定義、試作品設計、試作品を用いた実証的研究や臨床試験などを計画している。
パネルディスカッション
モデレーター:
曽山 明彦(LINK-J常務理事)
パネリスト:
金指 壽 氏、岡野原 大輔 氏、工藤 與亮 氏
パネルディスカッションでは、講演内容を踏まえてライフサイエンス×半導体の未来の可能性や、それを実現するための課題や解決の方向性について議論が行われました。
ネットワーキング
開催後はリアル会場限定でネットワーキングの時間が設けられました。限られた時間を最大限に活用するように、積極的な交流が行われました。
参加者からは今後も半導体関係のイベントやネットワーキングを望む声がございました。
ご参加・ご登壇いただいた皆さんありがとうございました。