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インタビュー・コラム

希少疾病の新薬導入で医薬品事業立上げを目指す ダイドーファーマ株式会社

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医薬品市場では低分子化合物をはじめとし、抗体医薬や核酸医薬、再生医療まで幅広いモダリティが多様化し、多くの研究者やバイオベンチャーが創薬への道を探っています。新たな創薬シーズの国内導入を目指し、医療用医薬品事業にチャレンジしているダイドーファーマ株式会社の稲岡靖規代表取締役社長にお話をお伺いしました。

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稲岡 靖規 氏(ダイドーファーマ株式会社 代表取締役社長)

希少疾病治療薬をターゲットに新規参入

――まずは自己紹介からお願いいたします。

稲岡 前職は株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのグループが医療用医薬品事業を担うポーラファルマで約10年間、2017年5月まで代表取締役社長をやっておりました。最初は同じグループのポーラ化成工業の研究所で天然物化学の研究員を約12年やりまして、医薬品事業に携わったのは25年くらい前で、事業開発や経営企画、開発などに従事しました。ダイドーグループホールディングス(株)には2018年5月に入社、2019年1月にダイドーファーマ設立に合わせて社長となりました。

――ダイドーファーマが設立されるのを機に参画されたのでしょうか。

稲岡 はい。ダイドーグループはダイドードリンコが飲料メーカーということもあり、飲料事業が中心ですが、「ヘルスケア」をキーワードとした新しい付加価値、新たな事業基盤確立へのチャレンジを中長期的な成長戦略の一つと設定しておりました。ダイドーグループは創業当初に、配置薬を中心に医薬品に関わっていた経緯もあり、医薬品事業への新規参入を模索しており、今回、新たにゼロから希少疾病を対象とした医療用医薬品の会社を立ち上げるというので、是非参画したいと思い、入社いたしました。希少疾病は患者数が小さいことから未だに有効な治療薬が存在しない疾患も多数存在し、社会的な課題となっています。

――ビジネスモデルについて教えてください。

稲岡 基本はライセンスインのビジネスモデルです。国内外のバイオベンチャーやアカデミアが創出した希少疾病の創薬シーズに対し、開発プロセスを見ながら日本での独占的な製造販売権を獲得。国内で開発して製造販売承認を取得し、患者さんへお届けしていきます。特徴としては、製薬会社としての大きな組織体制を内部に抱えず、海外のバーチャルファーマのような組織運営を行いたいと考えています。内部に経験を積んだエキスパートのコア人材を配置し、外部のパートナーとの協業・提携をベースとした開発と事業運営を行っていきます。できるだけ社内組織を小さくし、固定費を抑え、当面は、患者数の極めて小さい希少疾病、ウルトラオーファンの治療薬に取り組んで、実績を積み上げていきたいと考えております。

――販売についてはどのような展開をお考えですか?

稲岡 製造販売承認を取得して、基本は自社で販売をする予定です。患者様が本当に少ないウルトラオーファンを対象にした場合、その疾患を治療するKOLドクターや医療施設の数に応じた自販体制を基本として考えています。ダイドーファーマとして、承認取得と販売にある程度実績が積みあがってきましたら、少し大きな患者数の希少疾病治療薬にもチャレンジし、共同開発、共同販売も検討していければ、と考えております。

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確実なものから新たなモダリティまで

――事業のご進捗についてお伺いいたします。

稲岡 2021年1月にセルジェンテック(株)との間で、LCAT遺伝子導入ヒト脂肪細胞医薬品に関するライセンス契約を締結しました(プレスリリース)。続いて、同年の6月には、カタリスト社(CATALYST PHARMACEUTICALS, INC)とランバート・イートン筋無力症候群への効果が期待される医療用医薬品に関する日本国内のライセンス契約を締結(プレスリリース)国内シーズと海外シーズで1件ずつのライセンスを獲得することができ、医薬品事業参入への第一歩を踏み出しました。

――現時点で対象とする疾患やライセンスインする際の基準等はありますか?

稲岡 まずは、海外で承認取得されているものや、ヒトでのPOCが取れているものを優先的に探索しています。有望なシーズのライセンスイン交渉には競合が多いので、一つずつ実績を確実に積み上げたいと考えています。当面の疾病治療薬の対象は、患者数の極めて小さいウルトラオーファンからの取り組みとしております。
希少疾患の場合、代謝異常や遺伝性の疾患が非常に多くあります。遺伝子治療も含めた新しいモダリティでの治療方法、再生医療なども含めて、こうした領域に新しい経験値を積むためにもチャレンジしたいと考えています。

――シーズの探索についてはどのように取り組まれていますか。

稲岡 基本的には足で稼ぐしかないですね(笑)。海外のバイオベンチャーの方が集まるコンベンションなどへ赴き情報収集する、アカデミアの先生方からの紹介を受ける、あるいはコンサルタントの方からご紹介いただくこともあります。ダイドーの名前は日本では認知されており、話がしやすいという利点もあります。ただ、医薬品事業としてはこれからスタートですので、我々ダイドーファーマが希少疾病の治療薬に対して本気で活動しているところをPRしていかなければと感じています。

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ラボレス、ファブレスの事業

――御社の強みについて教えてください。

稲岡 ダイドーグループが培ってきた資金や資源が使えるという利点があります。もう1つは、創業家であるダイドーグループホールディングスの高松社長の、ヘルスケアへの強い思い「飲料に続く第二の柱をヘルスケア領域でつくりたい」があります。グループ全体でM&Aも含めてヘルスケアを強化したいという考えで動いていますので、そのあたりは非常に大きいですね。
加えて、我々としては、バーチャルファーマ的なベンチャー運営という特徴を持ち、エキスパート人材をコアに抱え、提携、協業を中心に、ラボレス、ファブレスで事業を行っていることを強みに、患者数の小さい希少疾病を対象とした医療用医薬品事業を着実に進めていければと考えています。

――人材の確保なども含め設立からの歩みはどうですか?

稲岡 まずは事業開発、開発、臨床開発のコア人材を中心として、外部の専門家を巻き込みながら評価して、どう開発するか、どう販売するかも含めて提案して進めてきています。
会社設立から3年近く、2品目の獲得ができ、信頼性保証のコア人材も確保できておりますが、製造販売業の取得や開発も販売もこれからなので、ようやくスタートラインに立ったところだと考えています。白紙の状態から描いた絵に対し、現状は順調かとも思いますが、継続しての新薬シーズのライセンス獲得が必須です。
患者様が待っておられますので、できるだけ早く2品目の開発を進めていきたいと思います。

――この1年半新型コロナウイルス感染症という災厄がありましたが、影響はどうでしたか。

稲岡 2020年の春から実際に直接人と会う機会に制限がかかり、影響がありました。バーチャルなイベントなどには常に参加はしているのですが、やはり、フェース・トゥ・フェースで顔を合わせるのと比べて情報量は違いますよね。来年あたりには海外に出られるように、あるいは海外からも入ってこられるような環境が早く欲しいなと思っています。

――LINK-Jも今後、少しずつリアルイベントも復活させて頂いて、会員の皆様への支援に力をいれていきたいと考えておりますが、LINK-Jへの期待がございましたらお願いいたします。

稲岡 牧田 ライセンスインのきっかけは、人と人の出会い以外の何物でもありません。そういった意味で、我々、日本橋ライフサイエンスビルディング3(旧東硝ビル)には、オープンしたときから入らせてもらいましたので、「いるよ」ということも含めて、お隣さんと接する機会があります。周囲に皆さん、様々な国内外のベンチャーさんがいますので、自分たちの足で稼ぐのと同時に、LINK-Jさんには今後もリアルなネットワークを提供していただけたらと期待しています。

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(左)経営企画部長 牧田崇 氏 (右)代表取締役社長 稲岡靖規氏

inaokasama.jpg稲岡 靖規 ダイドーファーマ株式会社 代表取締役社長

薬学博士。1983年~ポーラ化成工業株式会社の研究員として従事。1995年より医薬品事業に携わり、事業開発、経営企画、開発企画、創薬研究所長などを経て、2008年~2017年5月まで株式会社ポーラファルマ 代表取締役社長、医薬品製造会社である株式会社科薬の取締役を併任。2018年5月にダイドーグループホールディングスに入社。2019年1月にダイドーファーマを設立し、現職。

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